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海外競馬ニュース
2022年05月26日  - No.18 - 3

改装失敗のカラ競馬場、再起をかけた巻き返しが必要(アイルランド)[開催・運営]


 3年前の愛ギニー競走が開催された週末、総工費8,120万ユーロ(約109億6,200万円)のカラ競馬場の改装工事の全貌が明らかになった。そのときグランドスタンドからは設計不備による金切り音が鳴り、不満を募らせた観衆による怒りの大合唱が鳴り響いた。

 その前からこのピカピカの再開発はすでに物議を醸していた。直前には、2019年シーズンのオープニング開催をカラではなくネースに変更して実施するというホースレーシングアイルランド(HRI)の一方的な決定があった。新たに設置されたパレードリングが小さすぎることが判明し、掘り起こして拡張せざるを得なくなったのだ。

  "無観客開催"がこの世で当たり前になる以前に、再開発の最中に実質的に無観客開催に近いアクセス制限をかけレースを継続するやり方は、ファンが優先されていないというメッセージをはっきりと示すものだった。2019年についに競馬場の門が完全に開かれたとき、そのメッセージはより強く実感された。

 飲食物やトイレのためにできた途方もない長蛇の列、威嚇するような警備員の存在、馬主や調教師のための不備ある施設、見づらいパレードリング、新グランドスタンドの大部分をおぞましいほど空っぽにしてしまったドラマ『アップステアーズ、ダウンステアーズ』のような雰囲気など、不満はなかなかおさまらなかった。

 カラ競馬場はエリート主義的な性質を払拭するのにつねに苦労してきた。しかし当時のCEOデレク・マクグラス氏がオープニングウィークエンドの各日の入場者数を発表すること拒否したことで、その傲慢な性質をうっかり表してしまい不吉な兆候となった。彼らは状況をよく分かっていたにもかかわらず、この改装計画に3,600万ユーロ(約48億6,000万円)の公的資金が投入されていること、そしてカラが一部国営であることを無視して、自らの思いどおりに決定しようとしたのだ。

 そして愛ダービーウィークエンドが巡ってきた。マクグラス氏はファンに"多少の列は気にしないでください"と示唆したことで、おそらく自身の運命を決定づけたと思われる。また、火災報知器が誤って作動して避難が呼び掛けられる事態となり、金曜夜の発走時刻が遅れるというドタバタ劇もあった。

 そのウィークエンドにプリティポリーS(G1)を開催するという試みは失敗した。当時HRIのCEOブライアン・カヴァナー氏はカラ競馬場の理事でもあり、マクグラス氏の在職期間に対する苛立ちが本格的に高まっていると実際に述べるのと同じぐらい強い口調でほのめかした。

 数ヵ月のうちにマクグラス氏は辞任した。そしてもう1つのHRI所有の競馬場、レパーズタウンからパット・キーオ氏が送り込まれた。その後、カヴァナー氏はあらかじめ決まっていたことだがHRIから引退し、キーオ氏が引退したあとに空席となったカラのCEOの座を埋めることになった。カヴァナー氏は1994年~1999年にその職を務めたことがあり、彼の就任を驚く者はほとんどいなかった。

 2019年愛ダービーの観客がわずか1万1,957人だったことを受け、カヴァナー氏も率直に現状を評価している。今や、この20年間でカラから失われてしまった大勢のファンを取り戻す使命を担っているのだ。

 現実には、かつてのようにアイルランド競馬のメッカにふたたび人々が群がることはないかもしれない。しかし、3万人収容の劇場にこれほど多額の資金が注ぎ込まれる中でそれを認めるのはあまりに敗北主義的でもある。

 18年前の愛ダービーデーには、当時の古いグラグラするインフラに最多記録である3万1,144人の観客が殺到した。2015年の愛ダービーデーにはまだ2万5,225人もの有料入場者がいた。それから10年も経っていない。

 カヴァナー氏は地元とのつながりを取り戻すことに専念すると誓っている。2019年秋の愛チャンピオンズウィークエンドの日曜日に行われたパット・スマレン氏のチャリティーデーへの支援は、明るい未来が訪れるかもしれないことを示唆していた。

 もちろんその後、続くと思われたその勢いはパンデミックにより失われたので、このウィークエンドは、もはや偽りの夜明けとなってしまった"巻き返し"の1つとなった。

 これ以上期待値を下げることはできないだろうし、そうなれば嘆かわしいかぎりだ。プラス面としては、パンチェスタウンフェスティバル(4月26日~30日)のうち2日において過去最多の観客が集まったように、アイルランドではロックダウン後の競馬への意欲は依然として旺盛であることが挙げられる。

 それは、カラ競馬場がほかのどこよりも懸命に活かしていかなければならないものだ。なぜなら、英国で見られるように生活費の上昇と顧客満足度の低さが結びつけば、アフターコロナの好況は長続きしないからである。

 現状に満足している暇はない。歴史が物語るように、それはカラとはかけ離れた視点である。だからカラ競馬場は行いを改めなければならない。

(1ユーロ=約135円)

[Racing Post 2022年5月18日「The revamp was a shambles - now the Curragh must shape up on latest fresh start」]

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