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2023年06月08日  - No.21 - 1

オーギュストロダン、ギニーでの不振を乗り越え英ダービーを制覇(イギリス)[その他]


 エイダン・オブライエン調教師はオーギュストロダン(父ディープインパクト)が英ダービー(G1)を制して自身にとってこのレースの9勝目がもたらされたとき、この馬をふたたび"ユニーク"と称した。しかし、エプソムのウィナーズサークルに立つ最も"ユニーク"な人物は彼自身だった。

 もちろんオブライエン調教師はそんなことはお構いなしで、クールモアスタッドと自らの調教拠点バリードイルのスタッフ全員かと思われるほどの名前を挙げて称賛した。しかし、今回起こったことはれっきとした事実である。オーギュストロダンが英2000ギニー(G1 ニューマーケット)でひどい惨敗を喫したあと、オブライエン調教師はこれまで歴史を覆し、サラブレッドにとって最大のテストとされる英ダービーを制したのだ。

 1992年にドクターデヴィアスがオーギュストロダンと似たことを成し遂げている。ピーター・チャプル-ハイアム厩舎のこの馬は、ケンタッキーダービー(G1)で7着に終わったのちにエプソムで優勝したのだ。しかし2000ギニーでのオーギュストロダンの走りはそれよりもずっと冴えないものだった。先頭から22馬身も離されての12着である。

 オブライエン調教師が喝采の場で遠慮がちにしていると、スー・マグニア氏とゲオルグ・フォン・オペル氏とともにオーギュストロダンを所有するマイケル・テイバー氏とデリック・スミス氏が、調教師の偉業が称賛されずには終わらせないようにした。

 テイバー氏は「彼は天才です」と述べ、「実績がそれを示しています。レース当日に馬の能力をピークに持っていくのです。一度や二度ではなく頻繁にやってのけていて、それ自体が彼の天才ぶりを物語っているのです」と語った。

 スミス氏は、「素晴らしい調教の成果ですね。エイダンは2000ギニーを度外視して、調教メニューを実行したのです。彼はこれでダービーを9勝したことになり、勝つために何が必要かを分かっています。今回の勝利はエイダンの見事な調教とライアン・ムーアの巧みな手綱さばきによるものですね」と続けた。

 オブライエン調教師が2000ギニー惨敗後もダービー挑戦を思いとどまらなかったことは彼のオーギュストロダンへの思い入れのすべてを物語っている。昨年の時点でも、このディープインパクト産駒のことをまるで宇宙から来た馬のように語り、バリードイルで見た中で最も"重要"かつ"特別"な馬とまで言っていた。

 オブライエン調教師はこう語った。「2歳ですでにとても特別な存在だったのです。とても良い動きをしていて、目を見張るものがありました。信じられないような、無駄のない走り方をする馬ですが、その動きは抜群なのです。とにかく異彩を放っていて、バリードイルで手掛けた馬の中でも至高の一頭だと常に感じてきました」。

 「まったくユニークな存在ですね。ガリレオの牝駒の中でも選りすぐりの一頭であるロードデンドロンと、日本の最も偉大な種牡馬ディープインパクトのあいだに生まれたのです。これまで手掛けた中で最も重要な馬だと思います。欧州とアジアの2つの大陸の架け橋となるような存在で、まやかしではない正真正銘の能力をもっているのですから。すごく楽しみですね」。

 オーギュストロダンはレース序盤で立ち往生していたが、残り3ハロン(約600m)で仕掛け始めた。しかし、キングオブスティールをとらえたのは残り100mを切ってからであり、そのままダービー優勝馬リストに名を刻んだのである。

 オブライエン調教師はこう告白した。「エプソムに向かう車の中でライアンは"感じたとおりに乗る"と言っていました。その通りになりましたね。おそらくオーギュストロダンにとってはより速いペースが好ましかったでしょう。ペースが遅かったので、ライアンはかなり後ろの位置を取ってしまい、多くのことに対応しなければなりませんでした。通常マイペースで走っていて、勢いがついてくるとペースは上がっていくものです。しかし今回彼は仕掛けていって、自らペースを作らなければなりませんでした。彼があまりにラクに走っていて、その後もう一度前進しなければならなかったので、2回ペースを上げなければならなかったと、ライアンは言っていましたね」。

 1970年に2000ギニー・ダービー・セントレジャーを制した最後の英国三冠馬ニジンスキーが歩んだ道を踏襲するのが当初の計画だったと、オブライエン調教師は明らかにした。しかしミドルディスタンスの血統であるために、2000ギニー(約1600m)を勝つのは最も困難だと常に感じていた。

 「一冠目のレースはすべてがうまくハマらないといけないので、最も厳しいものになるだろうと思っていました。そしてすべてが悪い方向に行ってしまいました。しかしレース後の疲れはなく、それがとても重要なことでした。ニューマーケットでの一日は何をやってもうまくいかなかったのです。制御できることは制御しますが、制御できない不確定なことが自分に不利に作用し始めると、止めることができないのです。あらゆる段階ですべてが彼に不利になるような展開でしたね」。

 ダービー3勝を達成したムーア騎手は、ニューマーケットと比較して速い馬場だったことがオーギュストロダンの素晴らしいパフォーマンスに大きく寄与したしすべてをコントロールできているように感じたと語った。

 そして、「彼は道中悠々と走っていて、レース中はとてもリラックスしていました。彼がそれをラクにやってのけたと感じました。ずっと気持ちよさそうに走っていました。この速い馬場が大きな助けになったと思いますよ」と続けた。

 調教師も騎手もこの馬が将来的には10ハロン(約2000m)か12ハロン(約2400m)の路線で活躍することを楽観しているようだ。しかし、これまでのオブライエン厩舎のダービー優勝馬が経験してきたように、次走は愛ダービー(G1 カラ 約2400m)となる可能性がもっとも高いと思われる。

 「彼は今や三冠を達成しないといけないという足かせから解放されています。愛ダービーが明確な目標ですが、彼の今後の状態や、担当厩務員の意見を聞きながら、考えていきたいと思います」。

 この記録破りの調教師が今回成し遂げたことを考えれば、オーギュストロダンがノヴィースハードル路線に進むことが提案されクールモアの面々も満足したとしてもおかしくない。オブライエン調教師の場合、何事であっても可能の範囲を超えることはないようにみえる。

By Lewis Porteous

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