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海外競馬情報
2008年07月18日  - No.14 - 5

欧州から見た世界の国際競走(連載1 オーストラリア)【その他】


 オーストラリアの伝説的トレーナー、バート・カミングス(Bart Cummings)調教師は、2007年のメルボルンCの前に、「外国馬がオーストラリア競馬に参戦することに問題があるとは思いません。私たちは、外国馬に勝たせなければよいのです」と述べた。

 同調教師が言及するのは、メルボルンCにおいては、1993年にヴィンテージクロップ(Vintage Crop)が外国馬として初めて優勝して以来、オーストラリアとニュージーランド以外の調教馬で優勝したのは、わずか2頭[2002年メディアパズル (Media Puzzle)、2006年デルタブルース(Delta Blues)]だけであるという事実である。2007年も、カミングス調教師の望みどおりに、オーストラリア調教馬エフィシェント(Efficient) がイギリス調教馬パープルムーン(Purple Moon)を半馬身差で退けた。

 メルボルンCの過去10年間における出走馬の比率は、オーストラリアとニュージーランド80%、ヨーロッパ18%、アジアと南アフリカ2%である。この比率を考慮すれば、過去10年間でメルボルンCに優勝した外国調教馬がわずか2頭であることを理由に、外国調教馬の優勝は番狂わせであったと主張することはできない。しかし、もっと視野を広げると、同じ10年間で外国馬は延べ14頭が上位4着までに入っている。このことは、かなりの賞金額がオーストラリアから流失しているという地元調教師の懸念が事実無根ではないことを示唆している。

 コーフィルードC(G1 ハンデキャップ競走 1マイル4ハロン―約2,400m)はメルボルンCが開催される約3週間前の10月に施行される。この競走も1998年に外国馬が初めて参加し、英国レディ・ハリス(Lady Herries)調教師の管理馬タウファンズメロディ(Taufan’s Melody イギリスのリステッド競走で多くの勝鞍を挙げていたが、グループ競走級には達していなかった)が、有力視されていた地元馬を差し置いて出走を認められ、77倍のオッズをものともせずに優勝し、地元調教師の間に不満がうずまいた。レイ・コクレーン(Ray Cochrane)騎手の是が非でも勝つという騎乗ぶりも、イギリスとオーストラリアの関係を緩和するのにほとんど役に立たなかった。

 しかし、地元の調教師は、懸念する必要はなかった。というのは、タウファンズメロディが優勝して以降、8頭のヨーロッパ調教馬がコーフィルードCに出走したが、6着が最高の成績であったからである。ヨーロッパからの参戦馬は、オーストラリアのもう1つの主要競走コックスプレート(G1)での優勝も果たしていない。同競走は、ムーニー・ヴァレー競馬場で開催される馬齢重量戦(1マイル2ハロン−約2,000m)であり、今年は10月25日に開催される。

 コックスプレートの賞金総額は300万豪ドル(約3億1200万円)で、8着馬までに賞金が交付される。第1回出馬登録料は、1頭当たりわずか440豪ドル(約4万8000円)であるが、開催日程の関係上、同競走は有力馬の獲得をめぐって、チャンピオンS、凱旋門賞、ブリーダーズカップおよびジャパンカップと競い合うことになる。過去10年間で同競走に出走したヨーロッパ調教馬はわずか6頭であり、グランデラ(Grandera)が2002年に3着に 入ったのがこれまでの最高の成績である。

 上述した3つの競走を主催する競馬団体は、いずれも輸送費は負担しないが、検疫費用を負担している。メルボルンC、コーフィルードCおよびコックスプレートに出走する多数の馬が同時期に検疫施設に入るため、検疫費用は各競走の出走頭数に基づいて主催競馬場間で分担される。

 

オーストラリア関係者の見解

ヴィクトリア・レーシングクラブ(Victoria Racing Club: VRC)のゼネラルマネージャー、ジェームズ・アールズ(James Earls)氏は、次のように述べている。

「VRCは、オーストラリアのG1競走、とりわけメルボルンC を“世界ステイヤー・チャンピオンシップ”にふさわしい競走として、外国馬の参戦を歓迎しております。VRCは、ヴィンテージクロップが1993年のメルボルンCに優勝して以来、ヨーロッパ馬を同競走へ積極的に勧誘しています。ヴィンテージクロップがメルボルンCに優勝した直後に、外国馬がオーストラリア競馬の高額賞金、とりわけメルボルンCの賞金を“奪い取る”ために、大挙してオーストラリアに押し寄せてくるのではないかと、地元の調教師に少なからぬ拒否反応があったことは明らかです。これはおそらく急激な変化に対する人間の本質的な反応であったと思われます。しかし、15年が経過して、受け止め方は好転しています。過去数年間にオーストラリア馬の出走機会が世界中に広がったことで、競馬界は国際競走を当たり前のものと見るようになりました」。

(1豪ドル=約104円)

[Pacemaker 2008年6月「Have horse, will travel」]


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