ダート馬場と人工馬場の予後不良事故率に関する続報(アメリカ)【その他】
競走馬福祉・安全サミット(Welfare and Safety of the Racehorse Summit)が4月10日に公表した改訂版の統計では、人工馬場はダート馬場よりも、予後不良事故が少ないことを示した。
コルダー競馬場とガルフストリームパーク競馬場に所属するメリー・スカラー(Mary Scollay)獣医学博士は当初(3月10日、キーンランド競馬場で開催された競走馬福祉・安全サミットで)、2月1日までの予後不良事故は、ダート馬場においては延べ出走頭数1000あたり1.96件で、人工馬場においてはダート馬場とほとんど同数の延べ出走頭数1000あたり1.95件であったと報告していた。
しかし、サミットが4月10日に発表した統計では、人工馬場での予後不良事故率は24.6%減少し、ダート馬場での予後不良事故率は3.6%増加した。今回改訂した予後不良事故率は、より長期間にわたる多くの競走と出走頭数を対象としている。
スカラー博士は、「先月サミットで報告した予後不良事故率を、人工馬場においては延べ出走頭数1000あたり1.47件で、ダート馬場においては延べ出走頭数1000あたり2.03件と改訂します」と述べた。
インコンパスソリューションズ社(InCompass Solutions)は、現在このプログラムに参加している48競馬場からの故障報告を、各場の獣医師が電子的に提出することができる技術を開発した。このプログラムはスカラー博士によって開発された故障報告システムを基盤にしている。
スカラー博士は、「今回サミットが公表した予後不良事故率は、34競馬場のみを対象とし、1年に満たない調査に基づいています。従って、これらの予後不良事故率に統計学的に有意な差があるわけではありません。現時点では科学的に決定的論拠があると考えることのできない、スナップ写真のようなものであることに留意すべきです」と語った。
競走馬福祉・安全サミットは、グレイソン=ジョッキークラブ研究財団(Grayson-Jockey Club Research Foundation)とジョッキークラブ(the Jockey Club)によって構想が打ち出された。
ジョッキークラブの広報副理事長ボブ・カラン(Bob Curran Jr.)氏は、「もっと長い期間をかけて米国の大半の競馬場の包括的な故障報告を得た時点で、統計学的に有意な予後不良事故率の差を公表する予定です。おそらく、今年中にはできないと思います」と語った。
スカラー博士は、次のように語った。「2007年5月にこのプロジェクトの発表の際に私たちが述べたように、競走馬故障報告制度は次の3つの目的から なっています。(1) 有効な統計が得られるように統一フォーマットを用いて、競走中の故障の種類、結果、頻度、を確認すること (2) 故障リスクが高い競走馬のもつ特徴を識別するための“一元的疫学データベース”を開発すること (3) 安全性を高め、故障を防ぐことを目指した研究のためのデータソースとして役立てることです。場内故障報告制度が上げたこれまでの成果を誇りに思いますし、この情報収集の続行は競馬産業にとって不可欠であることを信じて疑いません」。
By Frank Angst
[thoroughbredtimes.com 2008年4月10日「Summit on-track injury statistics revised」]