100戦未勝利馬ジッピーチッピーが31歳で死亡(アメリカ)[その他]
競馬界で最も人気ある負け馬ジッピーチッピー(Zippy Chippy)が31歳で死亡した。
ジッピーチッピー(父コンプライアンス)はオールドフレンズ・アット・キャビンクリーク(ニューヨーク州グリーンフィールドセンター)で引退生活を送っていた。ケンタッキー州にある引退馬施設オールドフレンズのサテライト牧場である。
馬主兼調教師のフェリックス・モンセラート氏は1995年にフォードのトラックと交換することでジッピーチッピーを手に入れ、レースに出走させていたが、100戦してひとつも勝利を挙げられなかった。しかしこの鹿毛のせん馬は、つむじ曲がりな性格と、カーニバルの催しに出て一度は野球選手と競走したこともあるということで、別の意味での名声を獲得した。
2000年には、ピープル誌がその年の"最も魅力的なキャラクター"の1名にジッピーチッピーを選出したほどだ。
ゲートから出るのを拒んだりレース中に停止してしまうなどの奇行のために、ジッピーチッピーはいくつかの競馬場で出走禁止となっていたが、ノーサンプトンフェア(マサチューセッツ州)は例外だった。2004年に引退し、セカンドキャリアとして短いあいだフィンガーレイクス競馬場(ニューヨーク州)で誘導馬を務めた。
100戦して一度も勝てなかったが、2着に8回、3着に11回入り、獲得賞金は3万834ドル(約385万円)に上った。
ジッピーチッピーはカプリトールファーム(ニューヨーク州)で生産され、母はリッスンレディ(父バックファインダー)である。カール・ドミノ氏により1995年ファシグ・ティプトン社ニューヨーク5月現役馬セールに上場され、マイケル・バーバリタ氏により2,500ドル(約31万円)で購買された。
2010年4月、この老練な馬はオールドフレンズ・アット・キャビンクリークに憩いの場を見つけた。この牧場のオーナー兼場長であるジョアン・ペッパー氏の導きにより、ジッピーチッピーはついに安らぎを見いだし、放牧地の友レッドダウンサウス(ニューヨーク州産・栗毛・せん馬)とともに過ごしていた。
2012年の一時期、ジッピーチッピーがオールドフレンズ(ケンタッキー州ジョージタウン)、G1馬コメンテーターがオールドフレンズ・アット・キャビンクリークに送られるというトレードが行われた。
オールドフレンズの創設者兼社長のマイケル・ブローウェン氏は、「レッドソックスがベーブ・ルースをヤンキースに送ったとき以来の最悪のトレードに違いありません」と当時は冗談を言ったものだったが、その後ケンタッキー州にたくさんのジッピーチッピーファンがいると気づくことになる。
近年、ジッピーチッピーとレッドダウンサウスはキャビンクリークでのスターとなった。
キャビンクリークのペッパー氏はこう語った。「ジッピーはここの主役でした。自分らしく生きていましたね。とても満足していて、気が向かないことは何もしようとしませんでした。彼は人生について多くのことを教えてくれました。彼がいなくなってこれからずっと寂しくなるでしょう」。
ブローウェン氏はこう付言した。「ジッピーは引退馬として大成功を収めました。ジョアンをはじめキャビンクリークのボランティアの皆さんは彼に惚れこんでいて、毎年牧場には彼を見るために数百もの人々が訪れていました。彼は最終的にスターとなったのです」。
「ジョアン、マーク・ペッパーさん、そしてキャビンクリークの皆さんには、ジッピーを手厚くケアしてくださったことに感謝したいと思います。彼がいなくなって誰もが深く悲しむことでしょう」。
By Blood-Horse Staff
(1ドル=約125円)
[bloodhorse.com 2022年4月14日「Racing's 'Most Loveable Loser' Zippy Chippy Dies at 31」]