人工馬場で後肢の予後不良事故が多発か(アメリカ)【その他】
8月27日のカリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)の定例会議で、人工馬場が後肢故障の増加原因となっているという調教師の主張を裏付けるような剖検の結果が発表された。
カリフォルニア大学デーヴィス校(University of California-Davis)が実施した2008年の剖検報告によって、予後不良となる後肢故障の発生頻度は、ダート馬場と比較して人工馬場のほうが高いことが初めて正式に立証された。
カリフォルニア州動物衛生食品安全研究所(California Animal Health and Food Safety Laboratory)の所長代行であるハイル・キンダ(Hailu Kinde, D.V.M., M.P.V.M.)博士は、人工馬場で9頭の馬が左後肢の故障で死亡し、10頭の馬が右後肢の故障で死亡したと報告した。ロサンゼルスタイムス紙(Los Angeles Times)は、ダート馬場では後肢の故障が原因となった死亡は1件発生しただけであると報告した。
またこの報告は、致命的な骨折の大部分は前肢の故障であり、右前肢の故障による予後不良事故はダート馬場の22件に対して人工馬場では36件発生し、左前肢の故障による予後不良事故はダート馬場の37件に対して人工馬場では38件発生したことを明らかにした。
同紙は、2008年はサラブレッド258頭、クォーターホース86頭を含む合計351頭の馬が、剖検の対象となったと報じている。
CHRBの馬医療担当理事リック・アーサー(Rick Arthur)博士は、この報告は2008年の剖検によって得た“最も重要な情報”であると述べた。
アーサー博士は、「このデータは、後肢の故障がダート馬場よりも人工馬場で頻発していることを示しており、調教師たちが後肢の故障の増加について私たちに訴えていたことが裏付けられました」と述べた。
同博士は、どの故障がどの馬場(ダート、人工、芝)で発生するかをより正確に特定することも含め、故障に関するデータ収集と報告について改善を重ねていると語った。
アーサー博士は、「研究データはより包括的になり、利用しやすいように整えられました」と付け足した。
同博士によると、CHRBのカーク・ブリード(Kirk Breed)専務理事は、同博士とカリフォルニア大学デーヴィス校のその他の専門家たちに、優れた科学的知識を基にして馬場安全基準を確立する手助けをするよう要請した。
この事業は各種学問分野にまたがる情報源を活用する。また参加者は、デーヴィス校の土壌・農業技術者、馬専門外科医、解剖学者、そのほか、気象データの 収集、材質・性能テストおよび馬場管理について方法・手順の開発を支援する専門家である。これらはいずれも馬故障報告と関連する項目である。
アーサー博士は、「うまくいけば、予後不良事故防止と馬の健康の見地から、競馬場を評価するための事業計画について提案ができるでしょう」と語った。
デルマー、ハリウッドパークおよびサンタアニタ競馬場の競走担当理事たちは、日常の馬場管理を文書で記録する取り組みを手短に説明した。この取り組みに 関する情報はウェブサイトに掲載される予定である。日常の馬場管理方法に関するデータの収集は、事業計画に盛り込まれるだろう。
[thoroughbredtimes.com 2009年8月29日「Study indicates more fatal hind leg injuries occur on synthetic tracks」]