海外競馬情報
2008年01月25日 - No.2 - 3
ファロン騎手裁判に関するレーシングポスト紙によるQ&A(イギリス)【その他】
Q: | キーレン・ファロン騎手は、裁判にかけられるべきであったか? |
A: | キーレン・ファロン騎手に関する証拠は極めて脆弱なものでした。検察局(Crown Prosecution Service)がなぜ“有罪を確信”したのか理解に苦しみます。それは筋の通った判断だったとは言えません。ファロン騎手に有利な証拠がもっと早い段階 で開示されていたら、あるいは、オーストラリア・シドニーの主任裁決委員であるレイ・ムリヒー(Ray Murrihy)氏が、鑑定人の持つべき能力に関して、捜査段階において法廷での発言[私にはイギリスの競馬規則を熟知する義務はありませんという発言を さす]と同様の説明をしていたら、この事案が中央刑事裁判所に持ち込まれたかどうか疑わしいのです。 |
Q: | ロンドン警視庁にとってどのような経験となったか? |
A: | ロンドン警視庁の評判は傷つきました。2000年のサウスワーク刑事裁判所での競馬薬物投 与事件〔アヴァンティエクスプレス(Avanti Express)とライヴリーナイト(Lively Knight)に薬物を投与したかどで起訴された5人の被告人に関する事件で無罪判決〕の挫折から警視庁が得た教訓は、「競馬関係の捜査を行う警察官は賭 事に対する十分な知識を持たなければならない」ということです。知識習得はさほど難しいものではないにもかかわらず、この教訓は生かされませんでした。警 察の証拠開示手続きにおける過誤は恥ずべきものでした。関係する数人の警官が証言するのを見ていてうんざりしました。 |
Q: | 検察は、鑑定人としてオーストラリアの裁決委員を選ぶべきであったか? |
A: |
警視庁は、捜査を進めるにあたって、レース内容を評価でき、しかもイギリス競馬と利害関係のない人物を必要としていました。ムリヒー氏はオーストラリアで高い評価を受けた裁決委員でした。 2人の警視庁幹部がオーストラリアまで飛んで、彼に事件の要点を説明しました。それでも、法廷での様子では、ムリヒー氏はきちんと説明を受けていたとは見えず、落ち着かない表情でした。 |
Q: | キーレン・ファロン騎手は今後どうなるか? |
A: |
無罪判決は直ちに効力を発揮して、イギリスで騎乗できるようになりました。しかし、未登録 の携帯電話を使用していたというファロン騎手の規則違反行為が裁判で明らかになりました。英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)は、この件について全ての証拠を見直す予定ですが、罰則の適用を検討するとしても、ファロン騎手のこれまでの騎乗停止期間が、重要な情状酌量の要 素として考慮されるでしょう。 ファロン騎手の42歳という年齢を考えれば、過去と同じレベルで騎乗する意欲と能力があるかどうかも、同様に重要な問題といえます。 |
Q: | ポール・スコットニー氏の地位はどうなるか? |
A: | BHAの保安・免許担当理事であるスコットニー氏の地位は守れるとしても、不安定なものに なるでしょう。同氏の証言は説得力がありませんでした。法廷における彼の行動を考慮すると、競馬関係者の信頼をつなぐことができるかどうか疑わしいと考え られます。捜査を担当したマーク・マニング(Mark Manning)警部補はスコットニー氏の部署(保安・免許担当部門)に職を得る予定でしたが、同氏が証人としての適格性に疑問を持たれるような証言をし たことも、スコットニー氏に不利になるでしょう。 |
Q: | 公正確保を改善するために競馬界はどのような努力をすべきか? |
A: | この事件では失敗しましたが、BHAの選択肢は、競馬の公正確保を確立して賭事客の信頼を 得るよう努めるという決意をくり返し述べる以外にありません。この事案の失敗によって、警察は捜査と立件に消極的になり、そのことが犯罪行為を促進するか もしれません。このことによって、BHAと賭事委員会(Gambling Commision)を不正行為に対して有効に機能させる必要性が明らかになりました。 |
[Racing Post 2007年12月8日「10 key questions answered」]