耳栓使用法を英国式に(フランス)【その他】
平地競走における耳栓(訳注:耳の穴に挿入するボール状の耳栓)の使用法はドーバー海峡の両側で異なっている。9月1日からフランスのルールはイギリスなどの周辺国のルールに同調し、耳栓の使用は認められるものの、レース中に外すことは禁止されることとなる見込みだ。
この取り外しの出来る装具は、主として過敏な馬が物音によりショックを受けないように保護するために使用されるが、実際には騎手が随意に耳栓を外すことができることで別の効果が発揮される。その効果とは、保証のかぎりではないが、仕掛ける時に馬が前へ逃げようとする反射神経を利用するというものである。
この問題について、専門家はさまざまな意見を持っており、ルールを制定する際に調整が必要となる。馬ができる限り人為的でない形でレースすること、すなわち競走の“後押し”となる可能性のある不自然な騎乗方法や馬装具によって影響されないことが望ましいとする原則に基づいてルールが制定される見込みだ。その点について、装具についてはより奇抜で複雑な“道具”を頼みとしている繋駕競走は、平地競走と区別されるべきだ。
アドレナリン
耳栓は本来不自然であり、またそれを認めれば精神的に不安定な馬でも安定した馬と競走できることになるので、耳栓については議論の余地がある。それだけではなく、アドレナリンの分泌を急増させるために、耳栓を外すことはリスクが伴う。騎手は耳の間にある細紐をつかむためにハミとのコンタクトが一時的になくなることがあり、これによりコントロールを失ったり急に馬が斜行する危険が生じる。その余波で馬群の中で周囲の馬に危険が及ぶおそれがある。
イギリスへの同調
耳栓についての外国ルールとフランスルールの間の相違があらわになったことが過去に何度もあった。2004年、サガロステークスでリスクシーカー(Risk Seeker)に騎乗中ゴール手前で耳栓を外したことで、イギリスの裁決委員がドミニク・ブフ(Dominique B遵luf)騎手に過怠金(250ポンド=約6万円)を課した。同じくウィルデンシュタイン(Wildenstein)家の所有馬であるウェスターナー(Westerner)は、イギリスで出走する際に耳栓を着用したが、レース中に引き抜くことは無かった。
フランスギャロ(France Galop)は、討議を重ねた後、イギリス、ドイツなどで採用されているルールに同調することを決定した。9月1日以降、レースの安全性と国際的なルールの調和という見地から、馬に耳栓をつけた場合は、競走中に外すことが禁止される見込みだ。
競馬ファンへの情報提供
一般には、メンコの着用と同様に、耳栓の装着についても申告義務が課されていると思われる。確かに、耳栓の装着・不装着は、馬の勝ち負けを予想する競馬ファンにとって有意義で必要な補足的情報となろう。多数の競馬開催国では、装具を着用する場合の申告が義務づけられている。その極めつけの例が香港である。香港では口から耳に至るまでの装具一式を申告しなければならない。もし、香港に繋駕競走があったなら、それぞれの馬のハミや装具のさまざまな特殊性を記載するため、プログラムはマークで真っ黒になってしまうだろう。フランスにおける耳栓装着の申告義務については、“国際的なルールの調和”が原則であるが、その結論はもうじき明らかになる。
By G醇Prard de Chevigny
(1ポンド=約240円)
[Paris Turf 2007年6月10日「Ne faites plus sauter les bouchons!」]