ケンタッキー州、衝撃波療法に関するルール改正を検討(アメリカ)【獣医・診療】
ケンタッキー州競馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission: KHRC)のメンバーであるフォスター・ノースラップ(Foster Northrup, D.V.M.)博士は、衝撃波療法のけたたましい音を聞くと、この療法が濫用されているのではないか懸念する。
ノースラップ博士は筋骨格障害から競走馬を回復させるために電気刺激療法が有効であると確信しているが、一部の開業医が鎮痛効果を期待して衝撃波療法を安易に利用しているのではないかという恐れを抱いている。超音波を利用した衝撃波療法は、ヒトの胆石などの破砕に使われているが、弱い超音波を利用すれば 消炎・鎮痛作用が得られる。
同博士は、「衝撃波療法は劇的に痛みを止めます。競走馬がレース2日前にこの療法を受けるとすれば、1つの理由しかありません。それによって痛みを消すためです」と述べた。
9月15日に開催されたKHRCの安全福祉委員会(Safety and Welfare Committee)において、ノースラップ博士と他の委員会メンバーおよび専門家は、衝撃波療法の規制強化について議論した。
大半の州は、この療法を受けた馬について出走できない期間を定めている。ケンタッキー州は療法実施日とレース日の間に10日を要求している。ノースラップ博士は、療法実施からレース日までの間に2週間あけるのがより適切であると確信しているが、同博士の最大の関心事は現行ルールを遵守させることである。
ケンタッキー州の馬医療担当理事であるメアリー・スカレー(Mary Scollay, D.V.M.)博士は、多くの州が治療経過の報告を要求しているものの、正直な調教師は報告するが不正直な調教師は報告しないのが実情であると述べた。スカレー博士は、馬がいつ衝撃波療法を受けたか検査する方法はないと述べた。
このルールが定められたのは、競走馬が衝撃波療法の施療後に一時的に治療を受けた部分の痛みを感じなくなるからである。アイオワ州立大学のある研究結果では、治療可能な適応症は飛節内腫、疲労骨折、ナビキュラーディジーズおよび繋靭帯炎であるが、強い鎮痛効果があると警告している。
スカレー博士は、療法実施と競走の間に10日間の休止期間を置くことは、前述の研究により鎮痛効果は約4日持続することが分かったからであり、追加された期間はアローワンス(状況の変化などを見越した余裕)の役割を果たすと語った。
競馬の殿堂入りをした元騎手クリス・マッキャロン(Chris McCarron)氏は、安全福祉委員会に出席し、自身がサンタアニタパーク競馬場のゼネラルマネージャーを務めている時、この療法の全面禁止を望んでいたと述べた。
マッキャロン氏は、「調教師たちは、競馬場外へ馬を運び出してこの療法を受けるだけさと言っていました。私はKHRCがこれに着目したことに満足しています。調教師たちはどんな問題もすぐに馬場のせいにしますが、彼らは自身の姿も鏡に映して見る必要があります」と語った。
KHRCのメンバーたちは、ケンタッキーでは多くの競走馬はレースに備えた調教を競馬場外の調教施設や牧場で受けているため、ルールを遵守させることは難題であると述べた。
ノースラップ博士は、このルール遵守のために、療法実施中に機材が出すけたたましい音を手掛かりとするなら、競馬場の警備担当者が重要な役割りを果たすだろうと述べた。また、競馬場を離れ再び戻る馬についてはレース前に10日以上あけるよう義務付けることを提案した。
衝撃波療法と競馬 | |
競馬統括機関はサラブレッドが衝撃波療法を受けてから競走に出られるまでの休止期間を以下のように要請している | |
統括州 | 日数 |
アーカンソー | 10日間 |
カリフォルニア | 10日間 |
フロリダ | 競馬場によってまちまち |
ケンタッキー | 10日間 |
ニューヨーク | 10日間 |
オンタリオ | 4日間 |
By Frank Angst
[Thoroughbred Times 2008年9月27日「Kentucky regulators consider revising shock wave therapy rules」]