発馬機への衝突事故をあわや回避、対策を検討(イギリス)[開催・運営]
11月9日(土)の夜、英チェルムスフォード競馬場で行われたレースで、トラクターの故障により発馬機が馬場に取り残されてしまい、馬の衝突が間一髪で回避されるという事件が起きた。これを受け、関係者からはレース不成立の手順の変更が求められている。
このレースでは、スターターが必死に旗を振って発馬機の存在を知らせたため、ジョッキーたちが素早く回避行動をとって大惨事を防ぐことができた。
最後の直線に差し掛かり、馬とジョッキーは時速40マイルに迫るスピードで走行していたものの、2ハロン地点と1ハロン地点の間に取り残された発馬機のおよそ100メートル手前の地点で人馬は何とか止まることが出来た。
チェルムスフォード競馬場はレース後に発表した声明の中で、この事件は「前代未聞」であり、誰にも被害が及ばなかったことに「深く安堵している」としながらも、「競馬場には今回の事態に対する直接の責任はないが、開催地としての我々の役割は十分に認識している」と付け加えた。
この1マイル2ハロン(2,000メートル)のハンデ戦でサラマンカの鞍上を務めたジェーン・チャップル=ハイアム騎手は、スタート後に発馬機をコースから移動させるのに使われたトラクターのギアが入らず、馬が向こう正面にいるときに関係者を送り、旗を振って騎手を誘導する時間が十分になかったと語った。
イントリカシーに騎乗したハリー・デイビーズ騎手と、妻のクレア氏と共同でアンダリープを管理するダニエル・クブラー調教師は、土曜日に起きた事件の再発防止のため、騎手にもっと早く警告を発することができるよう、競走不成立の手順の変更を望んでいることを表明した。
デイビーズ騎手は次のように語った。「全員衝突せずに止まることが出来て本当によかったですし、ホッとしました。コーナーを曲がったところで旗が振られているのに気付きましたが、すでに発馬機の地点まで100mほどしかなく、ジョッキーたちはみんな、できるだけ早く止めようと叫び始めました」
「最も衝撃的だったのが、向こう正面に旗を持った人がいなかったことです。なぜいなかったのか、皆少し戸惑いました。レース後に話し合い、今後スタート地点から1周して戻ってくるようなレースには、向こう正面で旗を持った係がいるべきだと一同主張しました」
「何も起こらなかったのは奇跡的なことですし、みんな口向きがいい馬で、すぐに反応してくれました。若い馬や経験の浅い馬であれば頭に血が上ったまま走る傾向があり、すぐに止められるとは限らないので、今回は本当に幸運でした」。
アンダリープは、馬たちが最後の直線に差し掛かったとき、先頭集団のすぐ後ろにつけていた。自宅からレースを観戦していたクブラー調教師は、テレビカメラに映し出された馬場上の発馬機を見て、「一体何が起こるのか」と心配していたという。
クブラー調教師は次のように語った。「コースを2周するようなレースで、ジョッキーに早めに警告を与えることができるような人間が、発馬機から離れた場所に必要でしょうか?」
「他の国には、もっとわかりやすい警告のサインがあります。例えば、アンダリープのオーナーであるジェームス(・フィンチ氏)はフランスで馬を所有していますが、フランスの主催者は異常が起きた際、ジョッキーに知らせるためにサイレンやフラッシュライト使っています」
「最終的に誰かの責任を追及することは難しいと思いますが、このスポーツは可能な限り安全でなければなりませんし、何か問題があったときに乗り手に警告を発するという点においては、間違いなく改善の余地があります。今回の件ではそこが重要なポイントだと思います」。
このレースは無効となり、裁決委員は発馬機が足止めされた理由を究明するため、多くの関係者に聞き取り調査を行った。本件に関する報告書はBHA(英国競馬統括機構)に提出され、レース不成立のプロトコルがどのように実施されたのか、またどのような他の要因が今回の事態を招いたのか、さらなる調査が行われることになる。
BHAのスポークスマンは次のようにコメントした。 「チェルムスフォードの裁決委員が土曜日の最終レース中に競走不成立の旗が振られた状況について調査を行い、発馬機をコースから撤去することが出来なかったと結論づけました」
「報告書はBHA本部に送られ、この事件がどのように起こったのか、競走不成立の手順がどのように実行されたのかなどを理解するために、さらなる調査が行われる予定です」。
By Peter Scargill
[Racing Post 2024年11月10日
「Calls made for changes to the stop-race protocol in wake of dangerous stalls incident at Chelmsford]