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海外競馬情報
2008年04月04日  - No.7 - 2

欧州競馬界、賭事の枠組みについて結束(欧州)【開催・運営】


 英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)の専務理事ニック・カワード(Nic Coward)氏は、欧州議会(European Parliament)に対して、競馬と勝馬投票に関する“明確かつ首尾一貫した法的・規制的枠組み”の緊急の必要性を認識するよう求めた。

 同氏は、ブリュッセルで開かれた民間会合において、ヨーロッパの主要な競馬・生産者団体の代表とともに共同宣言に合意した。この会合は、欧州議会の“競 馬とオンライン勝馬投票(horseracing and online betting)に関する会議”に先立って行われた。

 この合意は、欧州共同体の各国の立場について激しい議論の末に成立したものである。とりわけフランス代表はフランス場外馬券発売機構(Pari Mutuel Urbain: PMU)に代わって熱弁を振るったが、イギリスのねばり強い主張によって中庸が保たれた。

 宣言は、“競馬賭事から競馬への公平な利益の還元ならびに将来にわたる競馬の公正確保”を達成するために2本立ての政策を策定するよう欧州委員会(European Commission: EC)に求めている。

 宣言は、“欧州共同体法と欧州共同体の補完性の原則に従い、加盟国が自らの法的権限を行使することが可能となる法的枠組みが必要である”と付け加えている。

 ECによる欧州共同体法の解釈・実施により、PMUなどの国家による賭事独占が脅かされている。この会合でEU法に関する意見が統合されたことによって、固定オッズとパリミューチュエル勝馬投票(mixed betting operations)を支持するイギリスとアイルランドの競馬・生産界の代表が、パリミューチュエル勝馬投票システムのみが存在する国とともに宣言に署名することが可能となった。

 宣言は、フランス調教師協会(French trainers’ association)の会長クリスチャン・ヘッド=マアレク(Christiane Head-Maarek)氏が読み上げた。同氏は、宣言文の説明の際ブックメーカーに対する嫌悪感を述べることを避けた。同氏がブックメーカーは“生まれながらの不正直者である”と述べたのは有名な話である。

 同氏は、パリミューチュエル勝馬投票システムを“最善のシステム”であると擁護したが、宣言は“私たちを結びつけるものが数多くあるため、合意に達した原則を明確にすることにした”と融和的な雰囲気で述べた。

 同氏は、次のように付け加えた。「オンライン勝馬投票から生じる共通の課題が我々を結束させました。私たちは、技術革新を否定しようとは思いません。それは避けることのできないものです。しかし、異なっているのは、他のスポーツが現在まで賭事を伴わずに存続してきたのに、競馬は賭事と密接な関係のもとに発展してきたことです。フランスのシステムは、勝馬投票の利益が競馬産業を支えるように構成されています」。

 「私たちは、このバランスが崩れるのを見たくありません。勝馬投票は、他の形式の賭事と同じではありません。ヨーロッパは、競馬とその公正を守るための手段を我々に与えるべきです」。

 フランスは、宣言で用いられている“欧州共同体の補完性の原則”という文言に固執し、また他の複数のヨーロッパの競馬界と生産界の代表は、国内の賭事産業の保護を訴えた。

 BHAのカワード氏は、共通の利益を強調しつつ異なる意見を表明し、次のように述べた。「イギリス競馬の状況は、全体として非常に強固ですが、競馬界への利益の還元という共通の課題も無視できない状況です」。

 「イギリスとアイルランドの賭事は市場原理に基づいており、この点で他の大部分の国と異なっています。だからといって、イギリスとアイルランドがその他の国と異なる目的を持っている訳ではありません」。

 「競馬に対する賭けを提供する者は、競馬への公正な対価を支払い、かつ競馬の将来と公正に対して関心を持つべきです。ほかの業界と同様、競馬業界は、政府が競馬の繁栄のための枠組みを提供してくれることを期待しています」。

 同氏は、次のように付言した。「教訓は、明らかです。市場は変化しています。そして賭事と市場の関係も変化しています。私たちは、変化する環境に順応しなければならず、イギリス、ヨーロッパそして世界の力強い競馬を実現することを希望しています」。

 「議論が必要ですが、その議論は事実に基づいたものでなければなりません。国境を越えた賭事活動が現実の問題となっており、私たちは議論のあり方を変える必要があります」。

 アイルランド・サラブレッド生産者協会(Irish Thoroughbred Breeders Association)のジョー・ハーノン(Joe Hernon)会長は、次のように述べた。「私たちに影響を与える多くの法律はここブリュッセルで制定され、独占から開放に向かうことを常に目指しています」。

 「私たちの要望を欧州の政策立案者に聞いてもらい、賭事産業が競馬産業に資金を供給するのが正常な姿であることを銘記してもらう必要があります」。

 フランス・サラブレッド生産者協会(French Thoroughbred Breeders Association)のベルナール・フェラン(Bernard Ferrand)会長は、フランス競馬界と賭事産業の“共存”という国の独自性を守ることに関して説明し、PMUと並行して無秩序な競争システムを導入することは、競馬界に壊滅的な影響をもたらすであろうと述べた。

 同氏は、「私たちは、喜んで競争に立ち向かうつもりですが、競争はパリミューチュエル制度の中で行うべきです。パリミューチュエル制度が破滅したならば、競馬と馬産業は立ち行かなくなるでしょう」と付け加えた。

 欧州議会議員マルコム・ハーバー(Malcolm Harbour保守党)氏は、国内市場・消費者保護に関する委員会(committee on the internal market and consumer protection)のメンバーとしての関心を有していたことから、この会合に出席した。

 同氏は、各国政府はインターネットの普及の結果、競馬およびその他のスポーツに対する賭けの分野で生じた問題を積極的に処理するべきであると述べた。

 締めくくりの言葉は、元司法大臣で、欧州議会の同僚議員ジャック・トゥーボン(Jacques Toubon)氏から述べられた。同氏は、欧州人民党(European People’s Party−キリスト教民主党)グループの同僚で、党首であるヨセフ・ダウル(Joseph Daul)氏とともに会合の開催に尽力した。

 トゥーボン氏は、今回の会合を“最初のステップ”であると表現し、「一国の立場でなく、欧州で統一の立場が採択されたのはとりわけ建設的でした」と述べた。

 同氏は、次のように付言した。「私たちは、合意のもとに一致団結しています。対話を行って共通点を見出さない限り何ごともなしえません。まさにこの方法 によって欧州連合(European Union)は機能しているのです。一国だけのためになる法律が制定されないようにしなければなりません。EU内の競争と自由な移動は、競馬を含むすべて の部門で保証されなければなりません」。

 「秩序ある方法により、かつ免許制度と平等な租税制度のもとに国内市場を段階的に開放していくべきです」。

 「欧州共同体法のもとで秩序ある市場開放を進めることが2本立ての政策の1つなのです。公平でなければならず、そして上記の2つの事柄が同時に進むことを可能にしなければなりません」。

By Howard Wright

[Racing Post 2008年3月7日「European racing bodies unite in call for betting framework」]


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