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海外競馬情報
2008年04月18日  - No.8 - 1

米連邦議会で競馬界における薬物規制を審議(アメリカ)【獣医・診療】


 米連邦議会下院の商業・貿易・消費者保護分科会(Subcommittee on Commerce, Trade and Consumer Protection: SCTCP エネルギー・商業委員会の下部機関)は2月20日、ワシントンでプロスポーツにおけるステロイド(筋肉増強剤)およびその他の能力増強剤の使用について審議した。その際、サラブレッド競馬が非難の的となった。

 エド・ホイットフィールド(Ed Whitfield)下院議員(共和党)は、米国の競馬界が外国の薬物政策に遅れを取っていることについて厳しく非難し、競馬は浄化が必要なスポーツであると述べた。

 同議員は、「アメリカの競馬界には薬物が広まっているというのが諸外国の認識です。競馬を除くすべてのプロスポーツにおいて、ステロイドは禁止されています。競馬を浄化するときが来ているのではないでしょうか」と述べた。

 薬物の問題に関して、分科会の委員長ボビー・ラッシュ(Bobby Rush)議員(共和党)は、「違法な鎮痛剤が競走馬に投与されています」と述べた。

 全米サラブレッド競馬協会(National Thoroughbred Racing Association: NTRA)の最高経営責任者アレックス・ウォルドロップ(Alex Waldrop)氏は、SCTCPで次のように証言した。

 「2007年におよそ10万7,000頭の馬が11万6,000レースで91万8,000回出走しました。競馬界は、これらのレースのすべてについて1頭以上を検査しました。毎日あらゆるレースを検査し、1つの検体で最高200種類の薬物について調べています。・・・競馬界は毎年、馬の薬物検査に 3,000万〜3,500万ドル(約33億〜38億5,000万円)を費やしています」

 ウォルドロップ氏は分科会で、薬物規制標準化委員会(Racing Medication and Testing Consortium: RMTC)が作成したステロイドに関するモデルルールを含め、競馬界の治療薬物モデルルールについて質問を受けた。元NTRAの職員で、現在RMTCの専 務理事をしているスコット・ウォーターマン(Scot Waterman)氏(獣医学博士)が分科会の証言に備えてウォルドロップ氏に助言した。

 この分科会で行われた“サラブレッド競馬において能力増強剤を禁止するために連邦法を制定することに関する公聴会”では活発な議論が展開された。しかし、この法案の内容や議会提出の日程に関しては明確な意見の一致がない。

アレックス・ウォルドロップ氏の議会証言

 委員長、ホイットフィールド上級委員および分科会の委員の皆様、私は全米サラブレッド競馬協会(NTRA)の理事長兼最高経営責任者のアレックス・ウォルドロップです。NTRAのメンバー競馬場は、北米で実施されている全サラブレッド競馬の約90%を実施しています。

 私は本日NTRAを代表して来ています。私の説明に含まれる治療薬物と検査に関する情報は、競馬界全体に関するものであり、速歩競馬、クォーターホース競馬およびサラブレッド競馬の統計データを含んでいます。

 競馬界は、各開催日におけるすべてのレースの勝ち馬を検査します。これは、1年間に13万頭に相当します。各検体で最高200種類の薬物について検査し ます。NTRAの薬物検査機関は、興奮剤、麻酔剤、気管支拡張剤および抗炎症剤を含め、さまざまな薬物について検査します。競馬界は毎年、馬の薬物検査お よび研究開発に対して合計でおよそ3,650万ドル(約40億1,500万円)を費やしています。

 これほどの金額を支出しているのは、馬の薬物検査は、競馬の公正の中核を占める重要問題であるということについて、競馬界のすべての利害関係者の意見が一致しているからです。

 競馬界と38州の競馬統括機関は、北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International: RCI)のモデルルールに基づいて薬物検査の監視を行っています。

 RCIは、RMTCと協力してモデルルールを作成しています。

 RMTCは、各種の競馬における規制当局者、獣医師、薬物分析者、馬主、調教師、生産者および競馬場の役職員を含む23の競馬関係者のグループから構成されています。

 モデルルールは、薬物を5つのカテゴリーに分類するシステムを含んでいます。カテゴリー第1類の薬物は、非治療薬物であり、馬の能力に影響する蓋然性が 高いものです。2006年にカテゴリー第1類の薬物に陽性となった事例は国内全体で3件しかありません。カテゴリー第2類以下の大部分の薬物陽性反応は、 運動能力に影響を与える可能性が比較的低い処方治療薬物に関する体内残留期間の判断ミスによって起きています。

 RCIとRMTCは、薬物の分類に基づいたモデル制裁規則も共同で作成しました。

 RCIとRMTCは、競走馬にアナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)を使用することを原則的に禁止するモデルルールの作成作業を2007年に完了しま した。食品医薬品局(Food and Drug Administration)が承認したアナボリック・ステロイドは、競走馬の治療にある程度の治療効果を持っている可能性がありますが、馬主・調教 師、競馬場および生産者は、競走馬はアナボリック・ステロイドを利用して競走すべきでないことに全員同意しています。

 これは実際上、アナボリック・ステロイドは、次走の少なくとも1ヵ月前に馬への投薬計画から除外されるべきであることを意味しています。それによって、 競走前にアナボリック・ステロイドの影響が競走馬の体内から取り除かれることが保証されます。ステロイドに関するモデルルールの目的は、これらの薬物が治 療目的のためにのみ使用され、出走馬の能力を高める方法で使用されないよう保証することです。

 このモデルルールは、アリゾナ、アーカンソー、カリフォルニア、コロラド、デラウェア、イリノイ、インディアナ、アイオワ、ニューヨーク、ペンシルベニ ア、バージニアおよびワシントンの各州によって採用されているか、または採用されようとしています。フロリダ、ケンタッキー、メリーランドおよびテキサス 州も、ステロイドに関するモデルルールを支持すると期待されています。私たちは、モデルルールに対する支持を得るために残りの競馬統括機関に引き続き働き かけるつもりです。RMTCは、モデルルールに対してさらに科学的裏づけを与える追加研究を行っています。

 モデルルールの採用および統一実施を推進するという問題が残っています。しかし、競馬界は、“2008年12月31日までにモデルルールを順守すること”を競馬界の合言葉にしています。

 RCIとRMTCは、薬物に関し、信頼性が高くかつ科学的な根拠に基づく話し合いの場を競馬界に提供しています。

 競馬界の薬物検査要綱は完璧でしょうか?いや、完璧でありません。改善が可能でしょうか?もちろん可能です。競馬界の主要な利害関係者は、RMTCとRCIを通じて全国的規模で薬物問題に一丸となって取り組むことを確約しています。

 RMTCは、競馬開催州におけるその他の重要な薬物ルールの採用を促進する機能を発揮しており、アナボリック・ステロイドの規制においても同様です。

 競馬界における薬物規制の進展状況についてご報告する機会をいただきましたことを当委員会に感謝申し上げます。

 

By John Hay Rabb
(1ドル=約110円)

[thoroughbredtimes.com 2008年2月27日「Congress hears testimony on racehorse drug testing」]


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