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2011年01月14日  - No.1 - 2

2010年ブリーダーズカップには待機裁決委員不在(アメリカ)【開催・運営】


  ケンタッキー州競馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission: KHRC)の裁決委員が参加を断ったため、2009年にカリフォルニア州サンタアニタ競馬場で開催されたブリーダーズカップにおいてレース結果の確定と競馬ルールに関する即時の説明をメディアと大衆に提供するのに役立ったプログラムは、2010年においては実施されなかった。

 競馬開催執務員認定プログラム(Racing Officials Accreditation Program: ROAP)は、ケンタッキー州の裁決委員が参加に反対したので、チャーチルダウンズ競馬場で施行された2010年ブリーダーズカップに“待機裁決委員(on-call steward)”を派遣しなかった。待機裁決委員は、レースに対して決定を下さないが、裁決委員の決定をファンとメディアに説明したり競馬ルールを明確にしたりする連絡係としての役割を果たす。

 2010年ブリーダーズカップでは、踏み込んだ説明を行う理由のあった出来事がたくさんあった。まず、BCレディースクラシック(G1)におけるライフアットテン(Life At Ten)のケースでの、レース前の出走取消手順や、ジョン・ベラスケス(John Velazquez)騎手が同馬は十分ウォーミングアップできていないと全米放送の視聴者に話した後でさえも出走が許された理由についての説明である。また、BCマラソンにおけるプリンスウィルアイアム(Prince Will I Am)の失格、そのレースにからんだウィナーズサークルにおける騎手のつかみ合いに対する罰則の可能性、そしてBCフィリー&メア・スプリントの1番人気馬ライトリーソー(Rightly So)の獣医師による出走取消の経緯についての説明に、待機裁決委員がいれば役に立ったであろう。

 ROAPは、サンタアニタパーク競馬場で開催された2009年ブリーダーズカップに待機裁決委員を派遣し、テレビ、ラジオ、インターネットなどの生放送のメディアに追加の詳細情報を提供し、新聞や雑誌の記者には続報を提供した。

 ROAPのスタン・ボウカー(Stan Bowker)会長は、ブリーダーズカップ社(Breeders’ Cup Ltd.: BCL)は2010年もこのプログラムを続行するのを望んでいたが、KHRCは参加することに関心がなかったと語った。このプログラムは、参加するかどうかについて場内裁決委員の決定を尊重していると付言した。

 KHRCのリサ・アンダーウッド(Lisa Underwood)専務理事は、ケンタッキー州の裁決委員はどんな決定をするにしても最善の説明をするだろうし、間違いが生ずる可能性のある情報伝達プロセスにおいて待機裁決委員は別の形で活用されるだろうとKHRCは確信していると述べた。

 ケンタッキー州の上席裁決委員であるジョン・ヴァイチ(John Veitch)氏は、2010年ブリーダーズカップにおける出来事についての新聞記者の質問に即座に回答した。また裁決委員たちは、BCマラソンの失格と、ウィナーズサークルでつかみ合ったハビエル・カステリャーノ(Javier Castellano)騎手とカルヴィン・ボレル(Calvin Borel)騎手への罰則についての決定を更新する報道発表を発表した。

 裁決委員が直接やりとりする時間がほとんどなかったことから、待機裁決委員の不在はテレビやラジオの生放送に最も大きな影響を及ぼした。他のスポーツでは、徐々にそのような生放送のための情報を提供し始めている。NFL(プロフットボールリーグ)のファンは、今では、ビデオ再生を見て疑わしい判定を見直す裁決委員からの説明をたとえ簡潔なものであっても聞くようになってきている。

 テレビで放映される競馬イベントの多くは、馬の故障や予後不良事故の最新情報をメディアの専門家に提供してくれる全米馬臨床獣医師協会(American Association of Equine Practitioners)の“いつでもアクセスできる(On-Call)”プログラムを歓迎している。待機裁決委員プログラムは、ファンの競馬ルールと判定への理解を助けるのに、同様の専門知識を提供することを目標としている。

ボウカー会長は今年のブリーダーズカップについて「今年は本当にいろいろなことが起こりました」と述べた。

 アメリカ・クォーターホース協会(American Quarter Horse Association)とフェアグラウンズ競馬場の裁決委員は、11月19日に開催されたチャレンジチャンピオンシップスへの待機裁決委員の立会いを歓迎した。

  

BCレディースクラシックの調査が進行中

 ライフアットテンがBCレディースクラシックに出走したものの競走中止となってから2週間経っても、KHRCは調査についての最新情報を出していない。

 KHRCのリサ・アンダーウッド専務理事は11月19日、調査は展開中であるが、結果が発表されるのがいつになるかについての予定は立っていないと述べた。

 ライフアットテンの馬主キャンディ・デバルトロ(Candy DeBartolo)氏のレーシングマネージャーであるデヴィッド・ヴァンス(David Vance)氏は11月18日、問題のレースについてKHRCのインタービューを受け、報告が発表されるまでにもう少し時間がかかるだろうと示唆した。

ライフアットテンは競走する前に100%の状態ではないように思われていたにもかかわらず、同馬がBCレディースクラシックに出走を許可されたことで、安全と公正の問題が提起された。同馬がゲートから出遅れたとき、ジョン・ベラスケス騎手は同馬がレースで最善を尽くすことを求めなかった。同馬は翌日、病気または感染症の症状を示して急に発熱した。

 ライフアットテンは6歳シーズンである2011年も現役を続けるだろう。G1競走を2勝している同馬は、2011年前半に南フロリダにあるトッドプレッチャ−(Tod Pletcher)調教師の厩舎に戻る前に、J・J・プレッチャ−(J. J. Pletcher)氏のオカラの牧場で放牧に出される予定である。

 ヴァンス氏は、「ゼニヤッタ(Zenyatta)は今年、6歳牝馬がどれだけ競走で健闘するかを見せつけました」と語った。

 ライフアットテンは、2010年に4つの重賞競走を優勝した。その中には、ベルモントパーク競馬場で施行されたベルダムSやオグデンフィップスHのG1競走が含まれる。マリブムーン(Malibu Moon)産駒である同馬はまた、賞金75万350ドル(約7,504万円)のデラウェアH(G2)も制しており、2010シーズンは99万9,000ドル(約9,990万円)を獲得した

By Frank Angst

(1ドル=約100円)

[Thoroughbred Times 11月26日 「Kentucky decision keeps on-call steward away from Breeders’ Cup」]


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