ユーロンスタッド、エリート繁殖牝馬を続々購買(オーストラリア)[生産]
ヴィクトリア州ナガンビーのユーロンスタッド(オーナー:張月勝氏)はエリート繁殖牝馬への飽くなき渇望を見せつけた。ゴールドコーストで行われたマジックミリオンズのセリで1,648万豪ドル(約14億8,320万円)を投じ、そのうち710万豪ドル(約6億3,900万円)を最優秀2歳牝馬となったことがあるアウェイゲームとG1・4勝馬トファーネに費やしたのだ。
ユーロンスタッドはマジックミリオンズ・ナショナルブルードメアセールの現役牝馬セッションで100万豪ドル以上となった牝馬8頭のうち4頭を購買した。そのうちキアロン・マー&デヴィッド・ユースタス調教師が管理したアウェイゲーム(上場番号584)を400万豪ドル(約3億6,000万円)で、トファーネ(上場番号542)を310万豪ドル(約2億7,900万円)で落札した。
ユーロンスタッドは早々と手に入れたこれらの収穫物に飽き足らず、追加カタログから100万豪ドル(約9,000万円)以上の牝馬を連続して購買した。レース経験の少ない4歳牝馬フォーエバーユー(上場番号730)を135万豪ドル(約1億2,150万円)で、3歳牝馬マックンチーズ(Mac 'N' Cheese 上場番号731)を160万豪ドル(約1億4,400万円)で落札したのだ。
リトゥンタイクーンシンジケート(Written Tycoon Syndicate)を含めたいろいろな名義で入札に参加しているユーロンスタッドは、合計37頭を購買して総額1,648万豪ドル(約14億8,320万円)を支出し、それは初日の売上総額の38%を占めた。初日の売上総額は4,493万5,500豪ドル(約40億4,420万円)であり、平均価格は24万9,652豪ドル(約2,247万円)だった。
中間価格は12万豪ドル(約1,080万円)、180頭が購買されて売却率は87%だった。
エージェント(馬売買仲介者)のダーモット・ファリントン氏もまた、クライアントの代理として最高級の購買を行った。米国産のクールモアクラシック(G1)優勝馬ライトハウス(上場番号723)を170万豪ドル(約1億5,300万円)で、スウィフトウィットネス(上場番号533)を100万豪ドル(約9,000万円)で手に入れたのだ。
初日において、G2優勝馬ルビサキ(Rubisaki 上場番号508)とステークス2勝のスプリンター、バリスティックラバー(上場番号587)もそれぞれ100万豪ドル(約9,000万円)で購買された。
市場の勢いを物語るのはアウェイゲームの人気ぶりである。このトップクラスのスプリンターを落札しようと、豪州内外の5者が300万豪ドル(約2億7,000万円)以上で手をあげたのである。
アウェイゲームは2歳のときに、マジックミリオンズ2歳クラシック、ウィデンS(G3)、パーシーサイクスS(G2)を制した。またゴールデンスリッパー(G1)、ネッズオークリープレート(G1)、TABクラシックS(G1)で2着となっている。
ユーロンスタッドのCOO(最高執行責任者)サム・フェアグレイ氏はアウェイゲームについてこう語った。「圧倒的な強さを誇るこれらの牝馬、とりわけ彼女のように2歳時に見事な成績を収めている牝馬に対して、市場が勢いづいているのを目の当たりにしました」。
「彼女は美しい牝馬ですね。自らに似た美しい仔を出せば、繁殖牝馬として間違いなくセリで成功するでしょう」。
クールモア・オーストラリアの総帥であるトム・マグニア氏は、セリ会場の入り口のスロープにある柵にもたれかかりながら、自らが提示した390万豪ドル(約3億5,100万円)を上回る400万豪ドル(約3億6,000万円)をユーロンスタッドが提示したことにたじろいだ。そしてこの4歳牝馬にふたたび価格を提示することを断念した。それにより、同氏が2020年に420万豪ドル(約3億7,800万円)で落札したサンライトがマジックミリオンズセールの最高価格牝馬であり続けることになった。
アウェイゲームは2019年マジックミリオンズ・ゴールドコースト1歳セールにおいて、欧州のエージェント、ケリー・ラドクリフ氏により42万5,000豪ドル(約3,825万円)で購買された。5月28日に総賞金70万豪ドル(約6,300万円)のキングスフォードスミスカップ(G1 イーグルファーム)に出走する予定であり(訳注:結果は16頭中10着)、その後クイーンズランドウィンターカーニバル(4月30日~7月2日)の後半に施行されるストラドブロークH(G1 6月11日)かタタソールズティアラ(G1)で引退するだろう。
アウェイゲームを手掛けた1人、マー調教師はこう語った。「彼女はこのセリで慌ただしい2日間を過ごしました。ただただ歩かされましたが、本当に元気です」。
「彼女がやりこなせないことはほどんどありません。順応性が高く、調教が好きなのです。願わくはおとぎ話を完結させるために、なかなか手の届かないG1制覇を成し遂げたいですね」。
ステークス3着内馬イルーシブワンダーを母とするアウェイゲームは、ステークス勝馬モダンワンダーの全妹である。彼女はニューゲート-キローラ・コンサインメントにより上場された。
