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海外競馬ニュース
2023年08月03日  - No.29 - 1

フクム、ウエストオーバーを頭差に抑えてキングジョージ優勝(イギリス)[その他]


7月29日(土)キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1 アスコット)

 アン王女臨席のもとで繰り広げられた豪奢なレースは、これまでアスコットを舞台とした数々の名勝負を彷彿とさせた。フクム(父シーザスターズ)はウエストオーバーとの大接戦をトップハンデで制した末に、アン王女から表彰された。

 日本のスーパースター、イクイノックスは2400mにおける世界最強馬であると主張することができるだろう。しかし、フクムはジム・クローリー騎手を背に全力を尽くして、並み居るライバルを打ち負かし、欧州のリーダーとして台頭した。

 クローリー騎手は総賞金125万ポンド(約2億2,500万円)のこのレースをこれまで騎乗した中で最高のものだと評した。シャドウェルの自家生産馬フクム(オーウェン・バローズ厩舎)の前に立ちはだかった相手を考えれば異論を挟むのは難しい。

 対戦相手である英ダービー(G1)&愛ダービー(G1)優勝馬オーギュストロダンは単勝3.25倍の1番人気に推され、英ダービー2着のキングオブスティールも単勝5.5倍とまずまずの人気を背負っていた。また優秀な牝馬エミリーアップジョンも大いに支持されていた。さらに古くからのライバルで昨年の覇者パイルドライヴァーとも顔を合わせることになり、昨年愛ダービーを制したウエストオーバーもクラシック勝馬としてこのレースに参戦していた。

 各ブックメーカーがどの馬を1番人気にするかを熟考してオッズを下げたり変更したりして、準備期間の大半を費やしていたのも不思議ではない。

 最後方を走っていたオーギュストロダンには何か不具合があったにちがいない。彼はジキルとハイドに豹変してしまう危険性がある。一方、フクムは安定性と信頼性の代名詞であるような極めて頼りになる馬であり、大きな怪我を経験したにもかかわらず新たな高みへと昇っていた。

 バローズ調教師は「これまでになくいい仕上がりだと感じていました」と述べた。5月のブリガディアジェラードS(G3 サンダウン)でデザートクラウンを負かしたときは、まさにそのことを示していた。

 ブリガディアジェラードSはフクムにとって昨年のコロネーションカップ(G1エプソム)で優勝して以来のレースだった。コロネーション優勝のあとにキャリアを脅かす脚部の負傷に見舞われていたのだ。

 バローズ調教師はこう続けた。「どのような理由にせよ、スピードがあることを見せてくれました。なんとタフな馬でしょう。2着になった馬も堂々たる戦いぶりでしたが、フクムが屈服することがありませんでした。なんというレースで、なんという光景でしょう。前評判に見事にこたえてくれ、叫びすぎて声が少し枯れてしまいました。彼についてどう言えば良いものでしょうか。絶対的なスターですね」。

 「それが意味するところを言葉にはできません。ヒッサ王女にはただ、『またチャンスを与えてくれてくださってありがとうございます』と伝えました。フクムは急に種牡馬にすると言われてもおかしくない状態でしたので、スポーツ精神に則った決断を下してチャンスをくださったヒッサ王女の功績は大きいです。またこれほど良い状態でフクムを送り出したチームのみんなにも敬意を表したいと思います」。

 バローズ調教師は2016年、シャドウェルの総帥である故ハムダン殿下のもとで従事し始めた。そしてここ2シーズンは正式に契約トレーナーとして活動しており、もはやシャドウェルの従業員ではない。

 彼がキャリア最大の瞬間と表現したのも不思議ではない。フクムの25分前には、アルフレイラ(Alflaila)がヨークS(G2 ヨーク)で勝利を挙げていたのだ。

 レース後にアン王女から賞を贈呈された元障害競走騎手のバローズ調教師は、「生涯最高の日になるに違いありません。この馬については言葉がありませんね。私のキャリアで大きな部分を占めます。ロイヤルアスコットでの初勝利も、G1初勝利も彼が達成してくれました。それにハムダン殿下が亡くなった後にドバイで出走しました。素晴らしい馬です」。

 クローリー騎手も同じようにフクムを褒め称えた。彼は昨シーズン、フクムの優秀な全弟バーイードとコンビを組んで素晴らしい快挙を達成していた。

 クローリー騎手は、「これまで騎乗した中で最高のレースでしたよ。間違いありませんね。そうではないなどとどうして言えるでしょうか」と断言した。

 キングジョージでのグランディとバスティノの対決、あるいはクラレンスハウスチェイス(G1)でのシシュキン(Shishkin)とエナーグメン(Energumene)の対決などアスコットで繰り広げられたハラハラするような決勝線での勝負の歴史において、おそらくクローリー騎手は欠かせない存在となるだろう。「彼は全力を発揮してくれましたが、2着馬も決して屈服することはありませんでした。ずっと互角の勝負をしていました。この名勝負の一部となれたのはとてもエキサイティングなことでした。見ているほうがハラハラしたかもしれません。今その心配はありませんね」。

 クローリー騎手が考えなければならないのは、もっと大きな栄光かもしれない。ベットフェア社とパディパワー社は凱旋門賞(G1 ロンシャン)でのフクムのオッズを15倍から8倍に下げた。

 凱旋門賞は10月1日に実施される。それまでにバローズ調教師はフクムを正当に評価する言葉を見つけているだろうが、もし見つけられなかったとしても彼を責めることはできないだろう。

By James Burn

(1ポンド=約180円)

[Racing Post 2023年7月29日「The best race I've ever ridden in' - heroic Hukum and Jim Crowley deny Westover in thrilling King George」]


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