G1競走10レースによる“ソブリンシリーズ”計画(イギリス)【開催・運営】
イギリス競馬は、F1レースやサッカーのチャンピオンリーグに匹敵する新シリーズを開催する準備を始めた。この賞金総額1000万ポンド(約24億円) の“ソブリンシリーズ(Sovereign Series)”創設の目的は、地上波テレビ放映の振興や、関係する7つの主要競馬場への集客により、新規ファンを獲得することにある。
7月2日に英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)とレーシングUK社(Racing UK)の共同会議によりソブリンシリーズの創設が決定され、2010年5月の開始に向けてカウントダウンが始まった。ソブリンシリーズは1〜1.5マイルのG1競走10レース(下表参照)で構成し、ポイント制によるシリーズ優勝も争われる。
ニューマーケット競馬場の2000ギニーから始まり同競馬場のチャンピオンSで終わるこのシリーズは、アスコット競馬場など7つの競馬場(下表参照)で施行される。これらの競馬場と契約しているテレビ放送会社のレーシングUK社がシリーズ創設の立役者であり、同社は新シリーズを“顧客の競馬への興味を広める革新的なイニシャチブ”と表現している。
新シリーズの対象となる10レースの現在の賞金総額は、およそ500万ポンド(約12億円)である。新シリーズの創設により1レースの賞金が平均約30万ポンド(約7200万円)上積みされ、さらに200万ポンド(約4億8000万円)がシリーズにおけるポイントの1〜3位の関係者に交付される。
さらにこのシリーズを販売促進し、プロデュースするために300万ポンド(約7億2000万円)が確保されている。シリーズ運営者によると、これは“競馬場来場者と競馬観戦者の獲得をこのシリーズ創設の目的の中心に置くこと”を意図したものである。
しかし、シリーズの迅速な創設とその運営を支える資金源の確保の鍵となるのは、地上波テレビ局の反応である。今後数ヵ月の間、シリーズ運営者によるパッケージ・プレゼンテーションにより、最も輝かしい宝石のようなシリーズ競走の地上波テレビ放映のメリットが宣伝され、テレビ局は放映を希望するだろう。
レーシングUK社の上席執行役員アンドリュー・ブラウン(Andrew Brown)氏が、ソブリンシリーズの主な目的を“競馬を以前のようにイギリスのスポーツの主流にすること”としたが、地上波テレビの積極的な支援が無ければ達成は困難だろう。
ブラウン氏は、「このシリーズは、対象となる競走がとびきり最高の競走であることを強調することで、競馬ファンだけでなく全てのスポーツファンに向けたものとなるでしょう。地上波テレビを通して体験できる競馬を再活性化し、視聴者の関心を高めようと思います」と付け足した。
レーシングUK社のサイモン・バザルゲット(Simon Bazalgette)会長は、地上波テレビ局との話合いはごく初期段階であり進捗していないが、自身が話合ったテレビ局はこのコンセプトに大きな関心を示したと述べ、「放映権の獲得に、地上波テレビ局の食指が動くでしょう」と付け足した。
バザルゲット会長は、1局によるソブリンシリーズの独占放映が “もっとも好ましい”と考えているが、当日の残りの競走のテレビ放映権を他局に引き渡す可能性はあるだろうと述べた。
放映権の争奪戦に敗れたテレビ局が競馬に背を向ける恐れがあることは認めながらも、同会長は、「それがもっとも起こりうるシナリオだとは考えていません。サッカーのように他のテレビ局にも放映権が分け与えられるチャンスは大いにあります」と述べた。
同会長は、重要なのは放映権からより大きな収入をもたらすことであり、それはスポンサーシップについても同様であると述べた。
バザルゲット会長は、「このシリーズは、スポンサー全体にとって大変魅力的なものになるはずです。シリーズスポンサーと各レースのスポンサーを調和させることが今後の検討課題になるでしょう」と述べた。
同会長は、「シリーズ全体のスポンサーについてはよく検討するつもりですが、少なくとも当面は現在の各レースのスポンサーにも十分機会が与えられるべきです」と語った。
同会長は、新たなコンセプトは、たとえばダービーのようにスポンサーを取っていないシリーズ対象レースにもスポンサーシップを促すことができるだろうと述べた。
