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海外競馬情報
2007年11月16日  - No.22 - 1

調教中の薬物検査(アメリカ)【獣医・診療】


 競走能力を高める薬物が存在し、それを伝統的な検査方法では検出できないとすれば、競馬の公正確保に明白かつ差し迫った危険を生じさせるだろうか。

 調教師の中には罰せられずにごまかせることを知りながら成功やぼろ儲けの魅力に屈しない者はいるだろうか。

 その答えは明白なように思える。

 このような薬物は存在している。それはエポゲン(Epogen)である。エポゲンはエポ(EPO)としても知られている。エポとそれに極めて近い薬物は血液ドーピング剤である。エポは赤血球生成を増進するために製造されており、それは化学療法を受けているがん患者や重い貧血症の患者のために使用される。エポは人間の生命を救う。

 馬に投与されると、エポは赤血球を増やし、その結果、酸素運搬機能を増進することによって競走能力を高めると言われている。

 数年にわたる多額の費用と労力をかけた研究の結果、ペンシルヴェニア大学(University of Pennsylvania)は2006年8月、馬の体内からエポを検出する方法を開発した。

 この広く賞賛すべき研究によって、競馬界はついに血液ドーピングを行う者を摘発し、罰する手立てを得たのである。しかしながら、克服しなければならない障害はまだ残っている。検査によってエポを確認できるのは投与後約72時間であるが、この薬物の競走能力を高める効果は2週間持続するからだ。したがって、競走後検体を採取する通常の方法は役に立たない。

 しかし解決策はある。エポ検出は、調教中における検査を実施すれば可能となる。この検査方法は、全てのメジャーリーガーやオリンピック選手に対し行われている。

 選手たちは、いつでもどこでも予告なく検査される。血液サンプル採取の日時がはっきりしないため、過去には不可能だった薬物取締を可能にし、抑止効果を期待できる。今や競馬界は調教中の薬物検査の実施に向けて行動しなければならない。

 競馬界に血液ドーピングはどの位広がっているのか。

 エポは自転車ロードレースであるツール・ド・フランス(Tour de France)を台無しにした薬物である。同レースの選手は、レース当日以外の検査の実施を知りながらも、自身にエポを注射していた。調教師の中に、調教中検査が実施されないのに、なお馬への禁止薬物投与を自制する調教師がいると信じるのは、認識が甘すぎる。

 私たちは、“スーパー・トレーナー”という説明不可能な現象が生じたときや、薬物によって競走能力が著しく高まったことを目の当たりにしたときに落胆させられる。私たちは、競馬関係者にとって“スーパー・トレーナー”や“ジュース”といった用語が職業語の一部になってしまった時代に生きている。

 倫理観の欠如したホースマンは、それがたとえ少数であろうと、エポなどの血液ドーピング剤によって、競馬を台無しにする可能性がある。

 朗報がある。一部の競馬委員会は一歩前進して積極的に調教中検査プログラムを始めた。カナダのオンタリオ州、カリフォルニア州、デラウェア州が率先して開始し、インディアナ州、ミシガン州もこれに追随した。ケンタッキー州はケンタッキー・ダービー(G1)の出走馬に限定した検査を実施した。ニュージャージー州は、おそらく、今月末にブリーダーズ・カップ・ワールド・チャンピオンシップ(G1)出走馬について調教中検査のプログラムを開始するだろう。これは素晴らしいスタートであるが、まだなすべきことが沢山残っている。

 悪材料は、競馬界には血液ドーピング問題に対処しようという切迫感がないように思われることだ。行動を起すよう呼びかけると、無関心としか言いようのない反応に出会う。競馬産業の投資家たちは、確かに理屈としては競馬の公正確保に賛成する。しかし、必要な対策を講じることは別の話である。競馬は変わらなければならない。私たちは皆、競馬関係者が極めて保守的であることを承知している。

 競馬場所有者の中に、血液ドーピングで非難されている巧妙な調教師を公表することは望ましくないと思う者がいるだろうか?ホースマンの中に、いつでもどこでも予告なしで検査するという方法では迷惑だと思う者がいるだろうか?競馬委員会の中に血液ドーピング対策ができないところがあるか?

 新しい非合法ドラッグの検出方法を開発するために研究資金が交付されるようになることを期待しつつ、結論を棚上げしたままにしてきた案件を調べるために、ちょっと後を振り返ってみよう。

 私たちにはいくつか未完成の仕事が残されている。さあ仕事に取り掛かろう。

By Joe Gorajec

[The Blood-Horse 2007年10月13日「Out of Competition Testing」]


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