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海外競馬情報
2011年10月21日  - No.20 - 3

馬主は競走当日の薬物使用の撲滅に立ち上がるべきである(アメリカ)【獣医・診療】


 これは見識と科学の対決である。多くの人々は、競走当日のサリックス使用撲滅を望む人々とそれを合法のままにしておきたい人々の間の戦いを、少なくともこのように見なしてきた。これは競馬を大事に思う心のための戦いであり、競馬が存続するための戦いかもしれない。

 ジョッキークラブ、ブリーダーズカップ協会(Breeders’ Cup Ltd.)、アメリカグレードステークス委員会(American Graded Stakes Committee)、北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International)など競馬産業の多くの団体が、競走当日の薬物使用禁止の警鐘を鳴らし始めたとき、ホースマンたちはその反対のために結集し始めた。全米ホースマン救済協会(Horsemen’s Benevolent and Protective Association)やホースメン協会(Thoroughbred Horsemen’s Association)の代表者たちは、利尿薬としてサリックスを必要とする馬がいることを科学は示していると語っている。サリックスを使用することは人道的であり、運動誘発性の肺出血を抑制するのに効果的で、馬を最善の状態で出走させることができるので、その使用は適切であると述べている。

 言葉を変えれば、馬主は科学を知らず、毎日馬と一緒にいるわけではないので馬のことが分かっておらず、これに関する馬主の総意の決定は他の人々に任されている。このことから、競馬界は困難に陥っている。

 調教師とサリックス賛成派は、薬物使用反対の勢力を競馬のビジネスの側面しか考慮していないと非難し、競走当日の薬物使用を終わらせる要求は政治的動機に基づくものであると述べる。

 私たちが言いたいことは、そろそろ誰かが、競馬を支えている馬主が競馬界の全体像とビジネスを検討し始める時が来たということである。競馬はプロのアメフト、野球およびバスケットボールと同じようにビジネスである。プロスポーツのコミッショナーは、そのスポーツに最大限の利益をもたらすようにルールを作っては制定し、その中には運動能力を高める薬物の禁止も含まれている。競馬を含むすべてのスポーツのファンは、競技から薬物を撲滅したいと意思表示してきた。

 コミッショナーのいるプロのアメフト、野球およびバスケットボールとは違い、競馬界には競馬を監督する統一された統轄機関がない。このため、科学がリードする形で2歳馬を含む95%以上の競走馬はサリックスを投与されており、競馬はその全盛期であった1950年代や1960年代以降一般大衆の間での人気を急激に落としているようだ。サリックスとフェニルブタゾン(Bute)は1970年代から競馬界で蔓延している。

 北米競馬は、最近の経済不況以降だけではなくここ数十年間下降傾向にある。北米競馬の売上げのピークは2003年であり、もし年間3億5,000万ドル(約315億円)を競馬の賞金額に提供しているスロットマシンなどがなければ、競馬はずっとひどい状態だろう。

 競走当日のサリックス使用を支持する人は、賭事客には影響はないと言い張るが、これは科学が示していることではない。競馬に対する見解について世論調査は、許容された薬物使用が大衆の競馬への見解にマイナスの影響を与えていること、大衆は薬物使用のためにあまり馬券を買いたくなくなっていること、そしてもし競走当日の薬物使用が撲滅されればもっと馬券を買うだろう、ということを示している。賭事は競馬に不可欠なものであり、サリックスが賭事収入を減少させている。

 馬主は競馬のために身を削っており、競馬を支援している人々である。もし馬主が集団で年間数十億ドルを競馬に投資しなければ、競馬は存在することができず、少なくとも現在の形式とは程遠いだろう。したがって、馬主が競馬を浄化したいと言うときが、競馬を浄化できるときである。

 サリックスなしでは馬がうまく走ることができないならば、その結果に苦しむのは馬主であり、調教師や獣医師ではない。鼻出血のために出走することができず、馬が競走から排除されなければならないならば、その結果に責任を負うのも馬主であり、調教師や獣医師ではない。

 馬主は競馬と厩舎の支配権を握る必要があり、調教師と意思疎通を図る必要がある。そして馬主は、自身の馬をサリックスなしで走らせることを主張することから始めることができる。このことは、競走当日のサリックス使用の撲滅を望んでいると発表したものの今なおサリックスを使用して所有馬を出走させている馬主がまず着手すべきである。

 競走当日の薬物使用の撲滅には多くの時間が掛かり、実現には困難が伴うだろうが、もし競馬界が事業の展望を変えたいのであれば、ある種の慣習は変えなければならない。

By Mark Simon
(1ドル=約90円)

[Thoroughbred Times 2011年8月27日「Battle of survival」]


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