BHA、チェルトナムでのアイルランド勢の圧倒的強さを懸念(イギリス)[その他]
BHA(英国競馬統括機構)のジュリー・ハリントンCEOは、アイルランド勢がチェルトナムフェスティバル開催のG1レースを圧倒的な強さで支配していることが、競馬界にますますダメージを与えていると警告した。
ウィリー・マリンズ氏は、調教師として初めて同フェスティバルにおける100勝を達成し、今年の開催ではG1・14競走のうち8つを制した。また、共にアイルランドの調教師であるヘンリー・デ・ブロムヘッド氏とゴードン・エリオット氏はそれぞれ2勝を挙げた。3月14日(木)に行われたターナーズノヴィースチェイス (G1) とライアンエアーチェイス(G1)ではダン・スケルトン調教師が勝利を挙げ、英国の反撃を牽引したが、ハリントン氏は英国のジャンプレースの衰退のスピードが「それを食い止めるために導入された対策を凌駕している」ことを認めた。
ハリントン氏は、「フェスティバル開催における全ての優勝馬と、その馬の関係者にお祝いを申し上げます。アイルランドの調教師たち、特にフェスティバルにおいて100勝を超える偉業を成し遂げたウィリー・マリンズ調教師には、改めて敬意を表したいと思います。また、勝利を挙げたイギリスの調教師たち、特にダン・スケルトン調教師の見事な勝利にはおめでとうと伝えたいです」。
「英国で馬を調教している関係者が、アイルランドの関係者と互角以上に戦えることは間違いありません。しかし、彼らには反撃手段が必要です。現在のところ、パワーバランスと良質な馬はアイルランドの関係者、特に1つの厩舎に流れています」。
ハリントン氏は、これは新しい問題ではないと述べ、次のように付け加えた。「この傾向は何年にもわたって見られています。競馬界はこの問題を認識しており、関連する資金調達の問題に取り組んだり、投資の増強を求めたり、番組編成を見直したり、そして最近ではクオリティ・ジャンプ・レーシング・レビューの勧告をしたりと、この問題に対処するための対策を講じてきました」。
「しかしながら、今週のチェルトナムフェスティバル開催でアイルランド勢が圧倒的な強さを見せたことで、アイリッシュ海の両岸(英国・アイルランド)の競馬界において、この問題がより顕著に、そしてより大きなダメージとなっていることが分かります」。
「端的に言えば、英国のジャンプレースの最上位レベルにおける衰退の速度が、それを食い止めるために実施されてきた施策を凌駕しています。英国のジャンプレースをあるべき地位に回復させるためには、より早く、より協調的かつ断固とした姿勢で、より多くのことに取り組まなければなりません」。
今年のチェルトナムフェスティバル開催において、アイルランドからは204頭が出走したが、これは全出走頭数の55.59%を占めた。一方で、英国の出走馬は162頭で44.14%であった。これらの出走馬から、アイルランドの調教師は18頭の勝馬を送り出し、その勝率は8.82%、2着馬または3着馬は35頭であった。一方、英国の調教師は9頭の勝馬を送り出し、勝率は5.56%、2着馬または3着馬は19頭となった。
この二国間の差はG1競走においても露呈した。アイルランドのG1出走馬89頭は全体の61%を占めたが、勝率は14レース中12勝で85.7%という驚異的な数字を記録した。さらにアイルランドの調教師は、2着馬12頭、3着馬8頭を送り出している。一方イギリスのG1出走馬は57頭で全体の39%を占めたものの、勝率は14.3%にとどまり、2着馬は2頭、3着馬は6頭であった。
英国のレースの競争力を高める方法について、ハリントン氏は次のように語った。 「中心となるのは、業界戦略の実現です。つまり成長に繋がる戦略です。この戦略の核となるのは、ジャンプレースの最上位クラスへの投資であり、英国内で良質な馬が繁殖され、所有され、調教され、出走されるようにインセンティブを与えることです。2024年には、平地・障害両方の最上位クラスに380万ポンド(約7億2,200万円)の賞金追加投資が予定されています」。
「この戦略は、単に賞金に投資するだけではありません。新規ファンを増やし、既存のファンや馬主を繋ぎ留めることによってファン層を拡大する必要があります。そして、馬主としての体験やレース観戦など、その他についても改善しなければなりません」。
By Jonathan Harding
1ポンド=約190円
[Racing Post 2024年3月16日「Irish dominance 'damaging the sport' warns BHA chief Julie Harrington」]