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海外競馬情報
2009年02月20日  - No.4 - 3

サンタアニタ競馬場の人工馬場の安全性に懸念の声(アメリカ)【その他】


 2008年12月26日にサンタアニタ競馬場の冬・春開催が開始されてから、プロライド馬場の安全性に関する懸念が高まっている。

 開催開始から5日間で5頭の馬に故障が生じ、そのうち3頭が予後不良となり、2頭が外科手術を受けた。

 調教師たちはここ数日プロライド馬場を歩いて見て回ったが、その評価は芳しくなかった。

 これを受けて、2009年1月7日、緊急会合が開かれ、約50人の調教師とプロライド馬場を製造したオーストラリアの会社の創始者で2008年前半にサンタアニタ競馬場のクッショントラックの欠陥修復を監督したイアン・ピアース(Ian Pearse)氏が参加した。

 2人の調教師はサンタアニタ競馬場の人工馬場は地雷原のようだと表現し、1人はダート馬場に戻すことを要求した。一方でピアース氏は、適切に管理することが解決策であるという姿勢を崩さなかった。

 この会合は、カリフォルニア州サラブレッド調教師会(California Thoroughbred Trainers: CTT)の求めにより開かれた。冒頭に、CTTの専務理事エド・ハルパーン(Ed Halpern)氏は調教師にコメントを求めた。

 まず口火を切ったのはマーク・グラット(Mark Glatt)調教師で、「私は1月3日に馬場を歩きましたが、それは地雷原のようにぞっとするようなものでした」と述べた。また同調教師は詳細を尋ねられ て、馬場表面の所々に穴が見られ、異常に柔らかい部分もあったと語った。

 会合において率直な批判を口にしていた1人であるダレル・ヴィエナ(Darrell Vienna)調教師は、人工馬場は滑り出しは好調だったが、その後は下降線を辿っていると述べ、「状態は以前より悪く、さらに悪化しています」と語った。

 ヴィエナ調教師はまた、馬場状態が均一でないことについて、「“良”のところもあれば、“重”のところもあります」と不満を述べた。

 80歳のメル・ストゥート(Mel Stute)調教師は、過去40年間で12頭の予後不良馬を出したが、そのうち9頭は過去2年間人工馬場においてであったと述べた。その後、まだ会合が行 われている最中に同調教師は立ち上がり、「もうたくさんだ!」と呟き会場を後にした。

 CHRBの馬医療担当理事のリック・アーサー(Rick Arthur)獣医師は、CTTメンバーたちに予後不良事故は人工馬場の敷設後に減少しており、外科手術も然りであると語った。

 統計データについて質問されたアーサー獣医師は、故障馬が増加したと主張するならばそれを裏付けるデータを提供するようCTTに要請した。ハルパーン氏は、CTTは追跡記録を作成するのは困難だが、適時に報告を提供することはできるだろうと語った。

 人工馬場の支持者であるデーヴィッド・ホフマンズ(David Hoffmans)調教師は、ダート馬場での予後不良事故と故障に言及し、「あなたたちの中には、間違いなく健忘症の人が居ます」と述べた。

 人工馬場に反対意見を述べているブルース・ヘッドリー(Bruce Headley)調教師は、人工馬場で調教と競走を行うことは、ワニがいっぱいの川を泳ぎわたるようなものだと考えている。同調教師は、「生き残る人もい れば、そうでない人も出てくるでしょう」と述べた。

 ヴィエナ調教師は、重機で人工馬場のハローがけをすることが解決策ではないと確信している1人である。同調教師は、「機械を馬場に入れないで下さい。基盤層が露出してしまいます」と述べた。

 主要ポイントは適正な管理であると考えるピアース氏は、馬場全体の密度の均一性を保つのに馬場のハローがけが必要であると述べたが、馬場に機械を入れるのを減らした方が良いことは認めた。

 ピアース氏は天候の違いに言及し、「私たちは今や、夏に実施していた管理プログラムとは異なるものを組む必要があります」と述べた。

 10月24、25日に施行されたブリーダーズカップを含むサンタアニタ競馬場のオークツリー開催において、人工馬場は一般的に高い評価を受けていた。

 ピアース氏はCTTに、同氏とサンタアニタ競馬場の職員が馬場密度の均一性をより厳しく監視することを伝えた。

 ピアース氏は、米国は調教と競走が同じ日に同じ馬場で行われる唯一の国であると指摘し、人工馬場における1日あたりの走行量がさまざまな問題を引き起こしていると述べ、「これによって状況が全く変わってしまいます」と語った。

 未知の分野があり、技術は途上にあると述べたピアース氏に対して、ヴィエナ調教師は、「私たちの馬を実験材料にするつもりか?」と噛み付き、ピアース氏は「実際のところはそういうことです」と認めた。

 約1500頭の馬が毎朝サンタアニタ競馬場の人工馬場で調教を行っている。

 ヘッドリー調教師は、午前7時30分の馬場状態は馬によって踏みつけられる前の早朝の馬場状態とは異なっていると不満を述べた。

 ヘンリー・モレノ(Henry Moreno)調教師は、「私たちは絶対にダート馬場に戻るべきです。私の58年の競馬生活でこれは最悪の馬場です」と述べた。

 その後、必要な措置を取るための資金をサンタアニタ競馬場に要求しているのかどうか聞かれたピアース氏は、「私は全く要求していません」と応え、モレノ調教師は、「愚かですね」と口を挟んだ。

 ウラジミール・セリン(Vladimir Cerin)調教師は、当初は人工馬場への移行を支持していたが、状況は“地雷原を歩く”のと同じであると述べ、「問題は、次の犠牲者は誰かということで す。改善方法はわかりません。とにかく現状には我慢できません」と付言した。

 ボブ・バファート(Bob Baffert)調教師は、人工馬場に対する批判が状況打開を促すことにもなると述べ、「私たちは競馬に科学を持ちこみました。ただ人工馬場に関する目標は達成されていません」と語った。

 

By Larry Stewart


[thoroughbredtimes.com 2009年1月7日「Trainers voice concern over Santa Anita’s synthetic surface」


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