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2010年06月11日  - No.11 - 2

競馬変革プロジェクトの動き:ブックメーカー、10進法表示オッズを試行も売上げ減少(イギリス)【開催・運営】


 4月28日のアスコット競馬場は、競馬変革プロジェクト(Racing For Change: RFC)が進めた分数表示オッズに代わる新手法の実験がブックメーカーに大幅な収入減少をもたらし、10進法表示オッズの大失敗の舞台となった。参加した ブックメーカーの1つも、10進法表示オッズの試行は失敗だったと述べた。

 グランドスタンドへの入場料を無料とするアスコット競馬場の決定が功を奏して2万人の競馬ファンが駆けつけた日に、4店のブックメーカーがあえて実験台となって7つのレースを対象に10進法表示オッズで賭事を受付けた。

 しかし、今回10進法表示オッズにより被害を被ったブックメーカー4店が、オッズを7/2ではなく3.5とする表示変更を再び行うことはないだろう。4 店のうちの1つであるマーティン・ベロール(Martyn Verrall)氏は、アスコット競馬場で自身が経営する2つの屋台の売上げが80%近く下回る損害を受けたと主張した。

 内柵沿いに屋台を構えるブックメーカーであるジェフ・バンクス(Geoff Banks)氏は、「出来高に関して言えば、前年比で35%減少しました。昨年よりも多くの観客がいる中で営業しましたので、売上げ減少の要因は10進法表示オッズによるものです」と述べた。

 「顧客は10進法表示を好むと言うかもしれませんが、10進法表示オッズでの賭事を行うことは好んでいません。常連客は理解できないでしょうし、初めて競馬場に来る競馬ファンは間違いなく理解できないでしょう」。

 「分数表示オッズで賭事を提供する他のブックメーカーと競争しようとすれば、結果は明白でしょう。彼らはいつも圧勝するでしょう」。

 バンクス氏はさらに次のように付言した。「10進法表示オッズは失敗であり、再びこれを試みるつもりはありません。私は何でも喜んで試行しますし、試行 の最初の3レースではブックメーカー間で最も良いオッズをつけていましたが、顧客がオッズを理解できず私の所には来ませんでした」。

 「顧客が理解できないのであれば、10進法表示オッズを続けることに何の意味があるのでしょうか?」

 また10進法表示オッズを試行したブックメーカーであるエイドリアン・ハリス(Adrian Harris)氏も同じような調子で、自身の取引が「普段よりずっと静かでした」と述べた。一方同業者であるバリー・ジョンソン(Barry Johnson)氏は、「10進法表示オッズは受け入れられません。この試行で売上げは減少しました。これが上手く行くか見てみたかったのですが、期待は ずれでした」と語った。

 ハートフォードシャー州の競馬ファンであるライアン・クイン(Ryan Quinn)氏は、ベロール氏の店舗で10進法表示オッズの馬券を購入した1人だが、伝統を棄てることには嫌悪を表明した。

 同氏は、「私は、10進法表示オッズよりも分数表示オッズを間違いなく気に入っています。分数表示オッズは右から左に簡単に読むことができますが、10 進法表示オッズではそれが困難で呑込みにくいと思います。もし8-13が何だかわからない人が居れば、彼らに見込みはありません」と語った。

 また同氏は、競馬場のあちこちで興奮のざわめきが見られたことに満足していると述べた。そのざわめきは、昨年のサガロSの入場者数8,257人を大きく上回った1万9,215人の入場者数のおかげである。

 競馬ファンは、入場料とレーシングプログラムの無料を楽しむとともに、アスコット競馬場のサービスを利用し、終日無料の紅茶、コーヒーと大幅に割引された飲食物を享受した。

 アスコット競馬場のチャールズ・バーネット(Charles Bernett)場長は、「私たちはこの日を売り込むために熱心に取組みました。そしてその手ごたえは抜群でした」と語った。

