英国競馬統轄機構、2010年に200万ポンドの予算削減(イギリス)【開催・運営】
英国競馬を運営し統轄するBHA(英国競馬統轄機構)は、2010年以降の集中管理予算を200万ポンド(約3億4000万円)削減することで、経済の現状に果敢に立ち向かう。
予算規模は6.1%減少し、3300万ポンド(約56億1000万円)から3100万ポンド(約52億7000万円)になり、2011年にはさらに100万ポンド(約1億7000万円)が削減される予定である。
サラブレッド血統登録機関のウェザビーズ社(Weatherbys)と薬物検査を行なっているHFL運動科学研究所(HFL Sports Science)においては、退職者の大半が補充されていないばかりか非常勤職員も解雇されており、BHAと契約の再交渉が行われている。
BHAのCEOであるニック・カワード(Nic Coward)氏は人員削減について、「誰もが金額に見合う価値があると思われる方法で可能な限り最高のサービスを競馬に提供し続けるための努力をしなければなりません」と述べた。
常勤職員の大部分は保護されるが、いくらかの職務の追加があるだろう。
例えば、臨時職のスポンサーシップ監視指導官[sponsorship compliance officer:VAT(付加価値税)控除の支援材料を監視する“ロゴコップ(logo cops)”]が行ってきた職務などである。
予算削減により、8%前後の勤務日数の削減が行われることにともない、BHAが派遣する1人の有給裁決委員を複数開催に割り当てることや、検量室警備担 当官の不在での競馬開催を許可することなどのいくつかの措置が取られるだろう。また、たった1人の獣医技術者が複数の開催で執務したり、厩舎警備担当官の 職務を兼任することがあるだろう。
カワード氏は職員たちに、これらの措置は特定の競馬場や開催において危険が少ないと見なした場合に敢行されるだろうと述べた。
同氏は、いわゆる小規模な開催において公正確保の基準が下げられるのではないかという指摘に異議を唱えた。
同氏は、「競馬場の有給裁決委員がたった1人しか執務しないところでは、ハンデキャッパーと検量室警備担当官をそれぞれ1人ずつ執務させます。私たちは不十分な開催執務体制を取ることはありません」と語った。
2008年に昇給されたBHAの職員は、ほとんどの場合、2010年も同じ給料でやりくりすることになるだろう。しかし、カワード氏は仕事に危険要素がある場合には賞与を受け取る者もあることを明らかにした。
カワード氏は、理事から他の部門の部長に至るまで予算削減プロセスに関係している誰もが、なぜこのようなことをやるのか、そしてどのような方法でそれをやるのかの問いをずっと突きつけられてきたと述べた。
すべての職員に向けた書簡において、カワード氏は次のように語った。「私たちは場合によっては、物事がなされる方法を変更することを決定しました。最大 の変更は職務をこれまでと同じ方法で果たし続けるのとは対照的に、今後は多くの役割にリスクに基づいた姿勢で臨むことです」。
加えてBHAの事務所のロンドンへの移転は、6年間に100万ポンド(約1億7000万円)の節約を可能にする。これは主に競馬賭事賦課公社(Levy Board)からの収入が減少したことを考慮したものである。
人員削減は、公正確保と免許付与を担当する職員の間で最も痛みを伴うものと思われるとカワード氏は語ったが、目立つような新方針を早急に取ることはないだろうと付言した。
IFHA(国際競馬統轄機関連盟)の下で競走日程の国際ルールを統一する最新の試みに参加するため12月10日の夜に香港に到着したカワード氏は、BHAの協調は協議を通じて実現したと述べた。
同氏は次のように語った。「業務執行は、役員会から部長に至るまで全体的に計画され、株主とも一緒に取り組みました。私たちが行っていることが正しく適 正価格であることに疑いの余地はありません。職員たちも、1年間に多くの作業に関わりましたので、何が起こっているのか認識しています」。
BHAのポール・ロイ(Paul Roy)会長は、政府に対して“賭事産業から競馬産業への公正な資金還元”を確実にする要求をあらためて表明した。同会長は、「競馬を運営するのにどれぐ らいの経費が掛かっているのか。そして、運営および統轄機関として私たちが何をなすべきなのかを再三検討しました」と語った。
By Howard Wright
(1ポンド=約170円)
[Racing Post 2009年12月11日「BHA to cut £2m from next year's budget」]