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2022年06月09日  - No.20 - 1

デザートクラウン、スタウト調教師に英ダービー6勝目をもたらす(イギリス)[その他]


6月4日(土)英ダービー(エプソムダウンズ競馬場)

 2022年英ダービー(G1)がレスター・ピゴットを追悼するかたちで施行されたとき、人々はこの伝説のジョッキーを引き立てるのにふさわしい偉大な馬が勝利することを強く願った。そしてそれは現実のものとなった。無敗のデザートクラウンが名高いエプソムダウンズの丘で華やかに勝利をあげサー・マイケル・スタウト調教師に待望の英ダービー6勝目をもたらしたのだ。

 その勝利は2½馬身の着差以上に力強くて断固たるものだった。この無敗のナサニエル産駒は、レース前は互角の戦いになる水準と思われていた他馬をさっと引き離しスピードを上げたのだ。

 スタウト調教師が最後にダービーを制してから12年が経過しており、ワークフォースが彼の最後のダービー馬になるのではないかと思われ始めていた。しかし5月のダンテS(G2 ヨーク)でデザートクラウンが未熟さをものともせずに勝利を収めたとき、この76歳の伝説のトレーナーはまた新たな1頭を見つけたと思わせるような言い方をしたのである。

 それでもたった2戦しかせずにこの大舞台に挑むことで、未熟さゆえに窮地に陥るのではないかという拭い切れない疑念が私たちの心の奥底にあった。だが心配は無用だった。彼はすべての疑念に答えを出し、いやはや、その答えの出し方は実に快いものだった。

 スタウト調教師はレース後に、「ダンテSの後、ダービーで優勝するかもしれないとすごく期待していました。ゴールの随分手前で勝利を決めたものですから、そのパフォーマンスに大喜びだったのですよ。彼には勝ちたいという意欲があるのです」と語った。

 その意欲に加えて見事なエンジンがあることが彼を素晴らしい牡馬にならしめている。おそらく偉大な牡馬ともいえる。しかしこの馬がシャーラスタニ、思い切って言うならシャーガーといったスタウト調教師のこれまでのダービー馬のような偉大な存在になれるかどうかは、時間が経ってみないと分からない。

 スタウト調教師はデザートクラウンのダービーでのパフォーマンスについてこう語っている。「坂を上りきったときの位置取りにはとても満足していました。素晴らしい競走馬で、坂を下っていたときにはゆったりと走っていました。すごくスリルを感じました。ダービーを勝つときはいつもそうです。優秀な馬を調教するのは楽しいことですし、幸運にもまた素晴らしい馬に巡り会うことができました」。

 「彼は初期の段階で小さな不安を抱えていて、そのために昨年の晩秋まで出走できなかったのです。深刻なものではありませんでしたが、彼は成長して進化していったのです」。

 いかにもデザートクラウンは特別な存在に進化した。

 ダービー6勝目の期待は消えてしまったと考えていたかと聞かれて、スタウト調教師は「よく分かりませんでしたね。まあ、時間とともにチャンスは小さくなっていくものですよ。毎年それについてはよく考えていないのです。だけど、最後にダービーを制してからもう何年も経っていましたからね」と語った。

 スタウト調教師が絶大な信頼を寄せるリチャード・キングスコート騎手は、この中で最も冷静な様子だった。ダービーを勝ったのに、自動販売機に1つ分のお金しか入れていないのにマーズバーが2つ出てきて喜んでいるのかなと勘違いしそうだ。彼はこのような重要な日のために生まれてきたような人だった。

 勝利ジョッキーは、「何かすごいことをやり遂げたのだと思われるのかもしれませんが、マッコイ元騎手がいつも言っているように、結局のところ馬がほとんどの仕事をやってのけ、私はただラッキーなことに鞍に座っていただけだと思うのです」と語った。

 スタウト調教師の記録は今や、6勝しただけでなくエプソムでの勝馬の圧倒的なパフォーマンスにより、偉大なダービートレーナーたちに匹敵するものとなった。それは1981年のダービーに出走した偉大なシャーガーにまでさかのぼる。

 キングスコート騎手はこう続けた。「サー・マイケルとオーナーが私を信頼してダービーでも根気よく騎乗させてくれたのは、大変勇気のある決断だったと思います。サポートしてくださったことにとても感謝しており、本当に素晴らしい馬に乗せてくださいました」。

 「私はリーディングジョッキーでもライアン・ムーアでもありません。そこそこ良いキャリアを積んできましたが星明りに照らされるようなキャリアというわけではありません。彼らが他に目を向けなかったのは大変なことだったと思います」。

 キングスコート騎手はすべての賛辞をデザートクラウンのほうへ向けて、「今日はダンテSのときよりも少し多くのスイッチが入りました。道中はきびきび動いていましたね。合図を送ったらそれをすぐに実行しました。ヨークでは奮起させるのに少し時間がかかりました。今日はずっと機敏でしたね。彼にはギアがあるのです」と語った。

 「私が騎乗するときはいつもこの馬は落ち着いていて、今日も例外ではなかったですね。欠点がみつかりません。発走地点に行くときに花火が上がりましたが、彼は平気でした。本当に素晴らしい馬なのです」。

 「ダービーを勝ったことを実感したときには鳥肌が立ちましたね。残り2ハロン(約400m)で決着がつきました。子どもたちが来ることができて良かったと思っています。ルーティンが変えられてしまうので、彼らが来ることにちょっとナーバスになっていました。だけど妻はここに来たがったのです。みんな来てくれて嬉しかったですよ」。

 デザートクラウンが勝ったことに驚きはなかったが、2着馬、3着馬には誰もが驚かされたに違いない。単勝151倍のフーヤマルが2着、単勝26倍のウエストオーバーが3着に入ったのだ。先頭を走っていたチェンジングオブザガードは5着に敗れ、それがバリードイル勢の中の最高位だった。しかし今回のダービーはエイダン・オブライエン調教師のものではなくスタウト調教師のものだった。

 最高の舞台は最高の優勝馬によって引き立てられたのだ。
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By David Jennings

[Racing Post 2022年6月4日「Desert Crown dominates to provide Sir Michael Stoute with super sixth Derby win」]


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