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海外競馬情報
2007年11月30日  - No.23 - 1

賭事独占を防御するフランス競馬界(フランス)【開催・運営】


 フランスギャロ(France Galop)のルイ・ロマネ事務総長が、「フランス競馬は命を賭けて闘う」と言い、フランスの調教師の重鎮であるクリスチャン・ヘッド(Christiane Head-Maarek)氏がブックメーカーを“根っからの悪者”と言い表し、事態は深刻化してきている。

 どれほど深刻であるかは、11月6日にブリュッセルで行われる非公開の会合で、フランス政府とフランス場外馬券発売公社(Pari Mutuel Urbain: PMU)が、欧州委員会(Europeen Commission)の委員に対してフランスの国営賭事の独占的地位を防御する姿勢ではっきりするだろう。

 EU域内市場・サービス問題を担当するチャーリー・マッククレーヴィー(Charlie McCreevy)委員(アイルランド)をはじめてとして、欧州委員会側は越境賭事の自由化を目指している。

 2006年4月に欧州委員会は、フランスに対し、同国が民間賭事業者を締めだし、賭事分野で競争を認めないことに対し、懸念を表明した。今回の会合によって、交渉プロセスが最終段階に入る。

 越境賭事の自由化を求められているのは、フランスだけではない。欧州委員会は、ラドブロークス社(Ladbrokes)やスタンリーベット・インターナショナル社(Stanleybet International)を含む英国の民間賭事業者からの欧州連合(EU)加盟10ヵ国に関する苦情申立てに対して、最終的に6ヵ国がEC条約第49条(サービスの自由化に関する規定)に照らして問題があると指摘した。サービス自由化の対象には競馬などのスポーツ賭事が含まれている。

 フランスとスウェーデンに関する欧州委員会の意見書には、「問題になっている制限措置は、EU法に適合していない。スポーツ賭事の自由化を制限するためにとられた措置には、必要性、均一性、公平性が見られない」と記されている。

 フランスに対して、さらに踏み込んで、「他のEU加盟国で免許を取得したスポーツ賭事業者の経営者に対し刑事制裁を課し、あるいは課そうとした」と記している。これを裏付けるかのように、フランスを絶えず苛立たせていたユニベット社(Unibet)のペッター・ニーランダー(Petter Nylander)社長に対してフランスの裁判官により逮捕状が出され、同社長がオランダで身柄を拘束された。

 欧州委員会の意見書に対する回答が満足のいくものと判断されれば、事案は国内法に対し拘束力を有する裁定を得るために欧州裁判所(European Court of Justice)に付託される。

 欧州委員会は、理由を付した意見書に、次のような記述を加え、方向性を示した。

 「賭事活動を制限する場合、その制限は消費者保護と同様に一般的利益の保護を目的とするものであり、“体系的で一貫性のあるもの”でなければならない。これは欧州裁判所の見解である。EU加盟国は、一方で国営の宝くじ、ゲーミングあるいは賭事に参加することを国民にすすめながら、他方で国民がそれ以外の賭事に参加することを制限する必要があるという主張はできない」。

 これらの2つの文章は、フランス政府が取り組むべき競争に関する議論の核心をついている。

 ラドブロークス社のe Gaming(オンライン賭事)担当役員のジョン・オレイリー(John O’Reilly)氏は、「私たちはフランスの独占企業であるユーロミリオン社(Euro Millions lottery)がイギリスでくじを発売するのと競争しなければなりません。その一方で、私たちがフランスで賭事・賭博営業を禁じられているのは不当です」と述べた。

フランスの競馬と競馬賭事:2006年度統計
フランス場外馬券発売公社(PMU)
売上げ 81億600万ユーロ(約1兆2,969億6,000万円)
払戻金 59億ユーロ(約9,440億円)(売上げの72.8%)
支出金 22億1,000万ユーロ(約3,536億円)
〈内訳〉 政 府 10億3,000万ユーロ (約1,648億円) 売上げの12.66%
  PMU運営費 4億6,880万ユーロ (約750億800万円) 売上げの5.77%
  レース賞金 6億5,300万ユーロ (約1,044億8,000万円) 売上げの8.06%
  雑 費 5,800万ユーロ (約92億8000万円) 売上げの0.72%
2006年賭事総売上げ:3,570億ユーロ(約57兆1,200億円)
PMU:23% カジノ:53% 宝くじ:24%
競馬従事者:62,000人 ベッティングショップ:7,476人
常連賭事客:650万人(35歳以下33%;35―49歳33%;49歳以上33%)

 欧州委員会も関与することになったこの賭事問題に対して、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)新政権は、怒りを和らげはじめてはいる。

 エリック・ヴォルト(Eric Woerth)財務大臣は9月、政府は“インターネット賭事に市場を開放することに反対していない”が、“国民の福祉と賭事依存症への懸念を理由に”自由競争には同意しないと表明した。

 同財務大臣は、「欧州委員会の介入によりイタリアとスペインのいくつかの地方が行ったような、ベッティングショップに対する営業免許の認可はしません」と述べた。

 ミッシェル・アリヨ=マリー(Michele Alliot-Marie)内務大臣は10月、政府がインターネット賭事分野の今後の規制について、もっとオープンに話し合いたいとくり返し述べた。

 同内務大臣は、「私は、聖域なしに将来構想を検討したいと思っています」と述べた。ヴォルト財務大臣は、代表団の一員として、マッククレーヴィー委員など欧州委員会側とブリュッセルで会合するが、同大臣はフランス競馬界と賭事界の懸念を述べ立てるだろう。

 不正行為があったために、フランスでは20世紀にブックメーカーは違法とされていた。このことが、へッド氏の見解の背景となっている。1930年からPMUがフランス競馬賭事を独占運営しているのだが、たった1社が権利を保持している点は厳しい攻撃を受けるだろう。

 PMUのベルトラン・ベランギエ(Bertrand Belinguier)会長は、おだやかに次のように説明した。「もし賭事市場が開放されるならば、“フェア”な競争をするべきです。すなわち、賭事業者はフランスで営業する場合、その顧客から同じように税金が払われるべきです。もしPMUが10%の控除を要求されていて、他の業者の控除が0%であるなら、それは競争条件を歪めることになるでしょう。さまざまなレースや調教センターを運営するための資金として、またふさわしい賞金を提供するための資金として、競馬活動への公正な資金還元があるべきです」。

 また、同会長は、PMUは競馬のみの賭事を行う組織として競馬界が設立したものであり、この点で、他の賭事業者と異なると述べた。

 同会長は、次のように付言した。「昨年、フランスでは総売上げの8.5%が競馬に還元されました。アイルランドではたった1%、英国でも1%前後しか還元されませんでした」。

 「このような大きな違いに、フランスの競馬関係者は非常に懸念しています。野放図な賭事市場開放によりベルギーとドイツで何が起きたか、そしてイギリスで賞金が削減されて何が起きているのか、競馬関係者は知っているのです」。

 

[Racing Post 2007年11月6日「Crunch time for France racing as it defends PMU monopoly」]


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