名牝ブラックキャビア、蹄葉炎のため安楽死(オーストラリア)[その他]
オーストラリアの女傑、ブラックキャビアが18歳で死亡した。25戦全勝の現役生活を送った彼女は、8月17日、スニッツェルとの間の牡馬を出産後、ニューサウスウェールズ州の馬診療所で安楽死の措置を施された。
ベルエスプリ産駒のブラックキャビアは、ピーター・ムーディー調教師の管理下でG1・15勝を挙げた。2012年のロイヤルアスコット開催では、エリザベス女王2世が見守る中、ダイヤモンドジュビリーS(G1)を制覇。ロイヤルアスコット開催での勝利が評価され、同年の欧州チャンピオンスプリンターにも選出された。
彼女はメルボルン、シドニー、ブリズベン、アデレードでも勝利し、2013年のワールドベストレースホースの称号も得た。チャンピオンスプリンターのタイトルを多く獲得し、オーストラリアの年度代表馬にも選出された。
2013年4月にターフを去るまで、ブラックキャビアは生涯で約750万豪ドル(約7億5,000万円)の賞金を獲得した。その後、繁殖牝馬として暮らしていたが、蹄葉炎(繊細な組織である蹄葉の炎症)を患い間もなく他界した。
自厩舎にいたスターホースの訃報を聞いた時、ムーディ氏はコーフィールドにいた。「彼女は1週間ほど前に母乳の感染を起こし、我々は他の繁殖牝馬同様に治療を行いました。しかし、この感染治療でよく起こることですが、蹄に感染が転移してしまいました」
「簡単に言うと、感染が彼女の脚元を殺してしまったのです。今朝、スニッツェルの仔を出産しましたが、直後に人道的な理由で安楽死の措置が取られました」
「昨日、彼女の脚元のCTを撮ったところ、血流が全くないことが分かりました。元々、脈が強い方ではありませんでしたが、血流が一切確認できず、加えて彼女はとても大きな馬なのです」と、ムーディ氏はコメントした。
ブラックキャビアはオーストラリアの人たちの夢を乗せて駆け抜けた。ロイヤルアスコットに出走した際、メルボルンにあるフェデレーションスクエアが開放され、深夜間近にも関わらず何千人ものファンが集い、歓喜した。フェデレーションスクエアは、FIFAワールドカップのパブリックビューイングくらいのイベントにしか大衆は集まらない場所だ。
「何事もなかったかのように過ごせる訳はありません。馬たちに感情移入しないなんて不可能ですし、彼女のような特別な馬には尚更です。私は車の中で1時間泣き続けました。スタッフ全員には電話で伝えました。みんな動揺していました」と、ムーディ氏は言った。
ブラックキャビアは2008年イングリス社メルボルン・プレミアイヤリングセールにて21万豪ドル(約2,100万円)で落札された。2009年4月、フレミントン競馬場でジャラッド・ノスク騎手を背に鮮やかにデビューすると、翌月にブルーサファイアクラシックSを制した。
その後、ルーク・ノーレン騎手がほぼ全レースで手綱を取った。例外は2勝を挙げたヴィクトリアレーシングクラブS(G1)の1勝目でベン・メルハム騎手が騎乗した時だけだった。
ノーレン騎手は彼女の訃報を聞き、「胸にぽっかりと穴が開いた感じ」と語った。
「もちろん、彼女は私のキャリアで欠かせない存在ですが、それ以上に競馬産業にとっても非常に大切な存在でした。彼女はスターホースの一頭でした。彼女のストーリーの一部になれたことは幸せですが、その反面、誰でも私の仕事はできたのだろうと思うと少し罪悪感はあります」と、ノーレン騎手は言った。
ブラックキャビアを所有していたマッデン家、ホークス家、ウィルキー家、テイラー家、ウェレット家は、Xへの投稿で「彼女の死にひどく落ち込んでいます」とコメントした。
ヴィクトリアレーシングクラブの会長、ニール・ウィルソン氏は次のようにコメントした。「ブラックキャビアはチャンピオンホースの枠を超え、多くの人々の人生の大事な一部でした」。
By Charlie Huggins
(1豪ドル=100円)
[RacingPost.com 2024年8月17日「Aussie Legend Black Caviar Euthanized Due to Laminitis」]