海外賭事業者に対する税制の検討開始(イギリス)【開催・運営】
競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)は、英国競馬を対象とする賭事を提供している海外賭事業者を、英国のブックメーカーと同等に扱うよう政府に要求した。その2日後これを受けて、 ゲリー・サトクリフ(Gerry Sutcliffe)スポーツ担当大臣は、この議論の多い問題を正式に検討することを承認した。
4月30日の文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport: DCMS)の声明によると、大臣は英国で賭事運営免許を有しているのに英国の税制では課税対象になっていない海外賭事業者を検討対象とするよう、DCMS の競馬・賭事の担当官および賭事委員会(Gambling Commission)に指示した。
競馬界の古参の情報筋によれば、海外賭事業者のインターネットでの賭事提供は、英国競馬に年間約500万ポンド(約8億5000万円)の損害をもたらしている。
政府が今後詳細に検討する多くの問題に共通することは、(1) 競馬界の費用の公平な負担、(2) 問題のある賭事の取扱いおよび、(3) 競馬賭事に対する賦課金である。
4月29日に2010-2011年賦課計画の歴史的早期決着に立ち会った英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)の会長であり賦課公社の理事であるポール・ロイ(Paul Roy)氏は、賦課公社の提案に対してサトクリフ大臣が即座に反応したことを歓迎した。
ポール・ロイ氏は、「この問題は、競馬界が賦課金からの収入を逸失するだけでなくブックメーカーも海外賭事業者に対して不公平な競争を強いられることを意味しているので、競馬界も賭事界も同じように強い関心を持っています」と述べた。
BHAの最高経営責任者ニック・カワード(Nic Coward)氏は次のように付け加えた。「賭事業者からの公平で相応な資金拠出を確保することに向けた大きな前進です」。
「私たちはずっと、海外賭事業者を規制対象として支払い義務を課すべきだと主張し、政府に迅速な行動を求めてきました。政府の対応に満足しています」。
カワード氏は具体的な数字は挙げなかったが、「英国競馬は毎年、インターネット事業とコールセンターを海外に置いている賭事業者から得るべき収入を逸失しています」と述べた。
「私たちは協議に全面的に協力するつもりです。競馬界がこの問題に本気で取り組まなければ、逸失は増える一方です」。
しかし、賦課公社のブックメーカー委員会(Bookmaker’s Committee)のメンバーであるウィリアムヒル社(William Hill)の最高経営責任者ラルフ・トッピング(Ralph Topping)氏は、サトクリフ大臣の見直しを“時間の無駄”と表現した。
同氏は次のように説明した。「私たちも政府も、英国に事業拠点を置くブックメーカーにとって英国の税制が競争上の重荷になっていることが分かっていま す。英国の税制が競馬産業を繁栄させることができれば、税収入が増え、雇用を創出し、競馬界の収入も増えるということも分かっているのです」。
「しかし、海外賭事業者の問題はほとんど解決不能であり、公正確保の問題にはほぼ無関係です。またもや部分的にこれらの問題を見直すことになるでしょう」。
賭事に関するDCMSの役割を厳しく批判するトッピング氏は、財務省もこの件に関与すべきであると述べ、「世界クラスの競馬産業のための近代的な税制に ついて大局を見据えている政府の方々と話し合いましょう。チャンスはあります。それを素早く捉えようとする勇気が必要なだけです」と付言した。
見直しは、2009年末までに完了する予定である。「技術は信じられない速度で発展し、インターネット賭事は2005年に賭事法が成立してから様変わりしました」。
「英国の規制制度がどのように展開されるか、注意深く見守っていくつもりです」。
「まだ始まったばかりですので、この取組みの結果を先取りすることは控えます。しかし私にとって、英国の賭事業者ともっと公正な取引を行うこと、引き続き顧客を保護することは最重要事項です」。
見直しは、英国政府が“好ましい企業リスト”の中で、海外で賭事免許を受けている業者に適用している現行規制を調査・検討することになるだろう。それに は、欧州経済領域[訳注:欧州連合27ヵ国とノルウェー等3ヵ国]外のアンティグア・バブーダ、オルダニー島、マン島およびタスマニアなどが含まれてお り、インターネット賭事業者はそこから英国向けに賭事サービスを提供することができる。
By Howard Wright and Jim Cremin
(1ポンド=約170円)
[Racing Post 2009年5月1日「Sutcliffe orders review of offshore operators and loss of tax revenue」]