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2023年05月11日  - No.17 - 1

メイジ、キャノネロを彷彿とさせるケンタッキーダービー制覇(アメリカ)[その他]


 5月6日(土)ケンタッキーダービー(G1 チャーチルダウンズ競馬場)

 第149回ケンタッキーダービー(G1)は日本からデルマソトガケとマンダリンヒーローが参戦して国際的なメンバーが揃っていた。しかし、この米国クラシック競走を制したのは米国馬であり、関係者の中にはベネズエラ出身の人々がいた。

 チャーチルダウンズに駆けつけた15万335人のファンの前で、ハビエル・カステリャーノ騎手が騎乗し、グスタボ・デルガド調教師が手掛けた3歳馬メイジが、トゥーフィルズと1番人気のエンジェルオブエンパイアを破り、米国の伝説的なレースで優勝を成し遂げた。騎手も調教師もベネズエラ出身である。

 この勝利はベネズエラのヒーロー、キャノネロの記憶を呼び起こした。キャノネロは1971年にチャーチルダウンズの満員のグランドスタンドを驚かせ、2週間後には米国三冠の二冠目であるプリークネスSで引き続き勝利を収めたのだ。

 メイジは、格安で購買されたキャノネロのような質素なスタートを切ったわけではない。セリにおいて29万ドル(約3,915万円)で購買され、今年ガルフストリームパーク競馬場で走って注目を浴びていた。しかし今回のダービーでの勝利は52年前の逆転劇と酷似している。

 メイジはケンタッキーダービー(約2000m)でキャノネロと同じように後方につけていた。スタートで出遅れて18頭中16番手を走っていたのだ。そして2つ目のターン(3・4コーナーのあいだ)から最後の直線にかけて外側から伸び始め、先頭で飛ばしていたジェフルビーステークス(G3)優勝馬トゥーフィルズをとらえに行った。そして直線の半分あたりでトゥーフィルズをかわし、最後の1ハロンで徐々に引き離して1馬身差の勝利を達成した。

 この勝利は、ハビエル・カステリャーノ騎手に騎乗16回目で初めてのケンタッキーダービー勝利をもたらした。エクリプス賞を4回受賞し、殿堂入りジョッキーであるカステリャーノ騎手はダービーの騎乗に向けて準備している際にNBCスポーツで自分が15戦0勝と字幕で紹介されているのを見て、それがモチベーションになったと言う。

 「今年こそはと思っていたのです。 今年こそは連敗を止めるべくあのレースに勝つんだと。自信はありました」とカステリャーノ騎手は語った。

 それは彼の騎乗にも表れていた。惜敗した2つのステップレースのときと同じようにメイジが出遅れたとき、馬を落ち着かせ、18頭の馬群の後方に待機させることに甘んじた。

 速いペースはメイジに恩恵をもたらした。22秒35/45秒73/1分10秒11のハイペースは、前半先頭に立っていたヴェリファイングや先行馬のキングズバーンズとリインカーネイトを苦しめた。一方、メイジの前には依然として多くの追い抜くべき馬がいて、行く手はかなり混み合っていた。しかしカステリャーノ騎手が巧みに進出する機会をとらえると、戦績の少ないメイジは1600m地点で6番手に上がり、その後直線を進んで行き、騎手から何度か鞭を入れられた程度で残りを走り切った。

 カステリャーノ騎手は、「今日のメイジは信じられないほど素晴らしかったです」と述べた。

 メイジは1¼マイル(約2000m)を2分01秒57というほどほどのタイムで駆け抜けた。この勝利で1着賞金186万ドル(約2億5,110万円)を手に入れ、生涯獲得賞金を210万ドル(約2億8,350万円)以上に押し上げた。そして通算成績を4戦2勝(2着1回)とした。メイジは未勝利戦(1月28日)勝利後、ファウンテンオブユースS(G2 3月4日)で4着、フロリダダービー(G1 4月1日)で2着となっていた。この2レースを制したのはライバルのフォルテだった。

 これまでの優勝馬でダービーまでに3戦しかしていなかったのは、リグレット(1915年)、ビッグブラウン(2008年)、ジャスティファイ(2018年)でありメイジはその仲間入りを果たした。2歳時に未出走だった優勝馬は、メイジ、ジャスティファイ、そしてアポロ(1882年)だけだ。

 おそらく経験の浅さからか、メイジは8番人気の伏兵とされ、単勝は2ドルにつき32.42ドル(270円につき4,377円)とされていた(16.2倍)。レース当日の朝には、前売り1番人気のフォルテが出走取消となり注目を集めた。獣医師の厳しい監視のもと、合計で5頭が出走取消となり、3頭の補欠馬が繰り上がることになり、18頭が出走することとなった。

 今年のダービーは出走馬に大きな怪我がなく、見ている者は安堵したことだろう。この開催日ではすでに2頭がレース中の怪我のため安楽死措置を取られていたのだ。チャーチルダウンズ競馬場では4月27日以降、7頭が予後不良となっていることが確認されている。

 トゥーフィルズは2着に敗れても立派だった。猛烈なスピードで先頭から数馬身の位置でレースを進めた先行勢の中で唯一5着以内に入った馬だったからである。

 ジャレス・ラブベリー騎手は残り¼マイル(約400m)でトゥーフィルズが先頭に立つと、観客のどよめきが聞こえてきて昂揚感に満たされたという。「少し早めに動いていって、馬がうまく抜け出せるように隙間を作ろうとしました」とラブベリー騎手は語った。

