元サッカー選手のミック・シャノン調教師、年内で引退(イギリス)[その他]
ミック・シャノン調教師(73歳)は今シーズン末に33年にわたる調教師生活に終止符を打つ。そして、息子のジャック氏が歴史あるウエストイルスリーステーブルのライセンスを引き継ぐことになる。
カリスマ的なシャノン調教師は10月22日(土)に英国内の平地競走で2,500勝目を挙げたばかりだが、障害競走でも101勝を挙げ、フランス・アイルランド・ドイツでもビッグレースを制している。
シャノン調教師は、ライセンスの変更はずいぶん前から考えていたことで、ジャック氏が10月28日(金)にトレーニング課程を修了した今こそちょうど良いタイミングだと感じていると述べた。
「まだ感傷的にはなっていませんが、現実が差し迫ってくるとそうなるかもしれません。いろいろあって次に進まなければならないことは分かっているのです。物事は見かけほど簡単なものではありません。それに誰にとっても健康は大事なものです」。
「しばらく前からその方向に向かっていましたし、そうなることは誰もが分かっていたと思います。ジャックに完全に調教生活に入ってもらうには良い時期です。彼は豪州や米国の素晴らしい人たちのところで働いてきて、世界中を旅してきました」。
「すべての若いトレーナーが必要としているチャンスを彼が得られるのはとても嬉しいことです。しかし彼にはまずまずの馬を数頭残すだけです。簡単な仕事ではありませんが、うまくいくことを望んでいます」。
ジャック・シャノンJr.調教師は書類上の手続きを終えており、ライセンスの手続きが完了した時点で名義変更が正式なものとなる。そして今後も同じ管理馬・馬主・厩舎スタッフとウエストイルスリーで調教を続けていく予定である。
ジャック氏はこう語った。「ワクワクすると同時にプレッシャーを感じていますね。だけど、私も父も長いあいだ準備してきたのです。始めることを楽しみにしています」。
「物心ついたときから父は私のヒーローです。一緒に素晴らしい日々を過ごしてきました。子どもだったとき、調教場で優秀な馬がビッグレースに向け素晴らしい走りをし、そして勝利を掴み取るのを目の当たりにしたものです。いつの日か父と張り合えるほどになれるといいのですが」。
1970年代から1980年代前半にかけて、サウサンプトン、マンチェスターシティ、ノリッジシティでトップクラスのサッカー選手としてプレーしたミック・シャノン氏にとって、競走馬の調教はセカンドキャリアだった。イングランド代表として46試合に出場し21ゴールを決めたが、代表に最多選出されながらも主要な国際トーナメント試合に一度も出場したことがないという残念な記録も有している。
サッカー選手を引退したわずか数年後の1989年に調教師免許を取得して、偉大なディック・ハーン調教師がかつて拠点としていた厩舎、ウエストイルスリーステーブルでほどなく調教活動を開始した。
その5年後にピッコロがナンソープS(G1)を制して初めてのG1勝利を達成し、それ以降、シーザン、トブーグ、ザフィーン、マジェスティックロイ、ミュージックショーなどで英国内のG1勝利を成し遂げた。
最も有名な管理馬は凱旋門賞(G1)で3回2着となったユームザインである。この馬はサンクルー大賞(G1)やオイロパ賞(G1)を制覇した。
ロイヤルパワーが2006年独2000ギニー(G2)を制してシャノン調教師にクラシック初勝利をもたらし、サミターが2012年愛1000ギニー(G1)で優勝した。一方、障害競走では2018年チェルトナムフェスティバルでミスターホイッタカーが勝利を挙げた。
シャノン調教師はこう語った。「幸運でした。素晴らしい馬もいれば、お金のかからない馬もいました。ユームザインは3万ギニー(約536万円)で購買されたのですよ。手頃な価格の馬で多くの勝利を収めました」。
「幸運なことに、すべてがうまくいきました。周りには素晴らしい人たちがいて、いい馬を見つけることができましたね。サッカーでも調教でも、思いどおりのことをするためには運が必要なのです」。
「たくさんの人々に感謝しています。パトリック・トラント氏やピーター・タプリン氏など、最初からずっと馬主は素晴らしい方ばかりでした。それにたくさんの優秀なスタッフに恵まれてきました。私に我慢してくれている妻のジルにも感謝しなければなりませんね」。
歴史あるウエストイルスリーステーブルは6月に売りに出され、現在も希望販売価格6,975万ポンド(約118億5,750万円)で販売中である。
(訳注:ミック・シャノン調教師は2007年ジャパンカップにハリカナサスを出走させたが、同馬はアドマイヤムーンの17着に終わった。)
By James Stevens
(1ポンド=約170円)
[Racing Post 2022年10月29日「'I've got to move on' - charismatic trainer Mick Channon to call it a day」]