 「私たちは現在、今回の入場料無料日を楽しんだ人々とコミュニケーションを取りたいと思います。そして、競馬は素晴らしいレジャーというだけではなく大 きな価値を持つものであると彼らがいつか認識することを望んでいます。私たちは必ずもう一度無料日を設けることを検討すると思います」。

 

By Lee Mottershead


競馬変革プロジェクト、10進法表示オッズに関して早まった決断はせず

 10進法表示オッズの試行に参加したブックメーカー4店は、馬券売上げの大幅な減少に苦しんだが、10進法表示オッズの今後に関して急いで判断が下されることはないだろう。

 RFCの賭事開発担当理事であるナイジェル・ロディス(Nigel Roddis)氏は「無条件反射的に対応するつもりはありません」と主張し、すべてのデータをしっかりと分析する構えである。

 試行について調べるためにRFCが雇った市場調査会社は、ブックメーカー、賭事客、初めて競馬場に来た顧客を含む35名に対して徹底調査を行った。

 ロディス氏は、「試行を実施し評価を得るつもりでしたので、その意味では今回の試行は機能しました」と語った。

 「さまざまな意見は役立ちますし、現在私たちはすべての意見を集約しています。また、いくつかの具体的な顧客調査を行いましたが、これらは、他の2、3 の事柄と合わせて実施するため調査完了に2、3週間を要します。私たちはすべての評価をもとに長所と短所を検討し、それらをブックメーカーとの会議および 内部会議で議論する予定です」。

 べロール氏の店舗の1つで自ら3レースの馬券を10進法表示で購入したロディス氏は、「売上げ減少の原因の1つは実際のところ観衆です。常連客ではない入場者が多数おり、彼らにとってすべてが初めてのことでした」と語った。

 同氏は次のように付言した。「常連賭事客は10進法および分数のいずれも吟味したものの、結局は親しんだ方法で馬券を購入したのだと思います。おそらく 2種類のオッズが並んでいることで混乱した賭事客もいたでしょうし、このことも売上げに影響を与えたと思います。この試行には多くの変動要素がからんでお り、私たちは冷静に分析検討する必要があります」。

 「私は無条件反射的な対応はしません。この問題には分別を持って当たる必要があります。経費も関係しますし、人々のビジネスを扱いますので、すべてが考え抜かれなくてはなりません」。

 

By Graham Green

アスコット競馬場の初心者賭事客、10進法表示オッズを好む

 RFCは5月23日、入場料無料週間に実施された試行において、初心者賭事客は分数表示オッズの理解に困る一方、10進法表示オッズは好んでいたが、従来の分数表示オッズを10進法表示オッズに代えることについては、乗り越えるべき課題は多いと認めた。

 入場料無料により賭事のための30ポンド(約4,200円)を支給された形となった初心者賭事客およびたまに競馬場に来る競馬ファンは、15-2や 13-8と表示されている分数表示オッズではどれだけの配当金がもらえるのかよくわからず、そのオッズを10進法に換算することに苦労していた。彼らは断 然、5-2よりも2.5、11-8よりも1.38という分かりやすい10進法オッズを好んだ。

 分数オッズと10進法オッズを交互に表示する掲示板が提供されていたが、全体として賭事客は、10進法オッズは競馬を近代化する一助となると結論付けて いた。もっとも、10進法表示を試行したブックメーカーたちは、従来の分数表示オッズで営業した同業者に比べ売上げ減少に苦しんでいたが。

 RFCの賭事開発担当理事であるナイジェル・ロディス(Nigel Roddis)氏は、「場内と場外のブックメーカーは結果を共有するだろうが、試行は“多少の長所といくつかの短所”を生み出したようです。試行を再び行 う計画はありませんが、この案件についての議論は続行されるでしょう」と語った。

 

By Jon Lees
(1ポンド=約140円)


[Racing Post 2010年4月29日「Bookies left to count cost of decimal trial」]
[Racing Post 2010年4月30日「RFC won’t make hasty decision over future of decimal odds」]
[Racing Post 2010年5月24日「Novice Ascot punters preferred decimal odds」]


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