女性騎手のクラシック制覇は時間の問題(イギリス)【その他】
クラシック競走で女性騎手が勝利することは時間の問題だろうと、元障害競走騎手のジョン・フランコム(John Francome)氏は8月23日に主張した。そして、英国の女性騎手にとって画期的な年を築いたヘイリー・ターナー(Hayley Turner)騎手は、自身が初めてのクラシック女性騎手にならない理由はないと述べた。
8月21日のフォークストン競馬場におけるターナー騎手の2勝は、英国の女性騎手全体の年間184勝目に当たり、2010年の記録よりもさらに1勝多かった。そして女性騎手は男性騎手と同等であるとさらに認識させる出来事となった。
ターナー騎手は8月中旬にナンソープSで今年2度目のG1勝利を決めた。またキャシー・ガノン(Cathy Gannon)騎手は昨年の自己ベストの60勝より1勝少ない。そしてジュリー・バーク(Julie Burke)騎手は今年23勝を挙げ、台頭する女性見習騎手の1位となっている。
ターナー騎手がドリームアヘッド(Dream Ahead)でのジュライカップ優勝に続きマーゴットディッド(Margot Did)でナンソープSを優勝したことで、ウィリアムヒル社(William Hill)は、同騎手が2015年末までにクラシック勝利騎手になることに9-2(5.5倍)のオッズをつけた。チャンネル4において競馬評論家を務めているフランコム氏は、「それは正しいと思います。今や時間の問題です」と述べた。
フランコム氏は、「それはボールがどのように落ちるかであり、ターナー騎手がドリームアヘッドに騎乗して勝ったことのように、好機に居合わせることができるかどうかということです。10年前であれば、もし女性騎手を騎乗させることを提案したら、誰も聞く耳を持たなかったでしょう。今や他の男性騎手を騎乗させるのと変わりはないでしょうし、調教師たちは女性騎手をこれまで以上に評価していると考えています」と語った。
ターナー騎手自身は次のように語った。「もし私がクラシックに勝つ能力のある馬に騎乗したとすれば、私が勝たないわけがありません。重要なことは騎乗することです。素質のある馬を見つけ出し、クラシックを勝つことを望んでいますが、それは急に現れるものではありません」。
ターナー騎手を最優秀見習騎手の1人に引き上げたマイケル・ベル(Michael Bell)調教師のサポートもあり、同騎手は現在リーディング騎手のランキング上位に食い込んでおり、2008年には年間100勝以上を挙げた初の女性騎手となった。そして2011年にはG1勝利を成し遂げた。
ターナー騎手は他の女性騎手のための道を切り開いたが、その向上した騎乗法においてもまた新境地を開いている。
ターナー騎手は、「私は誰からも“女性が騎乗している”という態度を取られたことはありませんし、“女性騎手は乗せない”という人に遭遇したこともありません。最初に騎乗馬を得ることは難しく、おそらくベル調教師も私を最初に騎乗させるときには抵抗があったと思いますが、女性騎手の騎乗レベルはかつてなく向上しています。上手い女性騎手が居たとすれば、彼女が騎乗できない理由はありません」と語った。
そして次のように続けた。「もし彼女らが十分に有能で、まじめに取り組み、集中力があれば、彼女たちが騎乗できない理由はありません。それほど上手くない男性騎手は、それが理由で騎乗できません。無論有能でない女性騎手もいます。私は騎手になったときは成功を期待しませんでしたが、毎年目標を引き上げています」。
レーシングポスト紙の分析では、もっと機会があれば女性騎手は男性騎手とのギャップを埋めることができ、女性騎手の勝率は5年前から4%上がり現在では9.3%となっている。なお男性騎手は10.8%である。
ガノン騎手は次のように語った。「いろんな意味で楽になってきています。ターナー騎手が私たちのために道を切り開き、私たちに誇りを感じさせてくれました。私たちは女性騎手としてではなく、騎手として扱われることを望んでいます。優良な馬に乗ることだけが問題です」。
「確かにターナー騎手を見た誰もが女性がしっかりと騎乗することができることを認識しますが、私たちはもっと多くの騎乗機会を必要としています」。