シリーズ導入のタイミングは、来年下半期のBBC(英国放送協会)とチャンネル4との契約の期限切れにともなう地上波テレビ放映契約に大いに影響を受ける。
バザルゲット氏は、「私たちは、現在のテレビ局とスポンサーとの契約があるため、一夜にしてすべてを変化させるような決定を行うわけではありません。2010年にこのシリーズが導入できるように適切に進めます」と述べた。
なお、バザルゲット会長は9月にジョッキークラブ(14競馬場を所有し、レーシングUK社の最大の提携先)の最高経営責任者に就任する予定である。
ソブリンシリーズ対象の10レース
レース | 距離 | 競馬場 |
2000ギニー(Stanjamesuk.com 2000 guineas) | 1,600 m | ニューマーケット |
ロッキンジS(Juddmonte Lockinge Stakes) | 1,600 m | ニューベリ |
ダービー(Derby) | 2,400 m | エプソム |
プリンスオブウェールズS(Prince of Wales’s Stakes) | 2,000 m | アスコット |
エクリプスS(Coral-Eclipse) | 2,000 m | サンダウン |
キングジョージ6&クイーンエリザベスS (King George 6 & Queen Elizabeth Stakes) |
2,400 m | アスコット |
サセックスS(BGC Sussex Stakes) | 1,600 m | グッドウッド |
インターナショナルS(Juddmonte International Stakes) | 1,600 m | ヨーク |
クイーンエリザベス2 S(Queen Elizabeth 2 Stakes) | 1,600 m | アスコット |
チャンピオンS(Emirates Airline Champion Stakes) | 2,000 m | ニューマーケット |
シリーズ実施方法
►► 上位3着までにポイントが与えられる。
►► ポイントシステムは未定であるが、予定では、1着には10ポイント、2着には6ポイント、3着には4ポイントが与えられる。
►► シリーズ終了時にもっとも多くのポイントを獲得した馬には、“ソブリンシリーズ・チャンピオン”の栄誉が与えられる。
►► 同ポイントの場合は、1着または2着の数が多いもの、またそれでも決定しない場合は直接対決した時の結果より決するなど、多くの選択肢を検討している。
1着10ポイント、2着6ポイント、3着4ポイントとした
過去の“ソブリンシリーズ・仮想チャンピオン”
年 | 馬 名 | ポイント獲得レース |
2007 | ラモンティ(Ramonti) | サセックス、クイーンエリザベス2 |
オーソライズド(Authorized) | ダービー、インターナショナル | |
2006 | ジョージワシントン(George Washington) | 2000ギニー、クイーンエリザベス2 |
2005 | アザムール(Azamour) | プリンスオブウェールズ、キングジョージ |
2004 | ハーフド(Haafhd) | 2000ギニー、チャンピオン |
ラクティ(Rakti) | プリンスオブウェールズ、クイーンエリザベス2 | |
2003 | ファルブラヴ(Falbrav) |
エクリプス、インターナショナル、 クイーンエリザベス2 |
2002 | ホークウィング(Hawk Wing) | エクリプス |
2001 | メディシアン(Medicean) | ロッキンジ、エクリプス |
2000 | ジャイアンツコーズウェイ(Giant’s Causeway) | エクリプス、サセックス、インターナショナル |
2008年現時点での仮想ポイント獲得数
16ポイント: | ニューアプローチ(New Approach)[ダービー、2000ギニー2着] |
15ポイント: | フェニックスタワー(Phoenix Tower) |
10ポイント: |
クレカドール(Creachadoir)、デュークオブマーマレード(Duke Of Marmalade)、 ヘンリーザナビゲーター(Henrythenavigator) |
By Howard Wright
(1ポンド=約240円)
[Racing Post 2008年7月3日「Plans unveiled for £10m Group 1 series for Britain」]