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海外競馬情報
2009年10月16日  - No.20 - 2

走行妨害、英仏で競馬施行規程が異なる(フランス)【開催・運営】


 “ダーレミ(Dar Re Mi)の降着決定”によって、走行妨害に関する考え方に英・仏で大きな違いがあることが再び露呈した。フランスギャロ(France Galop)の規定・裁決委員部門のアンリ・プレ(Henri Pouret)課長が現在の状況を次のように説明した。

 「IFHA(国際競馬統轄機関連盟)の競馬施行規程調整委員会が年に2回開催されており、走行妨害の問題が検討されています。この委員会の構成は、欧州代表2名、アジア代表2名、アメリカ大陸代表2名です。欧州代表はイギリスからの1名と私です」。

 「この委員会は、大半のIFHA加盟国に走行妨害の事例映像を見せて、それぞれの事例でどのような判定をしているか説明を受け分析しました。この調査により、走行妨害の問責に関しては2つの明らかに異なる方式があり、判定結果にかなり相違があることが分かりました」。

 「英国とアイルランドでは裁決委員は“(走行妨害がなければ)被害馬は加害馬に先行することができたか”という質問に答えなければなりません(注:ヴェ ルメイユ賞を例に取れば、ソベラニア(Soberania)はダーレミに先着することができたか?)。香港、オーストラリアおよび南アフリカでも、原則と して同じ質問をしても、解釈が異なるため、英国とは結果が異なる場合があります」。

 「フランス、日本およびアメリカ東海岸においては、裁決委員に投げかけられる質問は“加害馬は被害馬が賞金あるいはより高額の賞金を獲得するのを妨げたか?”(注:ソベラニアは5着よりも上位に入着することができたか?)です」。

 「この調査により、英国などのグループでは一般的に、フランスなどのグループが降着させるような場合に着順をそのまま維持することが確認されました。さ らにフランス、日本、アメリカ東海岸では、被害馬の着順に疑義が生じた場合、疑義はつねに被害馬に有利に考慮するという原則が適用されます。そのほか、ア メリカの他の地域では、州ごとに違いはあるものの、決定の大半はフランスの方式によるものです」。

 亀裂は実際、英仏海峡の両岸においてとりわけ深いように思われる。

 「手法の相違について、私たちは見解を調整するためにあらゆる手段を講じなければなりません。いずれの国でも、走行妨害の問責に関する原則は、その国で 売上げシェアの大きい馬券の種類の影響を受けます。英国では、賭事の大部分は単勝に集中しています。他方フランスでは、組合せが下位まで広がる馬券[訳 注:カンテプリュス(Quinte+ 5連単・5連複)など]が多く購入されています」。

 「ヴェルメイユ賞における走行妨害の裁定に不満を持つ者がいるのは事実ですが、一歩下がって冷静な目で見ること、そしてフランスの方式の長所を理解することもまた必要です」。

 「フランスの方式は、すべての騎手に、常にどんな位置取りにおいてもできる限りルールを順守する慎重さを求める点において、フランス競馬の合理性を高めるのに最も寄与しています」。

 「フランス人騎手たちは、国際舞台で経験を積んでおり、さまざまな走行妨害と裁決結果を最もよく比較できる立場にあります。彼らも、この問題について熱心に意見を交換しあっています」。

 

By Gerard de Chevigny

簡潔で実効性のあるルール

 フランスギャロの裁決委員会のアラン・ド・ケルマデック(Alain de Kermadec)委員長は、自身の見解を次のように述べた。

 「記者会見で私は、イギリスにおける報道はすべて、フランス競馬が採っている原則とこれまでの適用結果を確かめもせずに、非難していると申し上げまし た。裁決委員はこの原則によって、簡潔で実効性のあるルールを自在に適用できるのです。この原則の創始者であるオリヴィエ・ド・マレルブ(Olivier de Malherbe)氏も、それに異論はないでしょう。この原則は、競馬関係者にも賭事客にも簡潔で分りやすく、また馬群内の安全性と競走ルールの合理性を 高めるので、騎手に順守を徹底できるのです。その上、統一的で客観性のある適用が可能です」。

 「この原則には、次の2つの要素があります。? 妨害を禁止すること、? 妨害行為の結果について疑義がある場合は被害馬を有利に考慮すること」。

 「この原則の採用に先立って、激論があったことを覚えています。自分自身あとになって、この原則の妥当性と競走が平穏に施行されていることを実感しました」。

 「確かに何度か、フランス競馬の平穏が乱されたこともあります。しかし、稀に起きた不都合より、優れた原則によって多くの利益を受けたことに感銘を受けています」。

 「したがって、このルールが存在する限り、フランスの裁決委員は、事例が発生した時に必要とされる厳格さこそルールの効用を担保するものと考えて、迷うことなく適用するでしょう」。

 「なお、フランスは現在、走行妨害の判定ルールの国際的調和に関するIFHAの会合で、意見交換しています」。

 

By C.U.F.


[Paris Turf 2009年9月15日「Quand les codes diffèrent」]
[Paris Turf 2009年9月15日「“Une règle simple et dissuasive”」]


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