アイルランドのジョン・オックス(John Oxx)厩舎で見習い騎手を始めたガノン騎手は、「私は英国で大レースを勝ったことがありませんが、いつの日か大レースあるいは有名な馬主のために騎乗できればと思っています」と付け足した。
障害馬術や総合馬術のような他の馬術においては、これまで女性はチャンピオンになってきた。競馬において女性たちが騎手として成功することは、より長い時間を要したが、マーク・プレスコット(Mark Prescott)調教師もクライヴ・ブリテン(Clive Brittain)調教師もその理由が差別によるものだとは考えていない。
プレスコット調教師は次のように語った。「平地競走だけは女性が男性と対等であろうとするには非常に難しい馬術競技です。私が調教師を始めた時、女性がそれを乗り越えることはかなり稀でした」。
「かつては女性騎手は平地競走の前に障害競走において騎乗していましたが、今やそれは反対になっています。彼女たちにとって支持を得ることは男性よりも難しいです。理由を説明するのは難しいですが、いくつかの理由で平地競走における瞬時の判断はたぶん女性があまり得意にしていないものであると考えています」。
「女性は馬をリラックスさせるのが得意ですが、騎乗においては適応に時間が掛かります。平地競走で記録を作った女性たちはほとんど小柄な男性のように見えます。今や彼女たちが活躍しているのを見るのは素晴らしいことです」。
ブリテン調教師は次のように語った。「一流女性騎手は今や、以前とは違うレベルに達しています。ターナー騎手が私の管理馬に乗ることはほとんどありませんが、私は彼女の騎乗スタイルと自信に大きな進歩を見ており、今や相応しい評価を得ています」。
「ターナー騎手は非常によく働きます。私のところに午前5時にやってきて朝の調教に乗り、レースで騎乗するまでにおそらくさらに3人ほどの調教師のところに行きます。これは簡単なことではありません」。
「トップジョッキーであることの証明はよく働くことです。カースティー・ミルクザレク(Kirsty Milczareck)騎手もターナー騎手のようにやって来て調教に乗り、イヴァ・ミリコヴァ(Iva Milickova)騎手も休みなく働きます。彼女がチャンスを掴めば、勝馬に乗ることになるでしょう」。
過去6年間の英国芝競走における男性騎手と女性騎手の成績 | |||||||||||
男性騎手 | 女性騎手 | 合計騎乗数 | |||||||||
年 | 勝利 | 騎乗 | 勝率 | 勝馬率 | 出走馬率 | 勝利 | 騎乗 | 勝率 | 勝馬率 | 出走馬率 | |
2006 | 3,353 | 35,023 | 9.60% | 97.80% | 96.20% | 74 | 1,368 | 5.40% | 2.20% | 3.80% | 36,391 |
2007 | 3,393 | 35,871 | 9.50% | 97.50% | 95.80% | 87 | 1,570 | 5.50% | 2.50% | 4.20% | 37,441 |
2008 | 3,420 | 35,805 | 9.60% | 95.40% | 94.80% | 164 | 1,950 | 8.40% | 4.60% | 5.20% | 37,755 |
2009 | 3,712 | 36,748 | 10.10% | 95.60% | 94.40% | 170 | 2,160 | 7.90% | 4.40% | 5.60% | 38,908 |
2010 | 3,804 | 36,611 | 10.40% | 95.40% | 94.20% | 183 | 2,240 | 8.20% | 4.60% | 5.80% | 38,851 |
2011 | 2,707 | 25,017 | 10.80% | 93.60% | 92.70% | 184 | 1,974 | 9.30% | 6.40% | 7.30% | 26,991 |
※2011年については8月22日現在
By Jon Lees
[Racing Post 2011年8月24日「Breakthrough Classic only ‘a matter of time’」]