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海外競馬ニュース
2022年05月19日  - No.17 - 3

現役最強マイラーのバーイードはフランケルになれるか?(イギリス)[その他]


5月14日(土)ロッキンジS(G1 ニューベリー)

 ロッキンジSは、のちにチャンピオンとなる馬を迎えることでよく知られている。競馬に生涯をかけてきたウィリアム・ハガス調教師(61歳)が管理する2022年平地シーズンのスター候補、優秀なバーイードはその仲間入りを果たすかもしれない。彼はその名がまもなく競馬界に広く刻まれるようなやり方でロッキンジSを制したのだ。

 無敗のバーイード(牡4歳)はシャドウェル牧場の傑出したファミリー(牝系)に属している。このファミリーは、同牧場を率いていた故ハムダン殿下がエリザベス女王からハイトオブファッションを購買した1980年代にまでさかのぼる(訳注:バーイードの5代母がこのハイトオブファッションである)。昨シーズンにムーランドロンシャン賞(G1)とクイーンエリザベス2世S(G1)を制し頂点まで上りつめていたバーイードは、今シーズンのスタートを華々しく切った。

 ニューベリーの最も重要な平地競走で単勝1.4倍の1番人気に支持されたバーイードは先行勢を追走し、残り2ハロン(約400m)の地点で仕掛けて行った。ウエストバークシャー地域は競馬場の内外で気温が上昇していたにもかかわらず、ジム・クロウリー騎手はバーイードの末脚を解き放つ中、汗ひとつかかなかった。

 バーイードはゴドルフィンの優良馬リアルワールドに3¼馬身差をつけて優勝し、チンディットは3着に健闘した。バーイードのあざやかな勝利は、レース前にもっともなことだが緊張していたハガス調教師の気持ちを楽にするのに余りあるものだった。

 「レース前にこれほど緊張したことはありましたか?」と聞かれたハガス調教師は、「実際のところないですね。人々がしきりに彼について良いことを言ったり書いたりしていたものですから、ちょっとしたプレッシャーがありました。でも彼は当然のことのように快挙を成し遂げたのです」と語った。

 そして、「世界一の馬と言うつもりはありません。そういうことを言いたいのではないのです。しかし強豪ぞろいのレースで、よくやってくれました」と続けた。

 ハガス調教師は、昔も今もすべてのジョッキーを評価する際に基準とされるレスター・ピゴット氏を義理の父とする。1987年に調教を始めたハガス調教師は、英ダービー制覇を含む輝かしい経歴を誇り、凱旋門賞では卓越したシーオブクラスが勝利をもたらすのではないかというほどの大健闘を果たした。

 「バーイードがこれまで調教した中で一番の馬かどうか分かりません。シーオブクラスはスターであり、彼女のことを心から愛していました。素晴らしい末脚を発揮する馬は大抵優れた馬であり、バーイードの末脚もシーオブクラスのものと同様に優れたものです」。

 「感動しましたね。バーイードは素晴らしい馬だと思います」。

 ハガス調教師はしたたかなので自分の首を絞めるようなことは言わない。その代わり、ロッキンジSの直前と最中に鮮やかに振る舞った素晴らしい気性のバーイードについて、分別のある説明を続けた。

 しかし、バーイードの競走距離を伸ばすことについて話が及んだ時、驚異的な馬、フランケルのことを持ち出したのは、まさにハガス調教師だった。そして、「ただ出走させるすべてのレースで勝ってほしいのです」と述べた。厩舎のスターであるバーイードは次にクイーンアンS(G1 約1600m ロイヤルアスコット開催)を目指し、その後距離を伸ばしてシーズン後半の英インターナショナルS(G1 約2000m)に挑戦する予定である。

 ハガス調教師は、「さらに上を狙わないとなると残念なことになるでしょう。誰もがフランケルはマイル路線にとどまるべきだと言いましたが、英インターナショナルSでコーナーを回ってきたときにこそ間違いなく最大の威光を放っていました」と語った[訳注:通算14戦14勝を果たしたフランケルは12戦目までマイル以下を走っていたが、13戦目で英インターナショナルS(約2000m)、14戦目で英チャンピオンS(G1 約2000m)を制した]。

 フランケルの名はアンガス・ゴールド氏の頭からも離れない。

 長年シャドウェルのレーシングマネージャーを務めているゴールド氏は、バーイードはシャドウェルの商業的に不可欠な種牡馬になると述べた。同氏は将来の雇用主となるハムダン殿下がハイトオブファッションを購買した当時、エリザベス女王のサンドリンガムスタッドにいた。

 「バーイードは、今もそうですが、今後もとても大きな財産になるでしょう。しかしフランケルは私が目にした中で最高の馬なので、そのようなクラスだとはまだ言うつもりはありません。ただ彼はその方向に向かっています」。

 「生意気なことを言いたくはありませんが、先日レーティング104のモンタサム(Montatham)やかなり優秀なアルダーリー(Aldaary)とともにバーイードが追い切りをしているときにチェルムスフォードを訪れました。するとバーイードがそれらの馬をたやすく抜いたのです。ああいうのを見ると、明らかに期待感を抱きますよね」。

 炸裂するような疾走についていえば、クロウリー騎手も競馬の伝説となるかもしれないその追い切りを引き合いに出した。

 「チェルムスフォードでは言葉を失いました。レースのほうも完璧に展開し、それもちょっとした追い切りのようなものでした。とてもエキサイティングな馬です。ハムダン殿下がここにいなくて残念です。殿下はこのような馬を誕生させるために人生を費やされたのですから」。

 ハガス調教師は個人的な理由から、別の"誕生"について考えていた。サマーヴィルロッジ調教場に欠かせない存在である妻モーリーンが不在であることをこう説明したのだ。

 「ドバイにいる娘が破水したので、モーリーンはそちらに向かっています。もうすぐしたら、また孫が生まれるのです」。

 ニューマーケットの調教師が誇らしげだった理由は1つではなかったのだ。そして誇らしげに見えたのはもっともなことだった。

By James Burn

[Racing Post 2022年5月14日「'I'm not saying Baaeed is Frankel - although he's heading in that direction'」]

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