 そして、「直線を進んで行くうちにあらゆる物音が耳に入ってきて、"このレースを勝つんだ"と思いましたね。後ろを振り返ることもなかったですし、馬場内の大画面も見ませんでした。とにかくゴールを駆け抜けようという気持ちしかありませんでした。そして、あと少しだというときに、脇の下から後ろを見たらメイジが来るのが分かったのです」と続けた。

 ラブベリー騎手はトゥーフィルズ(ラリー・リヴェリ厩舎)について、「彼はすべてを出し切ってくれましたね」と述べた。

 アーカンソーダービー(G1)優勝馬で単勝5倍の1番人気に推されたエンジェルオブエンパイアは、序盤からメイジとともに後方でレースを展開していた。そして最終的にはメイジに1½馬身引き離されて3着に入った。

 エンジェルオブエンパイアはブラッド・コックス厩舎の4頭の中で最先着した。ヒットショーは5着、ヴェリファイングは16着、ジェイシズロードは17着だった。

 フラヴィアン・プラ騎手はエンジェルオブエンパイアの道中の走りについて一切言い訳せず、「先行馬に近いところにつけたかったのですが、ついて行けるだけのスピードが馬になかったのです」とだけ語った。

 ダービーを2勝しているトッド・プレッチャー調教師はタピットトライスとキングズバーンズが7着と14着に入るのを見た。もう1頭の管理馬であり昨年の最優秀2歳牡馬であるフォルテは統括機関の獣医師が右前肢の挫跖について懸念を示したため出走取消となっていた。

 日本からの遠征馬、デルマソトガケとマンダリンヒーローはそれぞれ6着と12着に入った。

 ベネズエラで三冠を4度達成しているデルガド調教師は、「メイジがケンタッキーダービーを優勝してとても嬉しいです。関係者や私の家族も喜んでいることでしょう」と語った。

 メイジはグランドビューエクワイン社(ケンタッキー州)により生産され、馬主はOGMAインヴェストメント社、ラミロ・レストレポ氏、スターリングレーシング社、コモンウェルスサラブレッズ社(クラブ法人)である。レストレポ氏とデルガド調教師は昨年5月、ファシグ・ティプトン社ミッドランティック2歳調教セールでメイジを、当初の予算を上回る価格で獲得した。その後このオーナーグループが組まれることになったのだ。

 コモンウェルスサラブレッズ社のチェイス・チェンバリン氏は、今回の勝利はレーシングパートナーシップで味わうスリルの典型だとし、「競馬とはこういうものですね。1頭の馬が100万人もの人々に支持されるような唯一のスポーツです。弊社の場合は382人が1頭を所有しています」と語った。

 メイジ(母プカ 母父ビッグブラウン)は2021年キーンランド9月1歳セールで、ニューチーム(New Team)により23万5,000ドル(約3,173万円)で購買されていた。

 レストレポ氏は、「オーナーグループは4グループからなります。それぞれバックグラウンドも、年齢層も、国籍も異なります。つまり、この馬のために集まったまさにメルティングポットなのです」と語った。

 メイジは母プカが送り出した4頭の仔のうち2頭目のブラックタイプ勝馬であり、もう1頭はステークス競走で3着内に入ったガニング(Gunning 父ガンランナー)である。母プカはステークス勝馬でありG1馬フィネガンズウェイクの半妹である。ほかにもメイジの全弟である2歳牡駒と1歳のマッキンジー牡駒を送り出している。

 メイジは父グッドマジックがわずかに及ばなかった快挙を達成したことになる。2017年の最優秀2歳牡馬グッドマジックは2018年ダービーで2着だった。

 レストレポ氏は、デルガド調教師と協力して南フロリダにあるデルガド厩舎と自身の生産事業を拡大してきたと言う。

 「このゲームには、競馬界の最高レベルで大量の馬を購買する成功者がたくさんいます。彼らは弾丸を無限に持っているようですが、私が持っているのはマスケット銃です。そしてマスケット銃だからこそ、馬を購買するときはもう外すことはできないのです」。

 2014年に南フロリダに移ってから、デルガド調教師はこれまで2頭をダービーに出走させたが勝てなかった。それは2016年に18着だったマジェスト(Majesto)と2019年に13着だったボーディエクスプレスである。ボーディエクスプレスは後にG1馬となっている。

 デルガド調教師はずっと以前から母国ベネズエラで達成したように米国でも三冠を達成できると信じていたと、息子でありアシスタントでもあるグスタボ・デルガドJr.氏は語った。そして、その信念を若い頃の父に与えたキャノネロの成功について指摘した。

 「父の世代では誰もがそれを口にしていたのです。そして自分ならそれを成し遂げられるといつも感じていたのです。私が子どもの頃に父はベネズエラで成功していて、"いつか米国に行って、三冠レースの1つを勝つべきだね"と常に言っていたものです」。

 5月6日(土)のチャーチルダウンズ競馬場で彼らはまさにそれを達成した。

 まだ二冠が残っている。5月20日(土)のプリークネスS(G1 約1900m)と6月10日(土)のベルモントS(G1 約2400m)である。米国三冠を達成した馬は史上わずか13頭であり、直近ではジャスティファイが成し遂げている。

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By Byron King
(1ドル=約135円)

[bloodhorse.com 2023年5月6日「Mage Rallies to Thrilling Kentucky Derby Victory」]


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