鞭使用のルール変更にさまざまな反応(イギリス)【開催・運営】
9月27日にBHA(英国競馬統轄機構)により実行された鞭使用ルールの変更は、騎手と調教師の間でさまざまな反応を起こした。
主な変更はレース中の鞭使用可能回数であり、平地競走の騎手は7回まで、障害競走の騎手は8回まで使うことが許される。
この制限は平地競走よりも障害競走の騎手に多くの問題をもたらす恐れがあるが、これまでに16回最優秀騎手となったトニー・マッコイ(Tony McCoy)騎手の反応は検量室の大部分の騎手を代表するものであった。
「これは非常に白黒はっきりしたルールであり、競馬のためになることを願っています。私はこれが将来的に鞭使用の完全禁止につながるとは思いません。馬は非常に大きな動物であり、進路修正のために鞭は必要です。鞭は絶対に必要な道具です」。
平地と障害のいずれにおいても、鞭は最後の1ハロンまたは最後の障害飛越の後に最大で5回までしか使用できない。この制限回数を守らなかった場合は、ルール変更前の最低の罰則は警告のみであったのに対し、最低でも5日間の騎乗停止処分が科される。
リーディングジョッキーのタイトルを争っているキーレン・ファロン(Kieren Fallon)騎手は、10月10日(月)から発効するこのルールは自身の騎乗スタイルに何の変化も与えないだろうと語った。
そして次のように続けた。「そもそも私は鞭を頼りにしていません。馬が能力を最大限に発揮し完歩を伸ばすようにさせるためだけに鞭を使用します。もし馬に6回あるいは7回以上鞭を入れているとしたら、それは四苦八苦しているということでしょう」。
「馬にとってはおそらく良い措置だと思いますが、個人的に私には何の変化ももたらしません」。
6月にロイヤルアスコット開催のプリンスオブウェールズSでリワイルディング(Rewilding)に騎乗し優勝した時に、鞭使用回数超過のために9日間の騎乗停止処分を受けたフランキー・デットーリ(Frankie Dettori)騎手もこの変更を歓迎し、「新しいルールは競馬の利益を最優先にして採用されたと受け止めており、英国の新しいシーズン最終日であるチャンピオンズデーに間に合うよう発効することは適切です」と述べた。
しかし、ルール変更は問題を生じさせると考える騎手もいる。現在ニック・ウィリアムズ(Nick Williams)調教師のために騎乗しているジェームズ・リヴリー(James Reveley)騎手は、「レースに騎乗しているときは、鞭を使用した回数を数えることなど全くありませんので、このルールは多くの問題を生じさせるでしょう」と語った。
そして次のように付け足した。「私は鞭を頻繁に使っているわけではないので、大きな影響はありませんが、レースで勝つためにベストを尽くしている何人かの騎手を苦しめることになるでしょう」。
「大レースにおいて、鞭使用回数のことは頭の中にありません。進上金を得るために騎乗するのではなく、たとえばグランドナショナルでは、喜びと栄光を勝ち取るために騎乗しているのです」。
3日以上の騎乗停止処分を科された騎手は、進上金と騎乗手当を没収される。そして馬主や調教師が自身の賞金から騎手に支払うことも違反となる。
調教師もこの変更についての見解をもっており、ニューマーケットを拠点とするアラン・ベイリー(Alan Bailey)調教師は新しいルールが将来問題を生じさせると考えている。
同調教師は、「これは馬鹿げています。ダービーのラスト1ハロンで騎手が5回ではなく6回鞭を使ったとすれば、この騎手はレースに勝っても賞金の取り分を没収されます。これでは騎手がストライキをすると思いませんか?」と語った。
そして、「それは本末転倒だと思います。今使われている新しい鞭は、馬を傷つけるわけではなくチクリとする痛みを与えるだけです。今の鞭は古い鞭とは違います」と付け足した。
ジョージ・ムーア(George Moore)調教師も同じ見解で次のように語った。「新しいルールによって多くの競走結果が変わるでしょう。多くの馬は鞭によるもう一押しを必要としているのです」。
そして、「誰も馬を虐待したいとは考えていませんが、騎手には鞭が必要です。そして鞭使用ルールは騎手の仕事を理解していない一般大衆が気に入るように変更されてしまいました」と付け足した。
By James Pugh
[Racing Post 2011年9月27日「BHA whip rule changes met with mixed reaction」