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海外競馬情報
2008年06月06日  - No.11 - 2

人工馬場にバンクは必要か(アメリカ)【その他】


 4月28、29日にレキシントンで開催された第1回ケンタッキー国際馬サミット(Kentucky International Equine Summit)は、人工馬場のコーナー部分にバンク(内側への傾斜)をつけるべきか否かというあまり注目されていない問題を取り上げた。

 なお、2006年のアリゾナ大学“競馬およびゲーミングに関するシンポジウム”(University of Arizona Symposium on Racing & Gaming)では、手前を変えるときと同様に、コーナー部分において、より多くの故障が起こることを示したペンシルベニア州の研究について議論されたが、ケンタッキー国際馬サミットではコーナー部分のバンクと故障の関連については議論されなかった。

 主に繋駕競走の競馬場に多くの人工馬場を敷設したチャールズE.クーン・アンド・サンズ社(Charles E. Coon & Sons)の副会長ダン・クーン(Dan Coon)氏は、「コーナー部分においてより多くの故障が起きます。これはトロッターについてもサラブレッドについても言えることです」と述べた。

 同氏は、大半のサラブレッド競走の競馬場では、ダート馬場でも人工馬場でもコーナー部分で2〜4%のバンクがあると語った。競馬部門の弁護士でありホースマンでもあるネッド・ボニー(Ned Bonnie)氏は、8%のバンクを推奨するスウェーデンの研究に言及し、人工馬場ではダート馬場の材質が流れないのになぜに傾斜をつけないのか質問した。

 牧場主で元調教師であり、現在タペタ・フッティング社(Tapeta Footing)を率いるマイケル・ディキンソン(Michael Dickinson)氏は、「20年前はコーナーにはバンクをつけるよう教わりましたが、ダートでは水によって材質が流されてしまいます。現在は、的確だと思う角度でバンクをつけることができます。私の考えでは、コーナーにバンクをつけることは、簡単でより安全なことです」と述べた。

 コーナーにバンクをつけるかどうかは馬場の形状に左右され、傾斜を増やすためにはさらに多くの作業が必要となるだろう。その一方で、人工馬場はそれほど傾斜を必要としないという意見もある。

 マーティン・コリンズ・サーファシズ&フッティングス社(Martin Collins Surfaces & Footings)が販売しているポリトラックを扱っているジム・ペンダージェスト(Jim Pendergest)氏は、「馬が人工馬場で滑ることはあまりないので、ポリトラック馬場に従来より急角度のバンクをつける必要はないと思います。騎手たちは、人工馬場を敷設しているターフウェイ競馬場やキーンランド競馬場のコーナー部分で不具合はないと私たちに話しています」と述べた。

 どの競馬場も今後1年以上は人工馬場を敷設する予定がないので、多くの競馬場では調教師はこのままダート馬場を使用することになる。クーン氏は、人工馬場でのトロッターを使った実験はわずかしか行われていないと述べた。

 クーン氏は、「トロッターはダート馬場よりも4〜6秒遅く走りました。トロッターの生産者に人工馬場を販売するのは難しいです。おそらく、考えるべきことは、トロッターにとってもサラブレッドにとってもスピードさえ出れば良い馬場だという私たちの固定観念でしょう」と語った。

 ケンタッキー州ルイビル近郊にあるスカイライト調教センター(Skylight Training Center)を所有し運営しているビル・ウォール(Bill Wall)氏は、同センターに敷設されているプロライド馬場(the Pro Ride surface 訳注:オーストラリアのプロライド社が製造している人工馬場で、主にオーストラリアで使用されている。同社が特許を取得している高分子結合剤が特徴)についての朗報があると述べた。同氏は、プロライド馬場は凍らないので、この冬に調教を行えなかったのは2日だけで、同センターへの入厩希望が多く順番待ちリ ストを作るほどであったと語った。

 ウォール氏はまた、プロライド馬場を敷設し馬房も新しくしたので、馬房貸付料金を50%以上引き上げることができると述べた。

 同氏は、「経済的な観点から見れば、馬主にとっては、人工馬場はまさに進むべき道です。私は最良のダート馬場を1つ持っていますが、ダート馬場は管理が難しいです」と付言した。

 初めて開催されたケンタッキー国際馬サミットはルイビル大学とケンタッキー大学が後援した。馬経済、馬生産の科学および競走馬の福祉について、36のパネル討論会が開催された。

 オープニングにおいて、米国には920万頭以上の馬がおり、馬市場の規模は考えている以上に大きいと指摘された。

By Tom LaMarra

[The Blood-Horse 2008年5月10日「Is More Banking of Synthetic Surfaces Needed?」]


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