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海外競馬情報
2007年10月19日  - No.20 - 3

ブックメーカー、賦課金納付の大幅削減を突き付ける(イギリス)【開催・運営】


 競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)の来年度の収入額が3,300万ポンド(約79億2,000万円)程度に激減する恐れがある。これは2007―8年度収入額(推定8,550万ポンド(約205億2,000万円))の60%減に相当する。

 この減少の一部は、ベッティングショップの映像配信料収入の増加によって埋め合わされるだろうが、賦課金収入額の激減の影響は、すでに賞金補助金削減の宣告を受けている競馬界にとって、壊滅的なものになるだろう。

 賞金の60%に相当する賦課公社からの交付金額の削減は実際、競馬界のあらゆる部門に影響を与える。

 深刻な影響が予想される分野は、公正確保、獣医科学、競馬場の施設改善、スタッフ養成、マーケティングである。賦課金が激減する恐れが生じた主たる理由は、競馬場自前のターフTV社(Turf TV)がベッティングショップへのライブ映像配信に参入したことに対し主要ブックメーカーが反発したことによる。

 予想されている3,300万ポンド(約79億2,000万円)という金額を大局的に見れば、1990年代の前半の賦課金収入額と同水準である。しかし、当時の開催日数は2008年の開催日数の半分であった。

 ターフTVは来年の1月1日から、31競馬場(レーシングUK社と提携する30競馬場とアスコット競馬場)からの映像配信の独占権を得ることになる。しかし、4大ブックメーカーであるウィリアムヒル社(William Hill)、ラドブロークス社(Ladbrokes)、コーラル社(Coral)、ベットフレッド社(Betfred)を含む80%のベッティングショップは、ターフTVとの契約を断り、従来のようにブックメーカーが出資した映像配信企業SIS社(Satellite Information Service: 衛星情報サービス)だけから配信を受けることとしている。

 9月18日に賦課公社のブックメーカー委員会(Levy Board’s bookmakers’ committee)は、賭事産業からの賦課金納付額を決めるための提案を準備していた。

 9月19日に予想外の論争が始まった。ブックメーカーは、現在の賦課基本納付額から (1)ターフTVの受信経費相当額と (2) 9月1日に発効した新賭博法に基づき賭博委員会(Gambling Commission)に支払うべき料金の3分の1を合計した額を削減する案を主張しているもようである。

 ベッティングショップ1店舗が、来年1月からターフTV社に支払う受信料は年間6,500ポンド(約156万円)となる。しかし、ターフTV非加入者であるブックメーカー委員会は、現在のところそれと同価値の映像に対して各店が支払っているのは1,600ポンド(約38万4,000円)であり、そのためブックメーカー側が競馬産業へ支払う映像料は5,000万ポンド(約120億円)前後になると主張している。

 ブックメーカー委員会は、約5,000万ポンド(約120億円)の出費は賦課金納付額から控除されるべきであると提言するものと思われる。

 またブックメーカー委員会は、賭博委員会が導入した料金システムにより支払うべき料金は最低に見積もっても200万ポンド(約4億8,000万円)となり、これは英国競馬が負担すべきであるとして、さらなる全体的値下げを提案するだろう。

 これらの提案に基づいて概算すると、賦課金納付額はおよそ5,200万ポンド(124億8,000万円)減少し、3,300万ポンド(約79億2,000万)になると見込まれる。しかし、ターフTVがカバーする競馬場からの映像にSIS社とすでに契約している者も含めて、全てのベッティングショップが料金を支払うとすれば、賭事産業が支払う総額は3,600万ポンド(約86億4,000万円)前後となる。

 競馬界にとっては厳しい概算結果となる。賦課金納付額と映像受信料を合わせた総額は、現在の年間1億2,500万〜1億3,000万ポンド(約300億〜312億円)に比べて、7,000万ポンド(約168億円)程度にすぎないからだ。

 ブックメーカーは、現在の経費に追加してターフTV映像受信料を支払う影響は、営業を続けるために止むを得ない光熱費のような公共料金とは全く異なると主張するだろう。反対に、賦課公社の競馬担当は、ターフTVの映像配信はブックメーカーがその要否を判断すべきものであり、受信経費は賦課納付金とは全く関係ない、と反論するだろう。

 

年度別賦課金納付額の推移

1962-63 90万ポンド (約2億1,600万円) 1997-98 5,550万ポンド(約133億2,000万円)
1966-67 230万ポンド (約5億5,200万円) 1998-99 5,150万ポンド(約123億6,000万円)
1971-72 500万ポンド (約12億円) 1999-00 5,390万ポンド(約129億3,600万円)
1976-77 990万ポンド (約23億7,600万円) 2000-01 5,520万ポンド(約132億4,800万円)
1981-82 1,700万ポンド(約40億8,000万円) 2001-02 6,700万ポンド(約160億8,000万円)
1986-87 2,470万ポンド(約59億2,800万円) 2002-03 7,450万ポンド(約178億8,000万円)
1991-92 3,600万ポンド(約86億4,000万円) 2003-04 1億200万ポンド(約244億8,000万円)
1992-93 4,690万ポンド(約112億5,600万円) 2004-05 9,730万ポンド(約233億5,200万円)
1993-94 5,090万ポンド(約122億1,600万円) 2005-06 9,110万ポンド(約218億6,400万円)
1994-95 5,070万ポンド(約121億6,800万円) 2006-07 9,000万ポンド(約216億円)
1995-96 4,800万ポンド(約115億2,000万円) 2007-08 8,550万ポンド(約205億2,000万円)
1996-97 5,370万ポンド(約128億8,800万円) 2008-09** 3,300万ポンド(約79億2,000万円)
推定 **潜在数

これらの数字にはトート社(Tote)の拠出は含まれていない。ブックメーカー委員会の提案をもとに2008―9年に増額されるベッティングショップが支払う映像受信料の見込額も含まれていない。


 英国競馬統括機構(British Horseracing Authority)理事会は、賦課公社に対して競馬の資金をより多く拠出させるための努力を要請するとともに、ベッティングエクスチェンジからの拠出額のレベルを検討することや、ブックメーカーへの賦課額について粗利益を基準とすることの適否を検討する必要性を強調するものと思われる。

 賦課公社の会議における2008―9年度賦課枠組みの合意作業は、10月31日の真夜中まで続けられ、その後、文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport)の担当国務大臣ジェームズ・パーネル(James Purnell)氏に最終的に付託される。

By Howard Wright
(1ポンド=約240円)

[Racing Post 2007年9月20日「Crisis looms as bookies threaten huge cut in levy」]


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