ユーロンスタッドはすでにアウェイゲームのファミリー(牝系)とつながりがある。昨年のマジックミリオンズセールにおいて、彼女の半妹であり2歳で3着内の成績を残したピッパシャーロット(Pippa Charlotte)を37万5,000豪ドル(約3,375万円)で購買している。この馬はリトゥンタイクーンとの仔を受胎しており、フェアグレイ氏はアウェイゲームを獲得することで「ユーロンスタッドはこのファミリーを生産の基盤にするつもりです」と述べた。
アウェイゲームのレースキャリアは近いうちに幕を下ろすが、トファーネ(マイク・モロニー厩舎)についてはもう1年現役を続行する可能性があり、それほど明確ではない。
昨年のナショナルセールで主取りとなったトファーネは、この1年間にストラドブロークH、タターソールズティアラ、CFオールS(G1)を制した。2020年ジ・エベレストにユーロンスタッドが購入した枠から出走した際には、クラシックレジェンドの9着となっている。
フェアグレイ氏はこう語った。「張月勝氏は2年ほど前から彼女のことをとても気に入っていて、共同馬主のルパート・リー(Rupert Legh)氏に何度か購買を持ちかけていました。そういうわけなので、ついに彼女が手に入れることができて嬉しいです」。
「彼女が今年繁殖入りするかどうかは確実ではなく、様子を見ることにします。この1年で時が経つにつれ調子を上げていったので、まだレースで走る気があるのなら、引きつづき出走させるかもしれませんね」。
吉田勝己氏のノーザンファームがこの競り合いに負けた一方で、フェアグレイ氏は手の内を見せずにオンラインでトファーネの落札に成功した。吉田氏はファンスターとヤングスターといった近親馬を所有している。
G1・4勝馬トファーネはカラモアスタッド(ニュージーランド)のゴードン・カニンガム氏により生産された。母バギーグリーンはG1馬のファンスターの¾姉であり、同じくG1馬のヤングスターの半姉である。
カニンガム氏はニュージーランドのマタマタでモロニー調教師とパム・ジェラード氏とともにトファーネを調教したが、2018年9月にトファーネがテテコ競馬場のバリアトライアルを制した直後に豪州の調教師やエージェントから電話がかかってくるようになった。
決定権を与えられたモロニー調教師はリー氏が率いるシンジケートのために彼女を購買した。
5月24日(火)にゴールドコーストにいたモロニー調教師はこう語った。「彼女は頭脳明晰で、何事にもうまく対処してきました。はじめのうちは輸送が少し難しい馬だと考えていましたが、いざ初めて遠征させてみると本当によく走ったのでびっくりしたものです。今では遠征したときに実力をいっそう発揮する1頭になっています」。
「彼女の特性は慌てないことですね。世話する人が十分かどうか教えてくれます。気まぐれを起こしているきは態度で示してくれます。そんなときは、ただその場から立ち去ればいいのです」。
カニンガム氏はトファーネやその母バギーグリーンとはもう関わりがないにもかかわらず、トファーネが24日(火)にこれほどの高値で購買されたのを見て大きな充実感を覚えたと述べた。
同氏はトファーネが未出走だった頃に、バギーグリーンを同じくニュージーランドの生産者であるヴァラキダウンズ(Valachi Downs)に売却した。
「実は当時、牧場経営をいろいろ展開する中でトファーネを調教させていたので、バギーグリーンを売却しました。今では両馬ともいなくなってしまいました。ただし、思い出と少しの預金はあります」とカニンガム氏は語った。
フェアグレイ氏は、ステークス勝馬マックンチーズが今シーズンも出走するかどうかについてトニー&カルヴィン・マケヴォイ調教師と相談することを明らかにした。この馬はG1馬イクシーダンス(Exceedance)、G2勝馬オックスリーロード(Oxley Road)の半妹である。
しかし、スペンドスリフト・オーストラリアが売却したこの牝馬は4歳でも現役を続行する方向である。
フェアグレイ氏は、「この牝馬は見事な血統に属しており競走成績も良いので、繁殖牝馬群に加えるにはもってこいの牝馬です。このような牝馬を手に入れたいと思ったら、なんとしてでも購買しなければなりません」と語った。
ウィデンスタッドのアントニー・トンプソン氏とデレク・フィールド氏はマックンチーズを手に入れるために協力して競り落とそうとしたが、ユーロンスタッドには敵わなかった。
愛ダービー(G1)優勝馬ソヴリンの全妹で、トニー・ファン(Tony Fung)氏とフェニックス・サラブレッズに所有されて競走生活を送っていたフォーエバーユー(アナベル・ニーシャム厩舎)は6戦3勝を達成している。
ユーロンスタッドはすでにフォーエバーユーの全姉ユーオンリーユーを所有している。ユーオンリーユーは同スタッドで供用されている種牡馬アラバマエクスプレスの当歳牝駒を送り出しており、現在ラッキーベガとの仔を受胎している。.
フォーエバーユーも引きつづき現役を続行する可能性がある。
By Tim Rowe/ANZ Bloodstock News
(1豪ドル=約90円)
[bloodhorse.com 2022年5月25日「Yulong Scores Away Game on Day 1 of Gold Coast Sale」]