競馬産業、景気後退のため15年ぶりのマイナス成長(アイルランド)【開催・運営】
ホースレーシング・アイルランド(Horse Racing Ireland: HRI)が1月12日に発表した2008年の年間統計は、景気後退の現実とアイルランド競馬への影響を如実に示している。
報告では、2007年に比べ観客動員数、場内馬券売上げ、セリ売上げすべてが大幅に減少し、競馬産業の15年ぶりの縮小が浮き彫りになっている。
最も大幅な減少は、セリ部門であり、競走馬の公開セリにおける売上げは43.6%減の9950万ユーロ(約129億3500万円)までに落ち込んだ。一 方、競馬場への観客動員数は9%減少し、場内ブックメーカーおよびトート社(Tote)による場内馬券売上げは18.2%減であった。
HRIの最高経営責任者ブライアン・カヴァナー(Brian Kavanagh)氏は、次のように述べた。「とりわけ2008年後半は消費の減退と悪天候が重なり、明らかにその影響を受けました。主要なフェスティバ ル開催はすべて上手く持ちこたえたのですが、総観客動員数は、152万7078人から139万794人に減少しました」。
2008年アイルランド競馬 結果 | |||
増加 | |||
変移 | 2007 | 2008 | |
開催日数 | +2.7% | 333日 | 342日 |
開催中止日数 | +250% | 12日 | 42日 |
代替開催日数 | +116% | 12日 | 26日* |
競走数 | +2.4% | 2397競走 | 2454競走 |
賞金額 | +1.3% | 59.6mユーロ(約77億4800万円) | 60.4mユーロ(約78億5200万円) |
障害競走 | +0.7% | 28.5mユーロ(約37億500万円) | 28.7mユーロ(約37億3100万円) |
平地競走 | +1.9% | 31.1mユーロ(約40億4300万円) | 31.7mユーロ(約41億2100万円) |
出走頭数 | +0.9% | 34291頭 | 34591頭 |
馬主 | +0.9% | 5588人 | 5641人 |
*: 当初の日程のうち31開催が中止。11開催の日程が組み直されたが再度中止となった。総開催日数は予定よりも5日少なかった。 | |||
減少 | |||
新規馬主 | -14.7% | 1449人 | 1237人 |
現役馬 | -0.6% | 12188頭 | 12119頭 |
除外馬 | -18.4% | 24519頭 | 20012頭 |
場内馬券売上げ | -18.2% | 282.3mユーロ(約366億9900万円) | 231.0mユーロ(約300億3000万円) |
トート社 | -10.1% | 61.3mユーロ(約79億6900万円) | 55.1mユーロ(約71億6300万円) |
ブックメーカー | -21.5% | 205.2mユーロ(約266億7600万円) | 161.0mユーロ(約209億3000万円) |
SP店** | -5.7% | 15.8mユーロ(約20億5400万円) | 14.9mユーロ(約19億3700万円) |
スポンサー料 | -5.4% | 9.2mユーロ(約11億9600万円) | 8.7mユーロ(約11億3100万円) |
観客動員数 | -9.0% | 152万7078人 | 139万794人 |
セリ | -43.6% | 176.5mユーロ(約229億4500万円) | 99.5mユーロ(約129億3500万円) |
**: 発走直前のブックメーカーの平均的賭率で受付ける賭店。 |
「HRIは政府からの資金が削減されることを受けて、2009年に大幅な支出削減をしており、馬主、調教師、生産者を含む競馬関係者1万6500人は前途に横たわる苦境を覚悟しなければなりません」。
「競馬産業内において、人員削減と余剰人員一時解雇は今や容赦のない現実となっています」。
カヴァナー氏は、HRIが直面している重要な問題は、海外賭事業者を含むブックメーカーから賦課金を徴収することによって長期的に安定した資金を確保して、計画的な投資を可能にすることであると、従来からの主張を続ける。
同氏は次のように語った。「アイルランドの競馬産業は他国の競馬産業がそうであるように、今こそ真に自立的な財源を確保すべきです。今まで課税の網を不 正に逃れてきたすべての海外のインターネット・電話投票運営業者を含む賭事業者から賦課金を徴収することにより実現可能となります」。
「この問題については政府と協議中なので、現段階でこれ以上はお話しできません。賦課問題についてHRIは毅然と意見を述べ、政府側もまたこの問題を検討することを望んでいます」。
同氏はまた次のように付言した。「2008年の年間統計には良い材料もあるので、全く暗い見通しというわけではありません。2008年の最後の数ヵ月は 新規馬主の参入がありませんでしたが、それでも年間の新規馬主は合計で1200人でした。現役馬の数は、2007年の1万2188頭から1万2119頭へ わずか0.57%減少しただけです。開催日数は2007年よりも9日多く、一方で42開催日が悪天候のために中止になりましたが、そのうち26日は代替日 程に振り替えました」。
「また、2008年もアイルランド調教馬は顕著な成績を収め、イギリスとアイルランドの44のG1競走のうち29勝を挙げました。この成功は、アイルラ ンドの競馬産業のレベルが世界最高であることを示しています。我が国の課題は今後もこのような素晴らしい成績をさらに重ねることです」。
By Tony O’Hehir
(1ユーロ=約130円)
[Racing Post 2009年1月13日「‘Tough times ahead’as cost of downturn hits home in Ireland」]