安全性を高めるはずの白い障害が心配なスタート(イギリス)[開催・運営]
5月15日に地元のストラトフォード競馬場でレースを観戦し、"落馬が異常に多かったなぁ"と思いながら帰ってきた。障害競走6レースに出走した40頭のうち5頭が転倒(fell)、1頭が落馬(unseated)、1頭が拒止(refused)となった。
飛越が下手だったとか、運が悪かったとか見なされるのかもしれない。しかしニール・マルホランド調教師がレースを完走した管理馬ヴァイキングルビー(Viking Ruby)について行ったコメントは共感を呼んだ。それは牝馬ハンデハードル競走で僅差の2着となったヴァイキングルビーが白いハードルに気を取られたのではないかというものだった。
ストラトフォードは、従来のオレンジ色の踏切板やトップボードの代わりに白色のハードル(置障害)とフェンス(固定障害)を導入した最初の競馬場だ。障害競走の安全性を高めるためにBHA(英国競馬統括機構)が委託してエクセター大学が実施した馬の福祉を向上させるための研究の結果、オレンジ色は馬にとって目立つ色ではないという結論に達したために、この変更は行われた。
しかし初期のこれらの兆候が何らかのことを示すのであれば、変更は意図したものとは逆の効果をもたらしたかもしれない。ストラトフォードの今年の最初の4開催で障害競走に出走した174頭のうち5.7%が転倒もしくは落馬しているのである。
この数字は2021年の4.2%や2019年の4%とは対照的である。今年は出走頭数が少なかったので、理論的には騎手がこれらの安全性が高いと思われる障害を馬によりよく見せられるはずだった。
この傾向は、ストラトフォードと並んでほとんどの開催で白い障害を用いているニュートンアボット競馬場でも同じだ。ニュートンアボットの今年最初の3開催で障害競走に出走した馬の5.5%が転倒もしくは落馬している。2021年の5.2%、2019年の3.7%から上昇している。この競馬場でもやはり出走頭数が減少しているにもかかわらずだ。
まだごく初期の段階であることは明らかだが、これまでのところ研究結果を補強する証拠はないようだ。5月21日(土)以降の開催でこのような傾向が続くかどうかを見るのは興味ぶかいことである。BHAがそれらの数字に最新の注意を払うことが期待される。
競馬賭事賦課公社(Levy Board)からの補助金25万5,000ポンド(約4,080万円)を受けて、白色の障害は12月までに英国のすべての競馬場に設置される予定である。状況を評価し、ともすれば障害シーズンが本格的に始まる前に設置を休止しようというなら多くの時間はない。
By Charlie Huggins
(1ポンド=約160円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2022年No.8「馬の視覚に関する研究結果を受けて障害を白色に変更(イギリス)」