ニューマーケット、オールウェザーの調教走路のみの使用が常態化（イギリス）［開催・運営］

　8月８日（月）の朝、全長50マイル（約80km）の芝の調教走路にアクセスできなくなり、それがニューマーケットの調教師たちにとっての新たな常態になった。

　７月は記録的な乾燥でニューマーケットは干上がってしまった。レースコースサイドにある散水して使用する調教走路が、芝で調教を行うための最後の砦だった。しかしニューマーケット競馬場のジュライコースとローリーマイルコースの散水を優先するために1週間前に閉鎖され、14マイル（約22.5㎞）のオールウェザーコースがその重荷を背負うことになった。

　ウォーレンヒルでは８日（月）午前10時の気温は25度だったが、週末には32度まで上昇する可能性がある。そのため調教師たちはふたたび状況に適応する準備を進めていた。気温40度を記録した7月18日と19日ほどではないにせよ、温度計が上昇する前に調教を終えるべく早めに引き上げたのだ。

　芝の走路にアクセスできないことは主に2歳馬の調教に影響を及ぼしている。多くの調教師は2歳馬を芝レースに出走させる前に、調教場の芝走路で練習させることを好んでいるのだ。

　チャーリー・フェローズ調教師はこう語った。「現在出走させている2歳馬は、芝走路が閉鎖される前に何とか散水して使用する走路で調教することができたので大丈夫です。でも3～4週間後に別の馬がやってくるので、それまでに芝で走らせられないとなると困るのです」。

　「少しも雨予報のない驚くべき天候ですが、ニューマーケットに多くのオールウェザーコースがあってラッキーです」。

　ジョン・ゴスデン調教師は英国が熱波に見舞われたあの1976年の夏を思い出し、現在の設備がどれほど進化しているかについて思いをめぐらすことができる。

　リーディングタイトルを5回手にしたゴスデン調教師はこう語った。「現在のようにオールウェザーコースがあるのはとてもラッキーなことだと思います。1976年はタウンキャンターとバリーヒルズという2つの砂のキャンター走路と、ロングヒルのウッドチップ走路しかありませんでしたから。それでも馬を調教して走らせることはできました。しかし当時の馬は今よりもタフでしたね」。

　当時とは対照的に、現在ではそれら3つのコースはすべてポリトラックになっており、ニューマーケットのバリーサイドにもウォーレンヒルに2つのオールウェザーのキャンター走路がある。また最近アル・バハトリ・ポリトラックが再敷設された。

　ゴスデン調教師はほかの多くの調教師と同様にこれまでのように若馬を芝の走路で調教させるはずだったが、「2歳馬を調教場の芝走路で走らせるのが理想的でしたが、現状がこのようですから、オールウェザーコースでも仕方がありません」と付け加えた。

　調教がオールウェザーのみに制限されているため、アル・バハトリ・ポリトラックとレースコースサイドにあるケンブリッジロード・ポリトラックはより混雑するようになった。しかし調教場の管理をするジョッキークラブ・エステーツ社（JCE）が誰もがスムーズに調教できるように助けてくれている。

　ゴスデン調教師はこう続けた。「皆が早く引き上げることにしているため、午前7時50分のハロー掛けまでにアル・バハトリでは100頭以上が調教されています。そこでJCEはハロー掛けの時間を1時間早くして、皆に協力してくれているのです」。

　サー・マーク・プレスコット調教師は以前ニューマーケット・ヒース委員会の会長を務めていた。それゆえこれまで目にしてきたことから、干ばつ状態が2歳戦の出走頭数に影響を及ぼしていると考えている。

　「調教師たちはやろうと決めていたことをできないかもしれませんが、ある程度のことはできます。ただし通常2歳馬を出走させる前には芝で調教することが望ましいのですが、現時点ではそれは不可能です」。

　「それは2歳馬の出走頭数が少ないことに現れています。おそらく多くの調教師が2歳馬を無理に出走させたがらないことが反映されているのでしょう。しかし、それはニューマーケットだけでなくどこでも同じことです」。

　ほかにもトム・クローバー調教師はこう語った。「ここはオールウェザーコースが整っているので、何とかやっていけます。散水して使用する調教走路を使えれば良いのですが閉鎖されています。いつもは朝6時半に引き上げていますが、この週末は天気予報を見るかぎりでは朝6時に早めることになりそうです」。

By David Milnes

［Racing Post 2022年8月8日「Newmarket's new normal: dry spell means no turf gallops - it's all-weather only」］