人工馬場は僅差のレースを演出する(アメリカ)【その他】
ポリトラック社(Polytrack)は4月28日、ダート馬場から人工馬場への転換の副次的な利点の1つは、より僅差の迫力あるレースが見られることであると発表した。
キーンランド競馬場と提携してポリトラック馬場を売り込んでいるマーティン・コリンズ社(Martin Collins Surface)のジム・ペンダージェスト(Jim Pendergest)氏は、ポリトラック馬場では僅差のレースの比率が高いことを示す統計を発表した。同氏は、レキシントンで開催されているケンタッ キー国際馬サミット(Kentucky International Equine Summit)で、人工馬場の導入後、初期の実績をテーマとするパネル討論でこの情報を発表した。
同氏が発表したデータは、レースの平均着差が縮まっていることを示している。キーンランド競馬場において、ダート馬場でのレース施行最後の年における1着馬と2着馬の平均着差は春開催3.86馬身、秋開催4.33馬身であったのに対し、ポリトラック馬場を導入した2007年は春開催1.84馬身、秋開催 1.32馬身であった。
ペンダージェスト氏は、アーリントンパーク、デルマー、ターフウェイおよびウッドバインの各競馬場でも、ポリトラック馬場へ切り替え後、キーンランド競馬場と近似した数字を示したことを付け加えた。
同氏は、「馬が僅差でゴールするのが見られることは重要なことです。僅差のレースは、賭事客に“惜しかった!”という興奮を与えます。馬券を買ったのに馬が12馬身差で打ち負かされたら、賭事客はしらけます」と述べた。
ペンダージェスト氏は、僅差のレースは競馬ファンに興奮を味わわせると述べ、「大半あるいは全頭が1つの馬群となって最終コーナーに入ってくるとき、観客が本当に興奮していることを感じるでしょう」と語った。
同氏は、ポリトラック馬場は安全性を改善するために競馬場や調教馬場に敷設されるのであり、僅差のレースは副次的な利点であると付言した。
同じくパネル討論に参加していたプロライド馬場(Pro-Ride)を提供しているスカイライト調教センター(Skylight Training Center)の所有者であるビル・ウォール(Bill Wahl)氏は、人工馬場での調教は馬がスムーズに走ることを可能にすると語った。
また、タペタ・フッティングス社(Tapeta Footings)の創立者マイケル・ディキンソン(Michael Dickinson)氏は、米国では人工馬場によって予後不良事故率が減ったし、ヨーロッパでは米国よりもさらに良い評価を得たと述べた。
同氏は、米国とヨーロッパで異なる点は、人工馬場では必要ない前肢用鉄頭歯鉄(toe grab)の使用が米国の大半の競馬場で許可されていることであると述べ、歯鉄はより頻繁に故障を発生させていると説明した。さらに、後肢の切神術と歯鉄装着の組み合わせはさらに危険性を高めることを統計が示していると付け加えた。
ディキンソン氏は、米国内のダート馬場における故障発生率に鑑みて、脚部不安のある馬をダート馬場から人工馬場に移動させる調教師も出てくるかもしれないと指摘した。
ケンタッキー国際馬サミットは、ルイスビル大学の馬産業プログラム(University of Louisville’s Equine Industry Program)とケンタッキー大学農学部馬学科(University of Kentucky’s Equine Initiative)によって支援されている。4月28日と29日にわたって開催され、3つのトピック(21世紀の競馬産業経済、馬生産先端科学、競走 馬の福祉)が討議される。
By Frank Angst
[thoroughbredtimes.com 4月28日「Synthetic tracks producing closer finishes」]