5月までに出走する2歳馬が減少の一途(アメリカ)【その他】
若馬を仕上げるに当たっての考えの変化および競馬産業の2歳馬のデビューに関する新しい方針によって、この春競走キャリアを始める2歳馬が減少した。
2009年は5月までに2歳馬の2.9%が出走したが、2010年の同時期においてはわずか2.3%しか出走しなかった。このことにより、2010年5月までの2歳馬競走は300レース近く減少した。
NYRA(ニューヨーク競馬協会)の競馬担当理事であるP・J・カンポ(P. J. Campo)氏は、2歳馬競走は他の競走よりも出走頭数が多いので、その減少はとりわけ厳しい状況を招いたと述べた。出走頭数の多い競走は一般的に、より 多くの馬券売上げを競馬場にもたらす。ジョッキークラブの統計によれば、2009年の全競走の平均出走頭数は8.22頭であるのに対し、2歳馬競走では 8.47頭であった。
カンポ氏は、「2歳馬競走の施行を予定していましたが、出走馬が集まらないのです。2歳馬競走の代わりに他の種類の競走を施行するしか選択の余地はありません」と述べた。
同氏は、ニューヨークを拠点とする調教師の多くは2歳馬のデビューをサラトガ開催まで見合わせているように見えると述べた。
サラトガ開催と晩夏の開催が伝統的に若馬をデビューさせる場であった一方、多くの2歳馬が春競馬で華々しいデビューを飾ってきた。かつてフェイヴァリッ トトリック(Favorite Trick)は、2歳5月末までにステークス競走の2勝を含む計5勝を挙げた上で前人未到の2歳シーズン8勝を挙げた。このことは、フォントリック (Phone Trick)の牝馬である同馬が2歳馬で年度代表馬となる名誉を確かなものにした。
しかし時代は変わり、5月31日までにデビューする2歳馬の割合は、1980年の7%から1990年の3.5%へと劇的に減少した。この数字はその後安 定し、2000年には3.4%であった。しかし2000年と比較して、2歳馬の出走頭数は現在では32.9%減少し、2.3%となった。
その17年のキャリアにおいてデビュー戦で17.6%の勝率を誇っているケンタッキー拠点のW・ブレット・カルホーン(W. Bret Calhourn)調教師は、「私は以前ほど早くは2歳馬を出走させません。牧場から2歳馬を引き受けるとき、彼らは調教があまり進んでいません」と語っ た。
チャーチルダウンズ競馬場とキーンランド競馬場で競走役を務めているベン・ホフマン(Ben Huffman)氏は、「ホースマンたちは、天候のために若馬の調教スケジュールが遅れると言っています」と述べた。
馬主と調教師がデビューを遅らせる決定をするのに加えて、競馬産業の2歳馬の取り扱いに変化が出てきている。たとえば、チャーチルダウンズ競馬場は産ま れた日から24ヵ月経った馬に限り出走権を与えている。チャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.)は、この方針を所有競馬場4場すべてに適用する計画である。この方針はサラブレッドの健康と福祉を改善することに焦点を当てた考えから発展し た。
2歳馬の出走回数の全体的な減少は、近年になって見られるようになった。2009年には北米の2歳馬の競走数は4,287レースで、2008年から1%減少した。2歳馬の平均出走回数は4年連続で3.2回であり、2001年の3.5回よりも減少している。
北米2歳シーズン初期の出走馬(各年5月末まで) | ||||
年 | 競走数 | 出走頭数 | 北米生産頭数 | 出走率 |
1980 | 3,860 | 2,194 | 31,510 | 7% |
1990 | 2,444 | 1,726 | 49,220 | 3.5% |
2000 | 1,670 | 1,229 | 36,021 | 3.4% |
2009 | 1,407 | 1,064 | 36,724 | 2.9% |
2010 | 1,118 | 825 | 36,100※ | 2.3% |
2010年5月末までに施行される2歳馬競走の数は2009年の同時期から20.5%減少した。 ※繁殖牝馬・産駒登録報告(Report of Mare Bred and registration)を基にした見込み |
By Frank Angst
[Thoroughbred Times 2010年7月3日「Early-season starts by two-year-olds continue to decline」]