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2022年11月10日  - No.42 - 2

フライトラインの所有権の2.5%、460万ドルで落札(アメリカ)[生産]


 フライトラインがBCクラシック(G1 キーンランド)で記録的な勝利を収めたわずか2日後に、フレディ・サイツ氏は種牡馬として将来を嘱望されるこの馬の所有権の2.5%を460万ドル(約6億6,700万円)で獲得するチケットにサインした。フライトラインが歴史を作ったゴール板から目と鼻の先にあるセリ会場でのことだった。

 11月7日(月)はお祝いのシャンパンが開けられただろう。キーンランドのセリ会場におよそ700人がつめかけほぼ満席となり、立ち見エリアも混雑するほどの盛況ぶりだったのだ。この馬のシェアを入札するために事前に登録されたのはわずか42人だった。彼らはエージェントを通じて、あるいは直接、もしくはオンラインで登録を行っていた。会場にいた人々の大半は、歴史を目撃するためにそこにいたのである。

 そしてレースとまったく同じように、フライトラインはまたもや大成功を収めた。

 所有権の2.5%が460万ドルで落札されたことで、フライトライン(父タピット)の評価額は度肝を抜かれるような1億8,400万ドル(約266億8,000万円)となった。

 サイツ氏は落札の数分後に、購買者は匿名を希望していると言ったが、この先変わるかもしれない。競り合っている最中に"西からの購買者"は最初の見積額をどんどん超えても楽しい時間を過ごしているようだったと、サイツ氏は語った。

 そして、「彼はこの馬の一部を手に入れることにワクワクしており、とにかく世間をあっと言わせたかったのです。彼は過去にもいい馬を手に入れてきましたが、明らかにこの馬の足元にも及びませんでした。私たちの誰も、このような馬を購買したことはないでしょう」と述べた。

 キーンランド11月繁殖セールの開始時に、フライトラインの所有権の一部はレーンズエンド牧場のエージェントにより「Hip 1F」の番号で上場された。レーンズエンドの競走部門であるウッドフォードレーシングがフライトラインのシェアを所有しており、この馬はレーンズエンドで供用される。種付料は未定である[訳注:11月9日にフライトラインの種付料は20万ドル(約2,900万円)と発表された]。

 レーンズエンドのビル・ファリッシュ氏はこう語った。「並々ならぬ関心を引きつけましたね。どういう結果になるかは分かりづらいものです。きわめて重要な馬に対してこのようなことが行われたのは初めてであり、上場できたのはたった1つのシェアだったのです。信じられないようなチャンスでした。それにやはり、フライトラインだからこそこのようなことが起こったのです」。

 フライトラインはBCクラシックを8¼馬身というこのレースの史上最大の着差で制した。それに先立つ10月25日に、わずかなシェアを販売する計画が発表されていた。この馬は、フロニスレーシング、サマーウィンドエクワイン、ウエストポイント・サラブレッズ、ウッドフォードレーシング、シエナファームにより所有されている。11月7日(月)にセリにかけられた2.5%のシェアは、ウエストポイントが所有する17.5%のシェアの中から提供された。

 フライトラインは11月6日(日)、6勝目を挙げて獲得賞金450万ドル(約6億5,250万円)以上の無敗のキャリアに終止符を打ち、正式に引退した。BCクラシック以外にも、パシフィッククラシックS(G1)、メトロポリタンH(G1)、マリブS(G1)でG1勝利を果たしている。

 ウエストポイントのCEO兼社長であるテリー・フィンリー氏は、この計画が一体となって実現したことは驚くべきことだと述べた。すなわち、馬はレースで役目を全うし、いわば"唯一上場された新種牡馬のシェア"に関心が集まったのだ。また希少性とマーケティング活動がシェアの販売を大成功に導いたと、フィンリー氏は語った。

 「自分はかなり優秀なマーケティング担当者だと常々思ってきましたが、今回はビル・ファリッシュ氏、(キーンランド協会のCEO兼社長である)シャノン・アーヴィン氏、そしてキーンランド協会とレーンズエンドのおかげで成功しました。すべて彼らのお手柄です。彼らにはビジョンがありました。多くの人々がビジョンを持っていますが、彼らのようにそれを実現できる人ははるかに少ないのです」。

 11月7日(月)にこの馬が購買検討者を引きつけていたことを確認するのにそれほど時間はかからなかった。最初の価格として50万ドル(約7,250万円)が示されると叫び声が嵐のように飛び交い、最初の入札を受け付けるまでに価格は100万ドル(約1億4,500万円)を超えた。そこから鑑定人が頷くたびに価格は10万ドル(約1,450万円)ずつ上がっていった。

 セリ会場の大型画面にはフライトラインのCG画像が映し出されていた。その画面の左上には入札額が表示されていたが、興奮のあまりオペレーターが切り替えに少し遅れをとることがしばしばだった。200万ドル(約2億9,000万円)を超えると安定しだしたが、300万ドル(約4億3,500万円)に近づくとふたたび競り合いは加速し、あっというまにその大台に達した。その後入札は堅実に行われ、ついに落札額に到達した。

 セリ会場は拍手に包まれ、すべての視線がサイツ氏に向けられた。この売買に関わった人たちはメディアのインタビューに応じるために外に出て行った。

 アーヴィン氏は、「このセリは創造的なアイデアの可能性を示すものでした」と語った。

 そして、「適切なものを上場すれば、新しいトレンドが生まれるかもしれません。デジタルオークションで発見したように、上場すべき適切な資産さえあればいいのです。フライトラインはまさにそれです。とてもすごいことです」と語った。

 今回のセリにより、フライトラインのシェアの内訳は以下のようになった。
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 落札者はこの4歳牡馬のシンジケート契約に従い、共同馬主としてすべての権利・利益・義務を受ける。そしてその個人または法人は所有割合に応じて、種付シーズンのアクセス権と種付料収入のシェアを持つことになる。

 ウエストポイントが2019年のサラトガセール(ファシグ・ティプトン社のニューヨークの1歳セレクトセール)で、レーンズエンドが上場したフライトライン(母フェザード 母父インディアンチャーリー)を100万ドル(約1億4,500万円)で購買したことをうけて、最初の馬主グループが結成された。

 今後数日のうちにフライトラインの種付料が発表される予定であり、その決定には7日(月)の評価額がある程度は影響するのだろう。ただ、ファリッシュ氏は今回上場されたシェア以外のシンジケートはすでに機能しているという点を強調した。

 「その評価額が種付料にすごく大きな影響を与えるとは思いませんね。なぜならこのシェア(2.5%)を40個販売しようとしているわけではなく、40倍の価格を基準にするわけではないからです。おそらくある程度の影響はあるのでしょうが、すごく大きな影響ではないと思います」とファリッシュ氏は語った。

 フライトラインのシェアの販売を終えて一段落したところで、フィンリー氏はアーヴィン氏をハグで迎えた。

 フィンリー氏はこう語った。「まったくシュールな光景でしたね。セリ会場に電気が走ったようでした。これ以上ないくらい落ち着いて調整することができました。ビジネスにおいてこんなことはほとんどありえません。もちろんフライトラインと、この馬を毎日つきっきりで世話してきたチームのおかげですが」。

 フライトラインは(ファシグ・ティプトン社の)サラトガセールでフィンリー氏の心を最初にとらえ、記録的なレースぶりで彼の気分を高め、レキシントン(キーンランドのセリ会場)の晴れた午後にもスリルを与え続けたのである。

By Frank Angst and Lauren Gash

[bloodhorse.com 2022年11月7日「$4.6 Million Winning Bid Lands 2.5% Share in Flightline」]


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