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2023年05月18日  - No.18 - 3

デソウサ騎手、賭事に関するルール違反により10ヵ月間の騎乗停止処分(香港)[その他]


 シルベストル・デソウサ騎手(42歳)は、香港ジョッキークラブ(HKJC)から5月12日(金)に言い渡された10ヵ月間の騎乗停止処分に対して上訴する。この処分は、賭事に関するルール違反によるものだ。

 英国でリーディングタイトルを3回獲得したデソウサ騎手は、同じくブラジル出身のバグネル・ボルヘス騎手が馬券を購入するのを手伝った事実を認めたが、審問の結果にショックを受けているようである。

 デソウサ騎手を担当するハリー・スチュアート-ムーア弁護士は、「シルベストルがHKJCに対して上訴する予定であるという確認が取れました。当然ながら、現時点でこれ以上コメントするのは不適切でしょう」と述べた。また、デソウサ騎手がHKJCの裁定のどの部分に対して上訴するのかについて明言しなかった。

 5月12日(金)の審問に出席した裁決委員は、HKJCの競馬公正確保&賭事分析部門から報告を受け取っていた。そしてデソウサ騎手とボルヘス騎手はルール59条3項に抵触したと判断した。このルールは「騎手は、レースあるいは競馬開催に付随する出来事に対して賭事を行ったり、賭事を行うのを手伝ったり、賭事に関与したりしてはならない」と定めている。

 HKJCのプレスリリースによると、ボルへス騎手は4月26日のハッピーバレー競馬場のハンデ戦(約1800m)で自らの騎乗馬ヤングブリリアントの馬券を購入しルールに違反した。デソウサ騎手はボルへス騎手が馬券を購入できるように"手伝った"とされている。そのレースでヤングブリリアントは7着、デソウサ騎手が騎乗したサティリカルグローリーは11着となった。

 HKJCの声明には、「ボルヘス騎手とデソウサ騎手がそれぞれレースでできるかぎり上位の着順を得ること以外の意図をもって騎乗したという証拠は、裁決委員に提示されなかった」と記されている。

 HKJCの裁決委員は騎手に騎乗停止処分を科す決定を下すにあたり、2人の有罪答弁を認め、それぞれに「賭事に関するルール違反に関して汚点の無い経歴」があることを指摘した。

 しかし、裁決委員は「騎手が賭事を行うことや賭事に関与することが許されないというのは、競馬の公正確保の根幹です」と付け加えた。

 デソウサ騎手とボルヘス騎手に科された騎乗停止処分は、HKJCが言い渡したものの中では2018年にナッシュ・ローウィラー騎手に科された15ヵ月間の騎乗停止処分以来、最長のものとなる。ローウィラー騎手は馬券のヒントを教えた見返りに金銭やプレゼントを受け取っていたという嫌疑が掛けられていた。

 デソウサ騎手は昨年末に香港に移籍した。2021年11月に英国でアイヤワット・シーワタナプラパー氏(訳注:レスターシティFCのオーナー)のキングパワーレーシングが契約を更新しないと決定したことをうけ、騎乗馬を得るのに苦心していたのだ。

 デソウサ騎手は香港に移籍してから45勝を挙げており、騎手ランキングの5位に入っている。獲得賞金は7,559万7,985香港ドル(約12億8,517万円)にのぼる。

 BHA(英国競馬統括機構)のスポークスマンによると、デソウサ騎手の騎乗停止処分の相互適用の要請がHKJCから出されるだろうが、デソウサ騎手が希望する場合は英国で異議を唱えることができる。


 ブラジル出身のデソウサ騎手のキャリアの浮き沈み

 シルベストル・デソウサ騎手は香港ジョッキークラブ(HKJC)から10ヵ月間の騎乗停止処分を受けたことで、20年以上にわたるキャリアはまたもや意外な展開を迎えることとなった。

 デソウサ騎手は馬に囲まれて育ち、18歳でブラジルの見習騎手となり、2年後にはサンパウロで見習騎手のリーディングに輝いた。

 22歳でブラジルを離れ、アイルランドのダーモット・ウェルド厩舎で働くことになった。しかし新たな環境への適応と騎乗機会を得るのに苦労し、その結果ホームシックになった。

 カラ競馬場でのデヴィッド・ニコルス調教師との巡り会いがきっかけとなり、デソウサ騎手は2004年にヨークシャーに拠点を移した。翌年には初騎乗を果たし、2006年の元旦に初勝利を挙げた。

 英国北部を拠点に頭角を現すようになったデソウサ騎手は、名門マーク・ジョンストン厩舎のために頻繁に騎乗するようになった2010年に初めて年間100勝を達成した。翌年には騎手ランキングでポール・ハナガン騎手に次ぐ2位となった。このような成績がモハメド殿下の目に留まり、彼は2012年にゴドルフィンの契約騎手となった。

 主にサイード・ビン・スルール調教師のために騎乗するようになったデソウサ騎手は、2012年ローマ賞(当時G1)をハンターズライトで制しG1初勝利を挙げた。さらに2013年ドバイデューティフリー(G1)をサッジャーで優勝し、2013年のロッキンジS(G1)と英チャンピオンS(G1)をファーで制覇し、2014年ドバイワールドカップ(G1)の栄冠をアフリカンストーリーで手にするなどG1勝利を重ねていった。

 ゴドルフィンとの契約が更新されなかった2015年に、デソウサ騎手は初めてリーディングタイトルを獲得した。ビッグレースでの勝利には、戦術的な手綱さばきによりアラビアンクイーンで達成した英インターナショナルS(G1)優勝などが挙げられる。そして2016年にはジム・クロウリー騎手に及ばなかったものの、2017年と2018年にもリーディングタイトルを手に入れた。

 2018年末、デソウサ騎手はキングパワーレーシングのオーナーであるウィチャイ・シーワタナプラパー氏と英国チャンピオンズデーで知り合ったことをうけ、契約ジョッキーとして騎乗することを承諾した。シーワタナプラパー氏は2018年10月にヘリコプター事故で亡くなり、息子のアイヤワット氏がキングパワーの運営を引き継いだ。

 デソウサ騎手は3年間キングパワーの所有馬に騎乗し、2019年英チャンピオンズスプリント(G1)をドンジュアントリアンファントで制し、2021年ナンソープS(G1)をウィンターパワーで制した。しかし2021年11月、デソウサ騎手とキングパワーとの契約は終了した。

 フリーランスとして活動するようになったデソウサ騎手は騎乗を得るために奮闘し、昨年末、それまで短期騎乗の経験があった香港でフルタイム騎乗することを発表した。

By Peter Scargill
(1香港ドル=約17円)

(関連記事)海外競馬ニュース 2018年No.16「ローウィラー騎手、賭事に関するルール違反で15ヵ月間の騎乗停止処分(香港)」、2022年No.31「リーディングタイトル3回獲得のデソウサ騎手が香港に移籍(イギリス・香港)

[Racing Post 2023年5月12日「Silvestre de Sousa to appeal against ten-month ban from Hong Kong Jockey Club after betting charge」]


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