競馬番組の協調に向けた小さな一歩(アメリカ)【開催・運営】
この話題は大ニュースにはならなかった。しかし、ニール・アームストロング(Neil Armstrong)氏が、月面の小さな一歩について雄弁に語ったように、このことは大きな飛躍となるだろう。同様に、この発表は意味のある変化につながる協力の証しである。
私は、もちろん“変化するにつながる”と期待している。
ニューヨーク、デラウェア、ニュージャージーおよびペンシルヴァニアから、番組担当者が諸問題について話し合うために集まった。この話合いから何かが引き出されれば、それを達成するのにさらに時間を要するであろうし、月面への一歩ほど劇的ではないかもしれないが、サラブレッド産業にとっては、アームストロング氏の足跡が多くのアメリカ人に意味したことよりも大きい意味をもつだろう。
以下のレースについて考慮してみよう。
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7月29日 ジム・ダンディ・ステークス(G2)、3歳、9ハロン(約1,800 m)、
賞金総額50万ドル(約6,000万円)サラトガ競馬場 -
8月4日 ウェストヴァージニア・ダービー(G3)、3歳、9ハロン(約1,800 m)、
賞金総額75万ドル(約9,000万円)、マウンテニアー競馬場 -
8月5日 ハスケル招待レース(G1)、3歳、9ハロン(約1,800 m)、
賞金総額100万ドル(約1億2,000万円)、モンマスパーク競馬場
レースの日程計画は、確かに最も重要なことの1つだろうが、地域の競馬場が地域内で定期的にじっくり話し合うべき諸問題の1つにすぎない。誰にでも、同じ馬たちを対象に1週間に3レースを施行するのは、ほとんど意味がないとわかる。それは、サイマルキャストのようなものがなかった30年前には意味があった。質の高い出走馬をレースに集めれば、売上げに貢献したし、その売上げはすべて開催場の取り分となった。60マイル(約97 km)先であろうと600マイル(約966 km)先であろうとどんなレースが開催されていても、問題にならなかった。しかし、私たちは違う時代を生きている。
現在、馬券販売の約85%が、場外販売(サイマルキャスト、会員制の電話投票、ボタンをクリックするだけのインターネット投票)である。賭事方法は変化したが、多くの競馬場の考え方は変わっていない。
サイマルキャスト以前は、競馬賭事客は1つの競馬場で賭事予想を行い、生のレースを観戦し、その場のレースに賭けていた。2007年現在では賭事客の選択肢は有り余るほどあり、競馬場職員はそれを十分に利用できるのだ。他の競馬場の看板レースを売り込むことに何ら間違ったところはない。しかし、国内の競馬場多くはケンタッキーダービー(G1)の販売促進しているのに、なぜ東海岸の競馬場はニューヨーク州のサラトガ競馬場で行われるトラヴァース(G1)やニュージャージー州のモンマスパーク競馬場で行われるハスケル招待レースの販売促進をしないのだろうか?
6競馬場を網羅するピックシックス(Pick Six 6重勝)をやるとすれば、どれくらいの競馬賭事客が買ってくれるだろうか?
各州内の競馬場が、共通の販売業者からテレビを購入することにより共同で経費を節約すること、あるいはある特定のメーカーの清涼飲料やビールを競馬場で販売することで販売元から安く仕入れることをじっくり考えるとしたらどうなるだろうか?
薬物規定と検査方法の統一する話合いは、数十年に渡って行われてきた。全国的に統一されなくても、少なくとも地域的には統一され始めるだろう。東海岸では定期的に州から州に移動する競走馬がいるため、馬主や調教師が次にどの州で馬を出走させるか心配しないようにするためには、統一化は意味のあることである。
競争することは良いことだ。人々により良い仕事をさせる原動力となる。しかし、競争状態にあっても、メンバー全員の利益となるだけではなく、属する産業にとって一助となる場合には、全員で協力する場合は多い。
ニューヨーク、デラウェア、ニュージャージー、ペンシルヴァニアのいくつかの競馬場の職員の間で行われたこの会合は、正しい方向への第一歩である。この会合は、メリーランド、ウェストヴァージニアおよびマサチューセッツの競馬場職員を加えて、再び開催されるであろう。
競馬場は現在、互いの改良のために一丸となって取組んでいることを考えてほしい。
これは、小さな一歩で、宇宙船は不要である。
By Dan Liebman
[The Blood-Horse 2007年11月27日「What’s Going On Here−One Small Step」]