欧州から見た世界の国際競走(連載3 ドバイ)【その他】
世界でドバイほど国際的であると主張できる競馬開催地はほかにない。ドバイ・レーシングクラブ(Dubai Racing Club: DRC)は、この事実を証明する統計を発表している。
その統計によると、ドバイ・ワールドカップ(Dubai World Cup: DWC)が始まった1996年から、以後1日に複数の重賞競走を施行するようになった2007年までに、ドバイ国外の25の異なる国で調教された馬がDWC開催に参戦し、またドバイ・インターナショナル・レーシングカーニバル(Dubai International Racing Carnival:DIRC 1月〜3月にナド・アルシバ競馬場で施行される一連の開催)の最初の4年間に23の異なる国が馬を参戦させた。
また12年間のDWC開催に、アメリカから123頭が出走し優勝15回、またイギリスから92頭が出走し優勝6回と、両国が示した国際的存在感は抜群であった。
しかし、DWC開催で最高の勝率を上げているのは、南アフリカ調教馬である。2008年のサンクラシーク(Sun Classique)とジェイペグ(Jay Peg)の優勝より前、すなわち2007年までに同国からDWC開催に出走した36頭の馬のうち6頭が優勝した。
1996年にDWCが賞金総額450万米ドル(約4億9500万円)で創設され、2008年にはDWC開催の賞金総額2100万米ドル(約23億1000万円)へと急増した。DWC開催の賞金総額は、2300万米ドル(約25億3000万円)のブリーダーズカップ開催に次いで世界で2番目の高額賞金を誇る。しかし、シェイク・モハメド(Sheikh Mohammed)殿下はDWC開催の賞金を世界最高とする意向である。伝えられるところによると、ドバイ首長である同殿下は、DWC開催をメイダン競馬場(ジンギスカンの孫フビライ・ハンも威圧されたであろう規模で現在建築されている)で開催する2010年には、全ての競走の賞金額を大幅に引き上げると言明している。
他方、ドバイへの参戦の魅力が、高額賞金と避寒(温暖な気候への逃避)の機会だけでは不足であるかのように、ドバイの競馬主催者は気前のよい遠征奨励金を出し魅力を増やしている。
DIRCに関しては、招待馬の関係者は、当該馬がDIRC期間中に2回出走することを条件に、馬の輸送費の3分の1(3頭積みの場合は無料)を受け取ることができる。1頭または2頭の馬を出走させる海外の調教師は、ビジネスクラスの往復航空券を支給され、また調教師が馬を3頭以上出走させる場合は、追加の航空券を支給される。また厩舎スタッフには宿泊施設も提供される。
DWC開催に招待された馬の関係者は、馬の輸送費と厩務員2人分の旅費を受け取り、また馬1頭について、馬主、調教師および騎手はそれぞれが2人分のビジネスクラスの航空券とホテル代を受け取る。
ドバイ関係者の見解
DRCの広報担当マネージャー、セブ・ヴァンス(Seb Vance)氏は、次のように述べている。 「世界中の馬がドバイで競うDWC、DIRCは、国際的な出走馬を撚り糸として織った錦のようにすばらしい競走です。どのようなスポーツにおいても、国際的な競技はそれ自体に意義があります。ドバイと世界中で行われる地球規模の競馬によって、競馬の世界はとても狭くなりました」。 「我々は、DIRCの発展、とりわけ2008年にリニューアルした競馬番組の質の向上に満足しています。DIRC招待馬のなんと36%が国際レーティング105以上(グループ競走クラス)に格付けされていたのです。カーリン(Curlin)が参戦したことが大きな後押しとなったのはもちろんです。また、香港とニュージーランドがDIRCに初めて馬を遠征させました」。 「ドバイ・レーシングクラブは、DIRCとDWC競走の開催を拡大させかつ改善し、成功を積み重ねるための方法を常に考えています。DWCのみの賞金総額を少なくとも1000万米ドル(約11億円)に引き上げることを含め、メイダン競馬場がオープンするときにはいくつかの変更が予定されています」。 |
調教師の見解
フランスを本拠に活躍しているリチャード・ギブソン(Richard Gibson)調教師は、2007年のマンノウォーS(G1)および香港ヴァース(G1)に優勝したドクターディノ(Doctor Dino)を管理している。同馬はまた、2008年のドバイシーマクラシック(G1)、2007年のシンガポール航空国際C(G1)、アーリントン・ミリ オン(G1)、チャンピオンS(G1)およびガネー賞(G1)で各々3着に入っている。
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(1米ドル=約110円)
[Pacemaker 2008年6月「Have horse, will travel」]