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海外競馬ニュース
2022年03月17日  - No.10 - 1

ハニーサックル、チャンピオンハードル制覇で15連勝達成(イギリス)[その他]


3月15日(火)チェルトナムフェスティバル初日:チャンピオンハードル(G1)

 この日はハニーサックルのベールがはがされる日だとも言われていた。彼女が4年近く隠してきた秘密が暴かれ、詐欺師であることが露呈することになっていた。彼女が打ち負かしたものなど実のところ何もなく、一番の強みはこれまで受けてきた7ポンド(約3.2㎏)のセックスアローワンスだったということが白日の下にさらされるはずだった。

 大柄で粗々しいアプリシエイトイット(Appreciate It)がぎろりと睨む中、15戦目となるこのレースでハニーサックルの真実が明らかになるときが来た。

 そして真実はついに明らかになった。ただ、それは冷笑的な見方をする人々が期待していたようなものにはほど遠かった。

 ハニーサックルは雌雄に関係なく近代における最も偉大な障害競走馬の1頭であることが判明したのだ。今や異論などありえない。この日は最後まで残った頑固で疑い深い数人が改心する日となった。やっとのことだ。彼らには実に長い時間がかかった。

 記録は急ピッチで塗り替えられていき、今回達成した連勝記録は偉大なフランケルの記録を凌駕するものだ。これまで見た中で最強の平地競走馬フランケルは現役時代に14戦全勝を果たしていた。ハニーサックルは現在15勝しており、今回の勝利がおそらくこれまでで最高のものだっただろう。これまで一度も負かしたことのない馬を相手に勝利を決めたのだ。

 ヘンリー・ド・ブロムヘッド調教師はこの驚くべき快挙の直後、「(ITVのキャスターの)マット・チャップマンはどこにいるのでしょう?まだ見つけられません。彼に一言話したいのです」とジョークを飛ばした。2021年のチェルトナムフェスティバルの完全支配以来つねにプレッシャーを感じ続けていたが、このひと時はそれから解き放たれ、笑えるようになっていたようだ。

 同調教師はこう続けた。「ただ、ほっとしていますね。彼女が戻ってきてあのような歓迎を受けることを望んでいたので、恍惚状態でもありますね。敗れる日のためにいつも心の準備はできていますが、彼女があのような大歓声で迎えられるのを心から望んでいたのです」。

 いやはやすごい大喝采だった。観客は大きな歓声をあげ、拍手をし、声援を送った。それに途中で"オーレ、オーレ、オーレ"と歌いだすほどだった。ハニーサックルはそのような歓迎を受けるにふさわしい。沈黙で迎え入れるには、あまりにも優秀で格別な馬なのだ。

 ド・ブロムヘッド調教師はこう語った。「寄せられたすべての好意と幸運によってレースを勝たせてもらえるなら、彼女は1ハロン差をつけて勝っていたでしょう。ここにいるほとんどの人が、彼女が勝つことを望んでいました。彼女への応援はものすごいものでした!」

 ハニーサックルは今や私たちの馬であり、私たちは彼女との結びつきを感じている。たしかにド・ブロムヘッド調教師ほどプレッシャーを感じていなかったかもしれないが、落ち着き払ったレイチェル・ブラックモア騎手が坂を駆け下り、勇敢にも女性としての偉業を成し遂げようとしている瞬間、グランドスタンドのいたるところで観客がハラハラしている様子が見られた。彼女は回り道をするのではなく、突き抜けるように走っていった。

 彼女は度胸がありますね、ヘンリー?

 「レイチェルは立派ですよ。彼女は最後方から2番目の位置につけているときにハニーサックルを落ち着かせていたのですから、まさに夢のようなコンビです。信じられないほど素晴らしかったです。彼女がいてくれて私たちは本当に恵まれています」。

 もちろんブラックモア騎手はすべての称賛をハニーサックルのほうに向けた。彼女はいつもそうなのだ。

 「彼女はいつも進路を見つけるのです。本当に。つけたい位置よりも外を回ってしまい、途中はあまり満足していなかったかもしれません。でもちょうど入り込んで行って、先行勢との差を詰めていくことができました。素晴らしかったです。馬主のケニー・アレキサンダーさんがここに来てくれたことも本当に嬉しいです。彼はすごく良い人ですし、一流のオーナーでもあります。彼も応援してもらっていたようで、とても良かったです」。

 「騎手は素晴らしい馬にめぐり会うことを夢見ますが、ハニーサックルはそれを全く新しいレベルに引き上げてくれています。彼女は格別であり、このような馬には一生に一度しか出会えません。彼女に乗れるなんて本当にラッキーです」。

 ブラックモア騎手はどれほど大事な一戦かを分かっていて、レース前に緊張していたに違いない。チャンピオンハードルで単勝オッズ1倍台の1番人気を背負ったハニーサックルにとっては、驚異的な無敗記録がかかっていたのだ。もうこれ以上、圧力鍋の調圧レバーを上げることはできない。

 「そうですね、レース前はもっと緊張すべきじゃないかとどこかで思っていたのですが、実際、彼女をすごく信頼していたのです。そうでなかったら変ですよ。彼女は私をがっかりさせることなどないのです。信じられないほど素晴らしい馬です。ヘンリーは毎回、あのように彼女の調子を上げてからレースに出走させるのです。一頭の馬、それも牝馬を仕上げて、すべてのレースを立続けに勝つのですから、きわめてすごい技能ですよ。信じられません」。

 実際、信じられないことである。ひょっとすると、パディパワーチャンピオンハードル(G1 パンチェスタウン)でコンスティチューションヒル(Constitution Hill)と対戦するかもしれない。ラドブロークス社はシュプリームノーヴィスハードル(G1)を制したコンスティチューションヒルの単勝オッズを1.72倍としており、パディパワー社はコンスティチューションヒルに3.25倍、ハニーサックルに1.6倍のオッズをつけている。

 チャンピオンハードルでは、2020年の優勝馬エパタント(Epatante)がハニーサックルに最も迫っていたが、終盤の失敗さえなければ、さらに接近していたことだろう。これは優勝したときに匹敵するような素晴らしいパフォーマンスだったと言えるかもしれない。

 エイダン・コールマン騎手は最後の飛越の失敗を悔やんでいた。

 「エパタントは最後に足場をなくしてしまったのです。もしうまく飛越できていたなら、違う展開になっていたかもしれませんが、そうなりませんでした」。

 ニッキー・ヘンダーソン調教師も「エパタントは素晴らしいレースをしました。今シーズン、調子がよくて冴えていますね。どれほど重要なレースに挑んでいるのか分かっていましたが、彼女はふさわしい走りをしました。正々堂々としていましたね。2頭とも才能あふれる牝馬です」と語った。

 2頭が才能あふれる牝馬であるというのは正しい、ニッキー。しかしハニーサックルに関しては、史上最強の牝馬になるかもしれない。ドーンラン(Dawn Run 訳注:チャンピオンハードル&チェルトナムゴールドカップのダブル制覇を果たした障害競走史上最強といわれる牝馬)はゴールドカップを勝ったが、チャンピオンハードルは1勝しかしていない。

 真実は今、明らかになった。これまで見てきた中でハニーサックルは最強の1頭だ。

By David Jennings

[Racing Post 2022年3月15日「The truth is out now - Honeysuckle is one of the best we have ever seen」]


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