TOPページ > 海外競馬ニュース > ドバイWC優勝のオシェア騎手、4月に短期免許で初来日(ドバイ・日本)[その他]
海外競馬ニュース
2024年04月11日  - No.14 - 2

ドバイWC優勝のオシェア騎手、4月に短期免許で初来日(ドバイ・日本)[その他]


 賞金総額1,200万ドル(約18億円)のドバイワールドカップ(G1)をローレルリバーで華々しく制した僅か2日後、タイグ・オシェア騎手は調教師たちと電話し、はるか格下のアルアイン競馬場での純血アラブ馬の乗り鞍を求めていた。

 これが、アラブ首長国(UAE)で12度のチャンピオンジョッキーに輝いたオシェア騎手の素顔だ。UAE競馬史上、最も勝利数の多い騎手である彼が成功を収めたのは、その絶え間ない決意、つまり勝利への鉄の意志と、この国の5つの競馬場に関する抜け目ない知識の賜物である。

 簡単なことばかりではない。同騎手のキャリアで最大の成功となったワールドカップでの勝利は、彼が以前騎乗して勝った馬たちが、別の騎手を乗せて走ったレースの後に訪れたものだった。

 しかし、それは今や大した問題ではない。オシェア騎手はタズとのコンビでドバイゴールデンシャヒーン(G1)も制し、メイダン競馬場でG1・2勝を手にしたのだ。

 さらに大事なのは、6歳馬ローレルリバーがボブ・バファート調教師の管理下で2022年ブリーダーズカップを獣医師判断で出走取消となり、オシェア騎手がその復活の使命を背負って騎乗を続けたことである。

 42歳の同騎手は、彼の長いキャリアで最も重要な日の5日後、今も夢のような気分だと語った。

 「毎朝起きるたび、"あれは現実の出来事だったのだろうか?" と思ってしまいます。まだメッセージを読んでいるところです。レースの後に携帯を見たら、WhatsAppのメッセージが900件も届いていたのです」。

 オシェア騎手は2002年にアイルランドで見習いチャンピオンのタイトルを獲得し、故ハムダン・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム殿下からUAEへの奨学金を得て以来、ドバイを拠点としている。それから20年以上が経過し、現在UAE全土で800勝に近づいているが、その大半はより格下のレースで挙げたものだった。

 「ドバイに来てから20年以上経ちますが、ドバイワールドカップに騎乗したのは2022年のリモース(6着)が初めてでした。ローレルリバーのような馬に騎乗できるとは思ってもみませんでした。シーマー調教師が12番枠を引いたときは泣きたい気持ちになりました。5番枠より内枠がいいと思っていたのですが、今考えてみればレースは16頭立てではなく12頭立てでしたから、そこまで不安になる必要もありませんでしたが」。

 オシェア騎手がコースを熟知していたことも勝利への手助けとなった。スタートから積極的に動いてハナを確保し、内ラチ沿いにつけた。レースを振り返って、彼は次のように語った。

 「ローレルリバーの脇につけていたディファンデッドを除いて、あのレースには多くの差し馬がいました。他のジョッキーたちは恐らく、"ローレルリバーは2,000mを走るのが初めてで、行きっぷりもいいから最後までは持たないだろう"と考えていたのではないでしょうか」

 「向こう正面ではずっと楽をさせることができ、"このまま出来るだけ長く抑えていよう"と思いました。内側に手前を変えたときに少し合図を送ると、いい反応を見せてくれました。よっぽどのことがなければ捕まらないだろうと思いました」。

 「あの段階では馬はまだセカンドギアといった感じで、耳も立ち気味でした。メイダンでは多くの勝馬に乗ってきましたが、これほどうまくフィニッシュできた馬は初めてです。少しペースを緩めてターフビジョンを見ると既に10馬身ほどの差がついていたので、もう捕まらないだろうと思いました。とても現実離れした気分でしたね」。

極東への旅

 UAEにおけるオシェア騎手の頂点への飽くなき探求は他の国でも注目されており、現在は世界最高峰の競馬開催地の1つである日本での騎乗を見据えている。UAEでのシーズンに集中するためこれまで公にはしていなかったこのニュースについて、同騎手は次のようにコメントしている。

 「日本に行けることになり、とてもわくわくしています。1月末から2月頭くらいに話をもらいました。4月22日から8週間のJRA短期騎手免許で、関東を拠点に騎乗する予定です」。

 その後、彼はワールドカップの賞金80万ドルの一部を使ってアイルランドにある自宅のローンを返済してから、なかなか取れない休暇を少し取る予定だという。

 「家族全員にとって当然の休暇です」と言う彼は、2022年にスイッツァランドがゴールデンシャヒーンを制した際、家族をスイスに連れて行ったこともある。今年の行き先はまだ決まっていないとのことだが、ローレルリバーが流れるケンタッキー州南東部も候補に挙がっているのだろうか?

 「それは素敵ですね」と彼は笑う。「ジャドモントがローレルリバーに継続騎乗させてくれたことを本当にありがたく思っています。この馬に乗るまでは、彼らの勝負服を着たことすらありませんでした。ブルジュナハール(G3)で彼に騎乗して勝つことが出来たとはいえ、ジャドモントはすべての大陸でチャンピオンを輩出していますし、誰でも好きなジョッキーを選ぶことができました。それにも関わらず、そのまま騎乗させてくれた彼らに敬意を表したいと思います。こういったことが、彼らがいかに一流の経営者であるかを示していると思います」。

 体重8ストーン(約50.8kg)のオシェア騎手は、減量について気にする必要のない珍しいジョッキーだ。しかし、勝ち馬に騎乗することに関して、これほどハングリーな騎手はいないのである。

 (1ドル=約150円)

By Laura King

[Thoroughbred Racing Commentary 2024年4月7日
「Grafting for success: Japan-bound Tadhg O'Shea reflects on amazing Dubai World Cup triumph with Laurel River」]


上に戻る