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2009年03月19日  - No.6 - 2

ドナヒュー卿、パディパワー社の顧問就任を弁明(イギリス)【開催・運営】


 有名な労働党上院議員のドナヒュー卿(Lord Donoughue)は、スターティングプライス規制委員会(Starting Price Regulatory Commission: SPRC)の委員長を務めている。このたび250店以上のベッティングショップをアイルランドとイギリス(うち60店はロンドン)で運営するブックメー カーのパディパワー社(Paddy Power)の有給顧問に就任することについて、同氏は疑惑に反論した。

 SPRCの決定はブックメーカーの利益に影響するので、この役職への就任は公益と私利の衝突を惹き起こすのではないかとの疑惑が生じている。英国競馬界 の権威者であるドナヒュー卿は、2008年10月7日に貴族院の利害関係登録簿に、自身の立場を“パディパワー社の競馬等に関する顧問であり政治活動に関 係しない”と申告していた。ドナヒュー卿は報酬額を明らかにせず、顧問としての仕事に見合う報酬であると述べた。

 チャンネル4(Channel 4)の賭事評論家ジョン・マクリリック(John McCririck)氏は、ドナヒュー卿が顧問を引き受けたことに憤りを示した。同氏は、「おぞましいことです。私たちはSPRC委員長が公平な存在であ ることを当然だと考えています。ドナヒュー卿は、SPRCにおいてスターティングプライス(Starting Price: SP 発走間際のブックメーカーの平均的オッズ:訳注参照)制度を変更しました。それによってブックメーカーは膨大な利益を受け、賭事客の負担が増えました。そ れなのに彼はブックメーカーと一緒に仕事することを引き受けたのです。SPRCがブックメーカー側に有利に行動した後で、利害対立関係にあるブックメー カーと賭事客のうちの一方にドナヒュー卿がつくのは言語道断です。恥ずべき行為です」と語った。

 ドナヒュー卿は次のように語った。「顧問に起用したいとの打診があったとき、私はSPRCに相談しました。理事の誰も問題があるとは言いませんでした。私はその職を引き受けた後すぐに、利害関係登録簿にその旨を申告しました」。

 「パディパワー社との話合いにおいて、彼らの利益を図るための政治的な活動はいっさいしないことと、顧問の仕事はSPとは無関係であることを完全にはっきりさせました。専門的知識が少々ある競馬・賭事産業の状況について助言することが、顧問の仕事の全てです」。

 経済学者であるドナヒュー卿は1970年代にはハロルド・ウィルソン(Harold Wilson)首相とジェームズ・キャラハン(James Callaghan)首相の上級政策顧問を務め、1990年後半には農漁業食糧大臣を務めた。同氏は近年、競馬とグレイハウンドレース産業の見直しを指導 したが、その見直しには競馬界における資金調達のための賦課金制度の近代化に関する検討が含まれていた。

 ドナヒュー卿は、「上級の職への就職で買収されていると感じたら、その勧誘に乗るべきではないでしょう。私が汚職をしているとか、私が数千ポンドのため に独立性に疑問を持たれたり、SPRCに不利益を及ぼすような行動をするのではないかという見解は、奇妙だし侮辱的です」と述べた。

 SPRCの総務部長を務めるジム・ドネリー(Jim Donnelley)氏と理事の1人であるデーヴィッド・メトカーフ(David Metcalf)教授は、利害の衝突がないと述べた。

 プレスアソシエーション社(Press Association)の競馬・スポーツ賭事部長でもあるドネリー氏は、「ドナヒュー卿の顧問への就職は、SPRCとしては問題はありません。同氏は賭 事客とブックメーカーのどちらでもなく、競馬のために行動する非常に率直な人です」と述べた。

 ロンドンスクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics)の労使関係分野の教授で、最低賃金委員会(Low Pay Commission)の役員であるメトカーフ教授は、「十分検討しましたが、問題はありません」と述べた。

 ドナヒュー卿は、超党派の競馬および競走馬生産産業グループ(All Party Racing and Bloodstock Industries Group: APRBIG)の2名の保守党議員からも支援を受けた。APRBIGの共同議長であるジョン・グリーンウェイ(John Greenway)議員は、「利害の衝突があると考える人がいるのは理解できますが、SPRCの委員長には競馬産業全体において尊敬を集めている人が就く ことが最善であると考えます」と述べた。

 ドナヒュー卿がパディパワー社の顧問になる前に、SPRCはSPに関する調査をパディパワー社から受託したことによって、同社との関係ができた。

 その調査はダブリンのトリニティ・カレッジ(Trinity College)の経済学部の研究員であり、トート・アイルランド社(Tote Ireland)の元重役であるパトリック・ウォルドロン(Patrick Waldron)博士が実施した。調査報告によれば、2006年にSPの算定方式が変更された後に、SPの理論的オーバーラウンズ(払戻し額の切捨て)が 増加したことによるブックメーカーの利鞘の増加額はごく僅かであった。

 2008年7月、SPRCの2007年報告を発表した際に、ドナヒュー卿はウォルドロン博士の多大な貢献があったと述べた。ウォルドロン博士はその後、 パディパワーズ社からSPRCに提出するために調査を委託され、SPと複合馬券(each-way betting単勝と複勝を同額一括購入する馬券)に関する調査報告をまとめた。

 ドナヒュー卿は次のように意見を述べた。「パディパワー社は大学の研究者と協働し、いくつかの大変興味深い研究を行いました。それは多くの競馬解説者が 持っているSPに関する知識を凌駕しています。パディパワー社が資金提供しているからといって、研究を差し止めるのですか?この研究はSPに対する理解を 深めました」。

 「私は公正なSP、すなわちブックメーカーと賭事客双方に平等なSPを望んでいます。もしブックメーカーが作り出したSPの方がもっと公正であると考え る人がいるなら、その人は病院に行くべきでしょう。SPRCは関係者を最大限保護することを目標にしています。SPは透明性があります。すなわち、算定方 式およびサンプルのとり方が明確なので、監視が可能です」。

 

SPRC とは何か?

 SPRCは2004年に発足した。SPRCの任務は、競馬賭事の精算に用いられるSPの算定方式を決定することである。SPRCは2006年に、SP制度の見直しを行い、SPの算定方式を変更した。

 SPRCの運営資金はSIS社(Satellite Information Services)とターフTV社(Turf TV)が拠出している。SPRCの総務部長のドネリー氏は、4人の理事はその仕事に比較して非常にささやかな報酬しか受けていないと語った。

 SPRCの理事は次のとおりであり、発足以来変更はない。ドナヒュー卿(74歳)、KPMGとパートナーであるイアン・バーロウ(Ian Barlow 57歳)氏、ロンドンスクール・オブ・エコノミクスの教授で競馬場の理事を務めるデーヴィッド・メトカーフ教授(66歳)、トリニティミラー紙 (Trinity Mirror)の元スポーツ部門担当責任者ジェレミー・リード(Jeremy Reed 54歳)氏。


(訳注)英国のSPの仕組み

ベッティングショップやインターネットで馬券を購入する場合に、個々のブックメーカーが提示するオッズを選択するが、そのほかにSPを選択することが可能 である。2006年の制度見直しによりSPの算定方式が変更され、SPRCが認定する12から36の場内ブックメーカーが発走直前に提示しているオッズ を、馬券購入者から見て有利な上位半分で区切り、そのサンプルの中で一番低いオッズをSPとすることになった。SPは発走直前の場内ブックメーカーのオッ ズの平均的価格である。

 

By David Ashforth


[Racing Post 2009年2月12日「Donoughue defends role as Power adviser」]


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