若い世代を競馬に惹き付ける試み(アメリカ)【その他】
サラブレッド競馬産業が実施している若い世代向けの販売促進に関して言えば、若い観客たちを競馬場に呼び込むいわゆる集客方法についてのアイデアは豊富だが、来場した若い観客たちの馬券購入意欲を高める方法には乏しい。
アリゾナ州ツーソンで開催された「競馬およびゲーミングに関するシンポジウム」(Symposium on Racing and Gaming)ではいくつかの公開討論会において、大衆向け競馬情報の発信手段として、ウェブ2.0(web 2.0)やソーシャルネットワーキングシステム(SNS)などのツールを利用した販売手段については盛んに議論されたが、馬券の販売促進方法に関する議論 は活発とは言えなかった。
(訳注)
(2) SNSは、社会的ネットワークをオンライン上で構築することをいう。
大学生が競馬あるいはゲーミングに金を使いたくないというわけでもない。毎年競馬産業プログラム(Race Track Industry Program)の一環としてシンポジウムを開催しているアリゾナ大学の体育学部副学部長ジェームズ・フランシス(James Francis)氏は、同大学が学生のためのチケット販売プログラムであるゾナズー(Zona Zoo)で大学フットボールの試合の年間パスを販売したところ、大きな成功を収めたと語った。
同氏は、「文化を創造することが、ゾナズーが成功を収める重要な鍵でした。競馬とその商品である馬券の関係は、大学とフットボールの関係ほど密接ではあ りません。どのようにしてその文化を打ち立てれば良いのでしょうか?ジェネレーションY(1980〜1989年に生まれた19〜28歳の人々)に、競馬が 何か特別なものを持ち、参加する意義があることを浸透させなければなりません」と述べた。
キーンランド協会(Keeneland Association)のハーヴィー・ウィルキンソン(Harvie Wilkinson)副会長は、フランシス氏の考えに賛同した。
キーンランド協会は、州中部のケンタッキー大学のような大学の学生たちの高い関心を集めている。ウィルキンソン副会長は、「私たちの目標としているところは、このような顧客層に楽しいひとときを過ごしてもらうことです」と述べた。
同副会長はまた、次のように語った。「私たちは大学の奨学金デイを催していますが、賭博に言及することはありません。私たちは彼らが競馬を愛して戻って くることを望んでいます。私たちの地域の1人あたりの馬券購入額は米国内で最も少ないのですが、そのことは気にしていません。彼らが競馬ファンになれば、 競馬産業を支持するでしょう」。
アリゾナ大学の上級生で競馬産業プログラムの学生であるニッキ・デバジオ(Nikki DeBasio)氏は、これに賛同し、19〜28歳ぐらいの間に競馬で肯定的な経験をすれば、その影響は長続きするだろうと述べた。
デバジオ氏は、「ジェネレーションYは競馬場を心地良い場所と感じていません。これが集客上の最も大きな障害です。しかし、知人がそこで楽しいひとときを過ごしたと聞けば、彼らも競馬場に行ってみようかなと思うでしょう」と述べた。
全米サラブレッド競馬協会(National Thoroughbred Racing Association)のマーケティング担当理事であるフリッツ・ワイダマン(Fritz Widaman)氏は、「潜在的ファンを増やすための販売促進に関して、実施項目は10年どころか20年変わっていませんが、実施方法は変化しています」 と述べた。
アリゾナ大学と提携した経験のあるクリアチャンネル社(Clear Channel)のデーヴ・シトン(Dave Sitton)副会長もこの意見に賛同した。
シトン氏は、「若者に関して間違いなく言えることは、学生は毎年入学・卒業して入れ替わるだけで、私たちが相手としているのは同じ年齢層の人々だということです。競馬場の近くの学生たちを勧誘することは、1つのチャンスです」と述べた。
競馬場は、その商品の販売促進を目標とし、SNSの実験的利用を開始した。
モンマスパーク競馬場は、2008年の開催に合わせてフェースブック(Facebook)にSNSのページを立ち上げ、1000人の“ファン”を得た。そして、ハスケル国際S(G1)に興味のあるファンに情報を提供し、5人がそれに参加した。
目立った効果はないかもしれないが、SNSの閲覧者がそれぞれ友達にその有意義な体験を伝えればドミノ効果を生じる可能性がある。
By Ed DeRosa
[thoroughbredtimes.com 2008年12月10日「Racing should tap into younger generation of fans」]