G1馬カラニシ、障害競走の種牡馬として成功した後に27歳で死亡(アイルランド)[その他]
カラニシ(父ドユーン)は27歳でこの世を去った。現役時代にジャイアンツコーズウェイとの壮絶な叩き合いで競馬ファンを大いに魅了し、競走引退後には障害競走界のトップクラスの種牡馬になっていた。
カラニシは2008年からボーズミルスタッド(アイルランド・ミース州)で供用され、2020年に種牡馬を引退した。
ウィリアム&ジョン・フラッド親子は声明でこう述べている。「無念にも、ボーズミルスタッドの古豪の種牡馬カラニシが今週囲い放牧地で急死したことをお知らせしなければなりません」。
「カラニシはここ数年、その功績にふさわしい引退生活を送っていました。厩舎で働くスタッフ全員のあいだですごく人気がありました。毎年アイルランド・サラブレッド・マーケティング社(ITM)が主催する種牡馬トレイル(牧場巡りツアー)では、競馬ファンや生産者から大きな注目を集めていました」。
カラニシはアガ・カーン殿下により生産された。2歳シーズンを未出走で終え、3歳シーズンはルカ・クマーニ調教師のもとで出走して3戦3勝の無敗を守った。
4歳シーズンの前にサー・マイケル・スタウト厩舎に転厩し、クイーンアンS(当時G2 ロイヤルアスコット開催)をダンシリに½馬身差をつけて制した。そして、エクリプスS(G1 サンダウン)で"アイアンホース"ジャイアンツコーズウェイとの記憶に残る大勝負の1戦目に挑むが、ライバルよりも11ポンド(約5kg)も重い斤量を背負いながらも頭差の2着で惜敗した。カラニシの後ろにはG1馬のシーヴァ(日本産)、サキー、ファンタスティックライトが続いた。
この2頭はいずれも英インターナショナルS(G1 ヨーク)に駒を進め、ほぼエクリプスSを再現するような戦いを繰り広げた。そして1歳若いジャイアンツコーズウェイが最後の数完歩で先着してふたたびカラニシを破った。
その後、2頭の進路は分かれた。カラニシは英チャンピオンS(G1 ニューマーケット)に向かい、G1初制覇を達成した。もう1頭のターフのレジェンドで凱旋門賞を制していたモンジューを破っての勝利だった。
さらに、初めて距離を1½マイル(約2400m)に延ばして挑んだBCターフ(G1 チャーチルダウンズ)でG1・2勝目を達成し、輝かしいシーズンを締めくくった。そして2000年最優秀芝牡馬に輝いた。
5歳も現役を続行したカラニシはタターソールズゴールドカップ(G1 カラ)に臨み、ゴドルフィンのファンタスティックライトの3着に入った。その次のプリンスオブウェールズS(G1 ロイヤルアスコット開催)でもファンタスティックライトの後塵を拝し2着となり、これがラストランとなった。
現役を引退したカラニシは2002年種付シーズンにアガ・カーン殿下のギルタウンスタッド(アイルランド・キルデア州)で供用された。初期の産駒の中には、ロイヤルアスコット開催で勝利を挙げたミズーラや、チェルトナムフェスティバルで2007年トライアンフハードル(G1)と2008年チャンピオンハードル(G1)を制したカチット(Katchit)がいる。
カラニシはアガ・カーン殿下からフラッド家の手に渡り、2008年に障害競走用の種牡馬としてのキャリアをスタートさせた。そして生殖能力の低下で種牡馬を引退する2020年までに、丈夫で才能ある障害競走馬を送り出す信頼できる存在となった。代表的な産駒には、マニフェストノーヴィスチェイス(G1)優勝馬のカラシニコフ(Kalashnikov)、G1バンパー競走を2勝したフェヨナ(Fayonagh)、チャローハードル(G1)で優勝したバーターズヒル(Barters Hill)などがいる。
ほかにもチェルトナムフェスティバルで勝利を挙げたインペリアルオーラとザコンディショナル、アメリカングランドナショナル(G1)の優勝馬ブレインパワーやチャンピオンハードル3着馬ダーヴァースター(Darver Star)、最近2月のボインハードル(G2 ナヴァン)を制した才能豊かなブレイジングカル(Blazing Khal)などを送り出した。
またブルードメアサイアー(母父)としては、2022年ジャンロマネ賞(G1)優勝馬アリスティア、2023年にチェルトナムとパンチェスタウンの両フェスティバルでG2を制したインパーヴィアス(Impervious)を送り出している。
今後もカラニシの産駒が父のレガシー(遺産)をさらに強固なものにする可能性が残されている。
フラッド親子は、「カラニシのラストクロップ25頭は3歳になっています。その中からゴフス社アークルセール(6月13日~15日)とタタソールズ社愛ダービーセール(6月28日・29日)に3頭ずつ上場されます」と付け加えた。
By Aisling Crowe
[Racing Post 2023年5月25日「'A real favourite' - death of Group 1 winner and leading National Hunt sire Kalanisi at 27」]