人工馬場の敷設、伸展続く(アメリカ)【その他】
キーンランド競馬場で事故多発
カリフォルニア州のゴールデンゲートフィールズ競馬場がタペタ・フッティングスの人工馬場をオープンする1週間前、ケンタッキー州の主任競馬獣医官は、 キーンランド競馬場の2007年秋開催における競走馬の予後不良事故は、昨年と比較して3倍にのぼるという報告を発表した。
キーンランド競馬場は、2006年の秋開催から人工馬場のポリトラックを導入したが、同開催では事故率が著しく減少し、2頭が予後不良事故に遭い、1頭 が致命傷ではないものの救急車で運ばれただけで安全性が裏づけられた。ところが今年の17日間の秋開催における事故件数は大幅に増加し、6頭が予後不良事 故に遭い8頭が救急車で運ばれた。今年の数は、従来のダートコースで施行されていた2004年と2005年の秋開催のすべてを含めてそれぞれ10件の故障 の数字に比べ、40%増となる。
ケンタッキー州の主任競馬獣医官であるラフ・ニコルズ(Lafe Nichols)氏は、個々の事故は多くの制御できない不安定要素が原因となっているので、結論は簡単に出せないと注意を促した。統計は、競馬場内で起き たすべての事故を含んでおり、2007年の予後不良事故のうち1件はパドック内で起きたものである。
競馬場は、2006年の秋開催での2件の予後不良事故のうちポリトラック馬場で発生したのは1件のみであり、2006年の春開催では同馬場において予後不良事故は発生していないと報告していた。
キーンランド競馬場の競馬担当理事ロジャーズ・ビーズリー(Rogers Beasley)氏は今秋、同競馬場の役員たちが2007年の秋開催の事故の増加は例外的なものであると望んでおり、それを裏づける証拠をもとめて、人工馬場を数日にわたって査察した。
ビーズリー氏は、「私は、その答えを得たいと考えていますが、戸惑っています。私たちは馬場に何の手も加えず、以前と同じポリトラックの深さを維持しています」と述べた。
同氏は、秋開催初めの気温の上昇が事故増加の原因の1つであると言う人もいると述べた。
同氏は、「多くの人々がこのことについて、気温の上昇が事故原因になり得ると考えましたが、残念ながら気温が下がった後にも同じ傾向が続きましたので、私たちはその可能性を否定しました」と述べた。
ビーズリー氏とキーンランド競馬場の理事たちは、1,100頭のサラブレッドが同競馬場の馬場で、5〜7月にまったく事故を起こさなかったことに着眼 し、依然としてポリトラック馬場の安全性を信じている。この秋開催は、平均出走頭数が10.1頭で、延べ1,505頭という多数の馬が競走し、好評を博し た。しかし、ビーズリー氏は、事故増加を出走馬の増加のためだとしたくないのが本音である。
ビーズリー氏は、「私たちは言い訳として、出走馬の増加を指摘したくありません。世界で最も安全な人工馬場を保有していると信じたいのです」と述べた。
ゴールデンゲートフィールズ競馬場は幸先の良いスタート
タペタ人工馬場から発展したポリトラックの特許を持っているマイケル・ディッキンソン(Michael Dickinson)調教師も、8月30日に初めてタペタ人工馬場で競走が開催されたペンシルベニアのプレスクアイルダウンズ競馬場で安全性を確認していた。
メリーランド州のフェア・ヒル調教センター(Fair Hill Training Center)は、タペタの馬場である。北カリフォルニアのゴールデンゲートフィールズ競馬場は11月7日に秋開催が始まったときに、タペタ馬場でレース を開催する2番目の競馬場となった。
ディッキンソン調教師は、「ゴールデンゲートフィールズ競馬場は2日間のレースをタペタ馬場で開催し、その評判は大変良いものでした。騎手たちは、この 馬場を気に入りました。ラッセル・ベーズ(Russel Baze サラブレッド競馬において史上最高のリーディング・ジョッキー)騎手は、“素晴らしい”や“完璧”という言葉で形容しました。クリスマス明けには事故が 減ったことが確認されるでしょう」と語った。
カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board)は、州内の主要競馬施設に2008年までに人工馬場を敷設するように要請していた。ただし、ベイメドウズ競馬場には2008年中に実施する延長許可を与えた。
マグナ・エンターテイメント社(Magna Entertainment Corp.)は、ゴールデンゲート競馬場とロサンゼルス近郊のサンタアニタパーク競馬場を所有している。同社は、ゴールデンゲート競馬場にはタペタ馬場、 サンタアニタ競馬場にはクッショントラック馬場の敷設を決定した。ハリウッドパーク競馬場もまた、クッショントラック馬場で競走を開催している。
ベイメドウズ、ゴールデンゲート、ハリウッドパーク競馬場に厩舎をもつアート・シャーマン(Art Sherman)調教師の調教助手であるリッチ・プリヴィテラ(Rich Privitera)氏は、「ハリウッドパーク競馬場のタペタ馬場で調教して、とても良いと感じました。馬の具合は良かったですし、天候はあまり影響しません」と述べた。
タペタ馬場でのゴールデンゲートフィールズ競馬場の収益は、幸先の良いものであった。レース開催の初めの2日間で、15レース施行され、平均出走頭数は 8.06頭で121頭が出走し人気を博した。人工馬場での第4レースでは、ルーベンジェームズ(Reuben James)は、第2コーナーでバランスを崩し急激に外によれ、直線ではスピードを落としたが、外見上の故障はなく歩いて馬場を後にした。
15レース中、6レースを人気馬が制し、先行逃げ切り馬4頭、先行差し馬3頭、中段差し馬2頭、追い込み馬6頭と、さまざまな脚質の馬が優勝した。
ディッキンソン調教師は、「この2日間の馬場は速すぎたので、私たちは少し遅い馬場にしました。私たちは思いどおりに良馬場にでも重馬場にでもすることができます。スイッチを入れて20分待つだけです」と述べた。
北米における3種類の人工馬場の敷設状況 |
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クッショントラック(Cushion Track) | ハリウッドパーク競馬場、サンタアニタパーク競馬場 |
ポリトラック(Polytrack) |
アーリントン競馬場、デルマー競馬場、キーンランド競馬場、 ターフウェイ競馬場、ウッドバイン競馬場 |
タペタ(Tapeta) | ゴールデンゲートフィールズ競馬場、プレスクアイルダウンズ競馬場 |
By Frank Angst and Ed DeRosa
[Thoroughbred Times 2007年11月17日「Synthetic rollout continues」]