リーディングタイトル3回獲得のデソウサ騎手が香港に移籍（イギリス・香港）[その他]

　シルベストル・デソウサ騎手（41歳）は8月21日（日）、ヤーマス競馬場での騎乗をもって英国競馬界から引退する。チャンスに恵まれないということがリーディングタイトルを3回獲得したこのジョッキーの香港でのキャリア再構築の決断に影響を与えているものの、そのことを忌々しく思っているというわけではない。

　デソウサ騎手はキングパワーレーシングが契約を更新しないと決定したことをうけ、今年はフリーで活動してきた。このブラジル人ジョッキーはかつてゴドルフィンと契約していたこともある。

　今シーズンはリンカーンH（ドンカスター）をジョハン（Johan）で制して華々しいスタートを切ったが、最終的には香港に移籍することになった。香港では過去4回の短期騎乗で合計91勝を挙げている。

　2022年に英国で勝利を挙げることは難しくなっており、34勝を挙げたものの勝率はこの15年間で最低の10％だった。

　デソウサ騎手はヤーマスで5鞍騎乗したあと、8月23日（火）に香港に向かう。最後の2鞍は、長年彼のエージェントを務めたシェリー・ドワイヤー氏の夫、クリス・ドワイヤー調教師の管理馬である。

　「悲しみはまったくありませんね。何か新しいことをやりたかったから、嬉しいぐらいです」とデソウサ騎手は述べた。そして今シーズン輝きを失った理由をいくつも挙げた。

　「本当にうまくいっていなかったのです。でもフリーで活動するというのは困難がつきものです。どの厩舎にも1人か2人の騎手が所属していて、騎乗を任せてもらえる馬の数も減っていました。3～4頭立て、2頭立てというレースさえも毎日のように目にします。英国競馬界にとって悲壮なことです。誰もが出走登録料がもったいないから勝つ見込みが高いときだけ登録すれば良いと思っているのが現状ですね」。

　「新入りのジョッキーも多く、成長しつつある彼らに調教師もチャンスを与えたいのかもしれません。どのスポーツもそういうものですよね」。

　「そうしたことを恨めしく思うわけではありません。この国で素晴らしいキャリアを築けたことに満足しています。英国にわたってきた外国人であり、まだ少年のときにブラジルからやって来ましたが、不可能だと思っていた多くのことを成し遂げました。数々のG1競走で勝利を挙げ、リーディングタイトルを獲得しました。名門厩舎とタッグを組むこともできました。しかしどんなスポーツでもそうですが、物事には終わりがあります」。

　「今でも英国を故郷だと思っています。こちらの人々とはもう二度と会わないというわけではありません。だけどある場所でうまくいかないのなら、どこかほかの場所を試してみなければなりません」。

　香港ジョッキークラブ（HKJC）の騎手免許を取得したデソウサ騎手は、シーズン開幕の9月11日から来年の2月20日までハッピーバレー競馬場とシャティン競馬場で騎乗することになっている。

　デソウサ騎手はこう続けた。「その期間に様子をうかがって成り行きを見守ろうと思うのです。香港だってラクではなく、おそらくここよりもずっと競争が激しいでしょう。しかし最初の開催日ですでに4頭～5頭の騎乗依頼をもらっているのです。以前協力したことのある関係者のために騎乗することなります。私が香港に戻ると聞いて、すぐに依頼してくださったのです」。

　アラビアンクイーンで英インターナショナルS（G1）、ファーで英チャンピオンS（G1）を制したデソウサ騎手は、香港に家族を連れて行かない予定である。著名な父の足跡をたどれるよう長男に最善の機会を与えるというのが主な理由である。

　デソウサ騎手はこう語った。「妻と3人の子どもたちはここにとどまります。簡単なことではないのは分かっていますが、15歳のライアンはジョッキーになりたがっています。もし彼を香港に連れて行くとしたら、夢を奪ってしまうことなります。いつか、彼がすごく活躍するのを見てみたいです。骨格もがっしりしているし、体重の問題もないと思います。現在英国では負担重量が引き上げられているので、みんな少しお腹が出ているのですよ！」

　デソウサ騎手は2015年に初めて英国のリーディングジョッキーに輝き、2017年と2018年にもリーディングタイトルを獲得した。香港では2018-19年シーズンの冬に短期騎乗を行い強い印象を残した。44勝を挙げ、香港カップ（G1）をグロリアスフォーエバーで制してG1勝利を果たしたのだ。

By Lee Mottershead

　（関連記事）海外競馬ニュース 2015年No.44「デ・ソウサ騎手、自身初のリーディングタイトルを獲得（イギリス）」